
ENEOSホールディングス傘下のENEOSは9月28日、神奈川県横浜市にあるENEOS中央技術研究所内で、二酸化炭素とグリーン水素を原料とする合成燃料(e-Fuel)の国内初一貫製造実証プラント完成させたと発表した。合成燃料コスト削減のカギは、再生可能エネルギーのコスト削減となる。
同事業は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に採択されている事業。2022年度から2025年年度を小規模プラントの設計・建設・運転期間、2024年度から2028年度を大規模実証プラントの設計・建設・運転期間としていた。今回、日量1バレル規模の小規模プラントが完成した。大規模実証プラントは日量300バレルを計画。今回の小規模プラントでは、9月3日に合成燃料の最初の一滴「ファーストドロップ」を採取した。
原料とする二酸化炭素は、直接空気回収(DAC)で回収した二酸化炭素を活用。一酸化炭素に還元した後に、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応で水素と合成し、合成粗油を製造。その後、アップグレーディングを経て、ガソリンや軽油、ジェット燃料、重油を製造する。アップグレーディングでは、目的製品収率を最大化するための最適運転条件の抽出や、条件抽出のための予測モデル構築、実製造サンプル評価による製品規格への適合性確認等を開発対象としている。
ENEOSは、最終的に2030年以降の展開を見据えた上で、コスト削減を図り、2030年代後半から日量1万バレル規模の自立商用展開を目指すとしている。現時点でのコストは、1Nm3当たり100円程度で、内訳は水素生産が1L当たり634円、二酸化炭素回収が同32円、合成燃料生産が同33円。これに対し、日本政府の目標は、1Nm3当たり20円程度で、内訳は水素生産が1L当たり127円、二酸化炭素回収が同32円、合成燃料生産が同33円。達成のためには、再生可能エネルギーのコスト削減がカギとしている。また、ENEOSは2023年10月、合成燃料製造で先行するHIFグローバルとも協業を発表し、日本におけるるカーボンニュートラル燃料の普及促進を共同検討するとしている。
ENEOSは9月25日には、同社製品のカーボンニュートラル貢献度を示すため、削減貢献商品の認定を開始。第1弾として35品目を「削減貢献商品」に認定した。削減貢献量の算定では、WBCSDの「削減貢献量算出ガイダンス」を参照し、みずほリサーチ&テクノロジーズがフレームワークの外部レビューを担当した。
同社は、バリューチェーン外のカーボンクレジット購入によりカーボンオフセットに向けたアクションも積極的に進めている。ENEOSは9月25日、豪Carbon Asset Solutions(CAS)への出資を発表。CASが運営する持続可能な農法の導入による土壌炭素固定カーボンクレジット事業の拡張を後押しする。ENEOSホールディングスも、養豚事業での「豚へのアミノ酸バランス改善飼料の給餌プロジェクト」型J-クレジット創出を行うEco-Parkに出資しており、9月11日には、同プロジェクト第1号のJ-クレジットが創出された。
さらにENEOSは、エンジニアの生産性向上に向け、9月12日にCogniteのデータプラットフォーム「Cognite Data Fusion」の活用を発表。「製油所のデジタルツイン基盤」構築に向けた検討を開始している。製油所トラブル削減やエンジニアの技術伝承を狙う。2024年度下期から4仙台製油所、川崎製油所、
堺製油所、水島製油所の4拠点、2026年度までに同社全製油所での運用開始を目指す。
【参照ページ】ENEOS削減貢献商品を認定
【参照ページ】土壌炭素固定カーボンクレジット事業拡張に資する株式引受契約の締結について
【参照ページ】ENEOSとEco-Pork、養豚業初のプログラム型J-クレジット創出プロジェクトを開始
【参照ページ】ENEOS、「Cognite Data Fusion」を活用した「製油所のデジタルツイン基盤」構築を開始
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