
企業栄養評価の国際団体「栄養アクセス・インデックス(Access to Nutrition Index:ATNI)」は9月6日、健康的な食品の定義に関するプロジェクト「NPM Alignment Project」の成果報告書を発表した。同プロジェクトにはピクテ・グループ財団が活動資金を提供した。
【参考】【国際】ATNI、NPMフレームワーク策定プロジェクト発足。WBCSDが支援。栄養分野のESG(2023年6月10日)
同プロジェクトでは、栄養に関する機関投資家向けの企業情報開示を比較可能なものにすることに特に主眼がおかれた。具体的には、栄養成分や健康への影響によって食品を分類または点数化する「栄養プロファイルモデル(NPM)」が世界に100種類以上乱立していることを受け、在るべきNPMの検討に注力した。
また、同プロジェクトでは、複雑なテーマについて専門家の間でコンセンサスを得るための構造化された反復的アプローチ「デルファイ・アプローチ」が採用された。具体的には、健康的な食品の定義、測定、対外報告のアプローチに関し、食品業界、機関投資家、アカデミア・NGOの3者が14カ国から合計86人参加。3回の調査と2回のラウンドテーブル会議を実施し、一定の原則に辿り着いた。参加者の国別内訳は、英国21人、米国19人、オランダ8人、スイス6人、日本6人。
デルファイ・アプローチの結果では、まず、NPMを透明性の高いものにしていくべいとの考えでは、3者ともに一致。NPMの策定プロセスの公表、NPMの基準値の公表、計算アルゴリズムの公表、NPM策定ガバナンスの詳細の公表について大多数が賛成した。さらに、各NPMは政府もしくは公的機関が支持すべきとの考えでも一致した。
企業のNPM分析の対象については、製品ポートフォリオ全体を対象に分析すべきとの意見で概ね一致。製品カテゴリー別の開示については、食品企業は賛成率が69%とやや下がり、地域別の開示については食品企業の賛成率は31%にまで下がり、機関投資家の賛成率も67%とやや下がった。
NPMでの結果の表現方法では、「健康的」と「健康的でない」の二択の考え方はあまり指示されず、スコアによって連続的に示される手法が望ましいとされた。製品の総数や「健康的な食品」の割合等の開示については、食品企業側は反対の意見が多かったが、機関投資家は支持した。
NPMの基準そのものについては、食品企業からの異論がたくさん出た。国際機関や各国政府が提供している食事摂取ガイドラインについては、必ずしもNPMとして使い勝手がよいものでないとの意見や、単一の基準で測るべきか、製品カテゴリー毎の基準値を設けるべきかでも、意見の一致には至らなかった。栄養評価の栄養素に、微量栄養素を含めるべきかについても、継続検討課題となった。栄養評価の製品単位についても、意見の相違が目立ち、100g単位という重量単位での賛成率も全体で66%にとどまったが、ポーション単位よりは支持が多かった。
投資家向けの報告では、食品企業、機関投資家、3者は、2種類から4種類のNPMをレポーティン グに用いる柔軟なアプローチを支持。採用すべきNPMの検討では、16種類の既存のNPMの評価についてアンケートをとり、上位3つは、HSR(Health Star Rating)、Nutri-Score、UK NPMだった。また、政府や国際機関が承認したNPMを活用すべきとの声も多く、HSR、Nutri-Score、UK NPMの3つ、もしくは政府や国際機関が承認したNPMの活用を企業報告基準として活用すべきとの認識となった。
NPM分析結果の活用では、製品のリフォーミュレーション(栄養価改善)については、食品企業と機関投資家は大半が支持。一方、健康的でない製品のマーケティング費用、マーケティング手法、ロビー活動の動向についての報告では、食品企業は多数が反対に回った。
ATNIは今回、今後の報告基準の在り方について、考え方をまとめた表も示しているが、合意にはかなりの調整が必要なものも含まれている。
情報開示の監督についても、ガバナンス制度を設けることや、第三者保証まで実施すべきとの声も、機関投資家を中心に多かった。ATNIは今後も検討を継続していく考え。
【参照ページ】Sector Alignment on the Use of Nutrient Profile Models (NPMs)
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら