
国際エネルギー機関(IEA)は7月24日、世界の石炭市場の分析報告書の2024年版の中間報告書を発表した。2023年の石炭の需要及び生産量は2022年のピークを更新し過去最高を記録した。
【参考】【国際】IEA、世界の石炭市場報告書発表。2023年に石炭需給がピーク更新の見通し(2023年8月16日)
同報告書は、2023年の世界の石炭市場に関して需要、供給、貿易、価格の4つの観点で分析し2025年までの市場予測を示したもの。2023年の石炭需要は前年比2.6%増の87億tとなり過去最高を記録する見通し。2024年上半期の石炭需要は全体で前年比1.0%増の約43億tになると予測。2022年と異なり非電力セクターの需要は変わらないが、電力セクターでの需要増が要因。
2024年通年での石炭需要は、前回報告書の0.1%減少予測から0.4%増加に変更。前回見通しの前提だった中国での水力発電の回復と電力需要の鈍化に関し、水力発電は降水量の増加から回復しているが、中国における電力需要の伸びが継続。そのため、石炭火力発電の需要が増加し、2024年全体の需要増加にも影響している。
【参考】【国際】IEA、電力2024上期改訂版。電力需要は4%増で過去最高水準。猛暑影響も(2024年7月21日)
インドでは2024年後半には石炭需要の伸びが鈍化するが、2024年上期は、水力発電の出力低下、猛暑、経済成長から電力需要の増加により、石炭需要が増加した。欧州での石炭需要は電力セクターの温室効果ガス排出量削減により減少。米国では電力需要の増加と石炭から天然ガスへの切替えが鈍化し、需要低下幅が小さくなった。日本と韓国は石炭への依存は減少傾向にあるものの、石炭輸入量は世界第3位と第4位であり、欧州より脱却ペースが遅い。
2025年の石炭需要は0.3%とわずかに減少する見通し。世界の石炭需要の半分を占める中国で石炭需要が減少する可能性が高く。中国の2025年の電力需要は、再生可能エネルギーが石炭を上回る可能性があるという。中国では石炭需要が減少する見込みだが、インドやASEAN諸国では2024年同様に増加する見込み。
(出所)IEA
2023年の世界の石炭生産量は、前年比3.1%増の89億tとなりこちらも過去最高を記録。国別では、石炭生産量上位3カ国である中国、インド、インドネシア、オーストラリアが増加、世界の石炭生産量の72%
を占める。
2024年の生産量見通しでは、全体で0.3%の減少を予測。インドとインドネシアの生産量は増加するが、中国と米国では減少するとした。インドでは石炭生産量の取り組みが継続し約10%の増加。中国では2021年に石炭の供給不足が発生したため、2022年に大幅に供給量を増加した結果、炭鉱での事故率上昇と品質低下が発生。安全な炭鉱開発を実現するために開発スピードが鈍化し、生産量が鈍化する見通し。米国では石炭火力発電所での在庫が多く、2024年は生産量が減少するとした。
(出所)IEA
世界の石炭貿易量は過去最高水準。2024年にはベトナムが電力需要の増加から、台湾を抜いて石炭輸入国第5位となる見込み。石炭輸入国の上位5カ国は過去10年間、中国、インド、日本、韓国、台湾だった。石炭価格は、供給量が十分にあることから安定しており、エネルギー危機前の水準に回復。しかし、インフレの圧力から依然として高止まりしている。
(出所)IEA
【参照ページ】Global coal demand is set to remain broadly flat through 2025
【参照ページ】Coal Mid-Year Update - July 2024
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