
EU下院の役割を担う欧州議会は7月17日、次期欧州委員会委員長の無記名の信任投票を実施。候補者となっていたウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(現職)を再任した。賛成401、反対284で、可決に必要な過半数360を満たした。今後、欧州委員会委員長による欧州委員会の組閣が始まる。
【参考】【EU】欧州議会選挙、中道4派と極右が議席減。中道右派と右派が善戦(2024年6月11日)
【参考】【EU】欧州理事会、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長続投を内定。欧州議会信任投票へ(2024年6月28日)
【参考】【EU】欧州議会、極右政党が新会派「欧州のための愛国者」結成。84議席で議会第3党に(2024年7月10日)
欧州議会では、信任投票に先立ち、フォン・デア・ライエン氏との討議を実施。その中でフォン・デア・ライエン氏は、カーボンニュートラル化と産業成長を推進するための新たなクリーン産業ディール政策や、イノベーションを促進するための欧州競争力基金等を主要政策として表明。気候変動適応のための農業計画や、女性の権利に関するロードマップも提案。若年層のウェルビーイングに向け、エラスムス+プログラム、メンタルヘルス・依存症を含むスクリーンタイムやSNSに関する問題への対策も強調した。
欧州議会右派が主張する安全保障政策では、欧州刑事警察機構(Europol)の職員倍増や、欧州国境・沿岸警備隊を3倍の30,000人に増やすとする安全保障強化政策も打ち出した。外国による情報操作や干渉に対抗するための「欧州民主主義の盾」や「欧州の低価格住宅計画」も提案した。また、防衛に重点を置き、欧州防衛連合(European Defence Union)を推進するために防衛担当欧州委員を新設することも提案した。包括的な空中防衛システム(European Air Shield)の構築も提案した。
欧州委員ポストでは、他に、住宅危機に対処するための住宅担当欧州委員、地域の安定と協力を促進するための地中海担当欧州委員、将来の世代のニーズに配慮した政策を確保するための世代間公平性担当欧州委員を置く考えも示した。
欧州議会では、選挙後の初の議会を7月16日に開催。第10期となる欧州議会の議席数は720で、前議会末より15議席増えた。欧州議会議員の54%が1期目。女性割合は39%。政党会派は、前議会より1つ多い8つ。32人の欧州議会議員が無所属のまま。最年少は緑の党所属で、オーストリア選出の23歳。最年長は同じく緑の党でイタリア選出の77歳。欧州議会議員の平均年齢は50歳。
7月16日には、欧州議会議長選挙が行われ、中道右派の欧州人民党(EPP)所属で現職のロベルタ・メッツォーラ議員(EPP)が賛成562票で当選。左派勢力は、左派連合(The Left)所属のイレーネ・モンテロ氏を候補に擁立したが、賛成61にとどまった。棄権は76。現職が圧倒的な支持をみせた。
同日には欧州議会副議長選挙も実施。14人の副議長が選出された。所属会派は、中道右派のEPPから3人、中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)から5人、中道左派の欧州刷新(Renew Europe)から2人、右派の欧州保守改革同盟(ECR)から2人、緑の党・欧州自由連盟(Green/EFA)から1人、左派連合(The Left)から1人。極右「欧州のための愛国者(P4E)」からはゼロだった。
【参照ページ】Parliament re-elects Ursula von der Leyen as Commission President
【参照ページ】MEPs debate with Ursula von der Leyen ahead of EP’s vote on her election
【参照ページ】The European Parliament begins its tenth term
【参照ページ】Roberta Metsola re-elected as President of the European Parliament
【参照ページ】Parliament’s new Bureau elected
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら