
米連邦政府は8月14日、「国家暑熱戦略2024-2030」を発表した。全米で記録的な暑さが発生するようになる中、米連邦政府としての対策の方向性と各連邦政府機関が実行すべき政策をまとめた。
今回の戦略をまとめたのは、29の連邦政府機関が集う2015年創設の「全米暑熱健康情報統合システム(NIHHIS)」。暑熱が人間、動物、生態系の健康とウェルビーイングに影響を与え、輸送、エネルギー、農業等のビジネスや産業を含む多部門に影響を与えると認識。その上で「暑熱レジリエントな国」をビジョンとして掲げ、ミッションを「暑熱リスクに対する社会的理解を深め、科学的根拠に基づく解決策を開発し、能力、コミュニケーション、意思決定を改善することで、暑熱関連の影響を軽減し、暑熱レジリエントな国の繁栄を確保する」とした。
同戦略では、指針として「プロアクティブ」「システム全体」「公平かつ公正」「人間中心」「協力的で包括的」「耐性」「マルチ・ベネフィット」の7つを挙げた。具体的な目標としては4つを設定した。
- コミュニケーション、アウトリーチ、教育:ニーズと認識を理解し、認識を広げ、暑熱の影響に対処するための行動を喚起する
- 科学:暑熱とその影響に関する理解を深め、科学的根拠に基づくサービスと解決策を開発する
- 解決策:国際、連邦政府、州政府、準州政府、地方自治体、部族自治区、個人の行動を支援するため、暑熱情報、サービス、解決策へのアクセスを改善し、統合的なアプローチを促進する
- 支援:NIHHISを強固なものとし、暑熱に関連する健康情報と解決策を提供する連邦政府の主要な統合情報源としての継続性を確保する
各連邦政府機関の役割では、児童家庭局、地域生活支援局、戦略的準備・対応局、医療研究品質機構、米国疾病予防管理センター(CDC)、環境保護庁(EPA)、連邦緊急事態管理庁(FEMA)、食品医薬品局(FDA)、一般調達庁(GSA)、労働安全衛生研究所(NIOSH)、国立衛生研究所(NIH)、海洋大気庁(NOAA)、労働安全衛生局(OSHA)、気候変動と健康の公平性オフィス(OCCHE)、薬物乱用・精神保健サービス局(SAMHSA)、国際開発庁(USAID)、国勢調査局、農務省(USDA)、国防総省(DOD)、エネルギー省(DOE)、保健社会福祉省(HHS)、国土安全保障省(DHS)、住宅都市開発省(HUD)、内務省(DOI)、国務省(DOS)、運輸省(DOT)、米国退役軍人省(VA)、地質調査所が実行すべきアクションを示した。
今回の戦略の大きなコンセプトは、まだ明らかになっていない暑熱がもたらす各分野への影響を科学的に評価し、広報を強化することで、各自の自発的な対策を促すことにある。そのため、広範な分野での影響評価を実行していく。暑熱リスクでは、暑熱による災害、暑熱による脆弱性、暑熱へのエクスポージャーの3つを特定していく。レジリエンスを高めるための暑熱リスク軽減では、建設・不動産、エネルギー、温室効果ガス、社会の健康決定因子、リスク認知の4つを提示したが、同戦略では全般にわたって農業や運輸・交通への影響についても対策の必要性が強調されている。
これを受け、米海洋大気庁(NOAA)は同日、全米暑熱健康情報統合システム(NIHHIS)と合同で、州政府、準州政府、地方自治体、部族自治区向けの政策コンペ「暑熱机上演習デザイン・チャレンジ」を開始。現実的な猛暑シナリオを記述した暑熱卓上演習状況マニュアルを作成するよう要請した。最も優れたマニュアルを作成した州政府や地方自治体には、最大10政府を対象に、総額20万米ドル以上の賞金が授与される。NIHHISは、参考資料として、2つのガイダンス「暑熱机上計画と調整入門」「暑熱ガバナンスの成熟度モデル」も発行した。
また米住宅都市開発省(HUD)はすでに6月、公営住宅機関(PHA)に対し、居住者の暑熱リスクを軽減するための新たなガイダンスも発表している。同ガイダンスは、酷暑や猛暑の期間中、住宅での冷房を積極的に活用する促すため、入居者の光熱費補助金を増額したり、冷房の追加料金を免除できるように制度を変更した。このガイダンスは、家族の安全と健康を守るだけでなく、過剰な光熱費の救済を要求しやすくすることで、公営住宅居住者の家庭のエネルギーコストを下げることにもなる。4月、HUDは猛暑に関するウェブページを公開した。このウェブページは、猛暑に備え、対応するために地域社会が取れる行動や、気候変動に強いプロジェクトに資金を提供するためのリソースを紹介するハブとなっている。
【参照ページ】Biden-Harris Administration, NOAA issue National Heat Strategy, provide $200K for extreme heat preparedness
【参照ページ】HUD Partners With More Than 25 Federal Agencies in Coordinated Fight Against Extreme Heat and Climate Change
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