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【EU】EFRAG、ESRS改訂で個別事案の方向性提示。ダブルマテリアリティ評価方法修正も

 EUの金融報告フレームワーク検討機関European Financial Reporting Advisory Group(EFRAG)のサステナビリティ報告評議会(SRB)は6月19日、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づく欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の簡素化作業の進捗状況を公表した。

【参考】【EU】EFRAG、ESRS簡素化作業計画決定し、欧州委員会に報告。7月末に改訂草案公表へ(2025年4月30日)

 ここまでの作業では、SRB委員の意見交換を重ねつつ、4月8日から5月7日にかけパブリックコメントを募集し、820人以上のステークホルダーが回答。寄せられたコメントは約16,000件に上った。直接インタビューも41回、ステークホルダー・コミュニティ(投資家、報告書作成者、金融機関、市民団体等で構成)とのワークショップも22回開催された。さらにボストンコンサルティンググループ(BCG)に委託し、2024年度に作成されたESRS準拠のサステナビリティ報告書約700社分についても20の重要なリサーチクエスチョンに関連する分析報告書が作成された。

 SRBは今回、簡素化の観点として、「一般目的のサステナビリティ報告にとって最も重要でないと考えられるものの削除」「説明文よりも定量的なデータポイントを優先」「国際的報告基準との相互運用性を損なうことなく、また各事業の重要性評価を損なうことなく、強制的なデータポイントと任意的なデータポイントをさらに区別することで、ESRSの強制的なデータポイントの数を大幅に削減」の3つを明確にしている。

 SRBはすでにESRS改訂の叩き台草案を作成済みで、パブリックコメント等で得た意見を盛り込み済み。特に5つの観点で改訂が進められていることがわかった。

 1つ目は、「ダブルマテリアリティ評価」の簡素化。パブリックコメント等の結果から、ダブルマテリアリティ評価の進め方について明確な規定が設けられていないことにより、むしろコンプライアンスチェックのように形式的な確認が重視され、その結果として作業に過度な負担がかかっていることが明らかとなった。

 そのため、改訂案では、細かい分析を積み上げていくボトムアップ・アプローチではなく、重要と推定されるものをトップダウン・アプローチで特定していくことを明確化。さらに、すでに特定のセクターや個社で重要であることが明白な場合は、重要性を図る作業は簡便でよいということも明確にする。さらに、開示データに関しては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が採用しているのと同様に、重要(マテリアル)なものだけでよく、さらに各ESRS基準のサブトピック単位で重要性の是非を判断し、重要だと判断されたサブトピックのみを開示すればよいという考えも示す。

 2つ目は、サステナビリティ報告書の読みやすさ及び簡潔さの向上。パブリックコメント等の結果から、ESRS基準は、データポイントや、サステナビリティ・ステートメントの要求事項の粒度が細か過ぎ、それが、ESRS基準をコンプライアンス的に扱う風潮を助長し、むしろストーリー性のない報告書の作成を強いていることがわかった。

 そのため、サステナビリティ報告書の冒頭に「エグゼクティブ・サマリー」を記載するオプションを用意。さらに、報告の形式に柔軟性をもたせるため、細かいデータや重要でない事項は、専用のセクションや附属で開示するオプションも用意し、EUタクソノミー関連の情報も特定の附属コーナーで開示することが可能であることも明確にする。

 3つ目は、最低開示要求事項(MDR)とトピック毎の開示の修正。現行の基準が、一般要求事項(ESRS 2)に基づき重要なトピックについて方針、行動、目標を記載させる内容と、トピック毎基準で方針、行動、目標を特定する詳細な必須データポイントが混在しており、大きな負担になっていることがわかった。

 そこで、一般要求事項(ESRS 2)では、データポイント数を大幅に削減し、「shall(必須)」観点に絞って分野横断的な最低開示要求事項を設定。さらに、トピック毎基準で定められている必須の方針、行動、目標も大幅に削減する。特に、方針、行動、目標に関しては、マテリアルであり、かつ「定めている場合」のみ開示が求められることを明確化し、「定めてない理由」や定める予定に関する情報開示も求めない。    4つ目は、任意開示と必須開示の明確な分離。現行の基準では、任意開示と必須開示の境目が明確でないため、発行体と監査人との間で徒労な確認作業が行われている状況にあり、パラグラフレベルで必須と任意の項目を明確に切り分ける。

 5つ目は、それ以外の対応。まず、M&Aの際のサステナビリティ開示について具体的な指針を設ける。重要性の低いグループ企業をデータ算出から除外できる要件も緩和する。ビジネス上の機微情報の開示での取扱については、EU理事会や欧州議会での交渉議題となる可能性があるとし、SRBの段階で深堀りすることは避ける。

 組織バウンダリーについては、連結財務諸表を基本的なバウンダリーとし、リース等の特定取引等についてはバウンダリーに含めず、必要に応じた追加開示とすることも明確にする。サプライチェーンからのデータ収集でも、現状の2段階アプローチ(合理的な労力をかけて一次データ収集が可能かどうかを評価し、その後、不当なコストと労力をかけて測定基準を推定する)を廃止。不当なコストと労力をかけずに入手可能な合理的で裏付けのある情報がある場合には一次データを活用し、そうでない場合は二次データに基づく推計で可とする。将来の財務影響の見通しに関する情報ついても、見通しの不確実性が非常に高く、結果として得られる情報が有用でない場合には、定性的情報で可とする。

 SRBは、上記の変更を通じて、オムニバス法案が求めるデータポイント数の大幅な削減(50%以上を目標)が達成される見込みとした。

 さらに、金融機関への影響については、ESRS基準が金融機関を主な作り手として想定されていないとの不満の声を受け、個別のガイダンスを発行する可能性に含みをもたせた。一方、ESRS基準が簡素化されれば、金融機関に課されているサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)に基づく情報開示に必要なデータを投融資先から得られなくなるという不満に関しては、金融機関観点から重要性の低いデータポイントのみが削除対象となっており、SFDR開示の支障にはならないとの見解を示した。但し、PAI指標で必要なデータポイントについては、問題点を慎重に特定すると述べた。

 SRBは、改訂案の承認作業を7月中旬に予定しており、その後、パブリックコメント募集を経、10月に改訂案の中間報告を、12月末に提案の最終報告を行う計画。確定した改訂案は、欧州委員会に提出され、そこからEU理事会や欧州議会との調整が始まる。

【参照ページ】ESRS Revision: Progress Report as of 20 June 2025

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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