
関西電力は7月22日、東日本大震災を受け、2011年3月12日以降見合わせていた美浜原子力発電所の後継機設置検討の自主的な現地調査を再開すると発表した。福井県三方郡美浜町等での地元住民への説明等を開始する。
同社は。東日本大震災後、大飯原発3号機(同1.18GW)を2018年3月、同4号機(同1.18GW)を2018年5月、高浜原発3号機(設備容量870MW)を2021年3月、同4号機(同870MW)を2021年4月、美浜原発3号機(設備容量826MW)を2022年9月に再稼働させている。一方、美浜原発では、1970年に運転を開始した1号機と、同じく1972年運転を開始した2号機が2015年に廃炉となり、後継機の検討を始めていた。
同社は今回、経済産業省資源エネルギー庁が掲げる「安全性を大前提とし、自給率、経済効率性、環境適合の同時達成(S+3E)」の観点から、原子力発電が将来にわたって役割を果たすことが重要と表明。さらに、第7次エネルギー基本計画で、原子力発電の持続的な活用方針が示されたことも強調した。
【参考】【日本】政府、温対計画、第7次エネルギー基本計画、GXビジョン2040年閣議決定。原案まま(2025年2月18日)
さらに同社自身の「ゼロカーボンビジョン2050」でも、原子力発電所の新増設・リプレースの実現を掲げており、後継機の事業成立性検討の一環として自主的な現地調査の再開が必要と判断した。
開始する現地調査では、新規制基準への適合性の観点から、地形や地質等の特性を把握し、後継機設置の可能性有無について検討する。後継機設置の判断では、同調査の結果に加え、革新軽水炉の開発状況や規制の方針、投資判断を行う上での事業環境整備の状況を総合的に考慮する必要があることも付言した。
革新軽水炉とは、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、既存の軽水炉(BWRやPWR)をベースに、安全性を向上させた次世代原子力発電炉のこと。三菱重工業、関西電力、北海道電力、四国電力、九州電力の5社が、2030年代の実用化を目指して共同開発を進めている。
日本では、2009年に新規稼働した泊原発3号機以来、16年以上新設は行われていない。現状では、関西電力の他に、九州電力が川内原発3号機を敷地内に増設する計画を2000年から進めている。現行の計画では、設置するのは、改良型加圧水型軽水炉(改良型PWR)で設備容量1.59GW。着工は未定。
原子力規制委員会は2024年10月、革新軽水炉に対する新規制の必要性の是非を検討するため、メーカー等からヒアリングする会合を設置。また、原子力規制委員会の山中伸介委員長は7月23日の定例記者会見の中で、革新軽水炉の安全審査上の技術課題について、既存の規制基準で概ね対応できるとの見方を示している。一方、地盤地質の調査については、美浜原発の地盤では断層が非常に多く存在するため、断層評価が一番難しくなるだろうと伝え、関西電力に調査を慎重に実施するよう求めていく考えも示した。また、使用済み核燃料の処分等についても、関西電力側で検討した上で、対応状況を審査していくとした。
原子力発電所の安全性については、福島第一原子力発電所事故以降、規制の枠に留まらない高い次元の安全性確保に向け、ATENA(原子力エネルギー協議会)も設立されており、こちらでも検討が進む模様。
【参照ページ】美浜発電所後継機の自主的な現地調査の実施に向けた対応
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