
機関投資家30団体は11月21日、米食品大手6社に対し、食品の栄養改善に関する公開書簡を送付した。栄養課題をシステミックリスクととらえ、国際的に認められた栄養基準を用い透明性を向上するよう要求した。
今回の公開書簡送付の対象となった食品企業は、コカ・コーラ・カンパニー、ペプシコ、ゼネラル・ミルズ、ケラノバ、モンデリーズ・インターナショナル、クラフト・ハインツ。名宛人は6社のCEOとなっている。
公開書簡に署名したのは、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、ピクテ・アセット・マネジメント、ラ・バンク・ポスタル・アセット・マネジメント、Achmea Investment Mangement、クレディ・ミューチュアル・アセット・マネジメント、CCLA、NEST、OFIアセット・マネジメント、マーシー・インベストメント・サービス等。運用資産総額は2兆3,400億ポンド(約450兆円)。同書簡は、英ESG投資推進ShareActionが主導し、署名した機関投資家の多くは、ShareActionの「Long-term Investors in People's Health(LIPH)」プログラムに加盟もしくは賛同している。
同書簡は、不健康な食品は、世界経済全体の生産性、そして投資先全体の長期的な財務リター ンに悪影響を及ぼしかねないシステミックリスクと認識。肥満の蔓延だけで、2035年までに世界経済にGDPの約3%に相当する年間4兆3,200億米ドルの損失をもたらすとの予測も伝え、2020年の新型コロナウイルス・パンデミックの影響に匹敵するとした。
同書簡では、不健康な食品の販売は、消費者の健康志向の高まり、規制・財政・レピューテーションの圧力等、逆風が強まっており、投資家は、製品販売の栄養情報について、明確で透明性の高い情報開示の必要性が高まっているとした。加えて、健康的でない製品の販売に過度に依存することは、貧しい食生活や疾病社会を招き、経済生産性を損ない、長期的なビジネスの成功や財務リターンを脅かすことになると懸念。透明性の欠如は、リスクや機会を十分に評価する投資家の能力を妨げるとした。
また同書簡は、ATNIのグローバル・インデックス2024年版の内容にも言及し、食品世界大手の売上のうち、健康的といえるのはわずか34%だったと言及している。その上で、ATNIの「NPM Alignment Project」の成果報告書を引き合いに出し、各社独自の栄養プロファイリングモデル(NPM)ではなく、国際的に認知されたNPMに基づく情報開示を採用するよう要求した。ダノンやユニリーバ等は、すでに国際的に認知されたNPMを採用しているとも付言した。
【参考】【国際】栄養評価ATNIグローバルインデックス2024年、首位ダノン。明治HDが日本トップ11位(2024年11月8日)
【参考】【国際】ATNI、栄養プロファイリングモデルの在り方で最終報告書。継続検討課題を特定(2024年10月4日)
同書簡の具体的な要求事項は2つ。
- 国際的に認知されている栄養素プロファイリングモデル(NPM)として、ヘルス・スター・レーティング(HSR)、Nutri-Score、英国NPMの3つを採り上げ、1つ以上採用する。
- 自社のグローバル・ポートフォリオ全体を対象とした製品カテゴリー別売上加重平均NPMスコア、NPM評価対象パッケージ製品の売上、選択されたNPMに基づく「より健康的な」製品と「より健康的でない」製品の売上高比率を毎年報告する。
NGOのShareActionは2023年3月、食品世界大手ネスレに対し、栄養観点での商品ポートフォリオ見直しに関する定款変更を求める株主提案を提出。株主総会では11%の賛成を集めている。
【参考】【国際】ShareAction、栄養テーマでネスレに株主提案。健康的食品の商品売上KPI設定要求(2024年3月29日)
【参照ページ】Investors challenge food and drink sector to act on public health
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら