国連環境計画(UNEP)は10月8日、国際通貨基金(IMF)および世界銀行の年次総会の中で、グローバルの金融システムをいかに持続可能な発展に向けて活用すべきかについてまとめた報告書、"The Financial System We Need."を公表した。
同報告書は、2014年1月に結成されたUNEP Inquiry into the Design of a Sustainable Financial System(持続可能な金融システムのデザインに向けたUNEP調査)の2年間に渡る研究結果をまとめた集大成だ。UNEPは金融業界のリーダーらが所属する諮問委員会の支援を受けて15カ国以上の銀行取引、債権・株式市場、機関投資、保険、金融政策など金融システムの主要分野における慣行を詳細に調査した。調査にあたっては各国の中央銀行、環境省、国際金融機関、主要銀行、株式市場、年金基金、保険会社などとも協働した。
同報告書によると、現在は「静かな革命」が進行中で、世界の財政政策立案者や規制機関らは持続可能な発展への意向を金融システムへの統合を進めているとしている。特にバングラデシュやブラジル、中国、ケニア、ペルーなどの開発途上国および新興国では持続可能な金融システムの構築に向けた機運が高まっているとのことだ。
また、国内および国際的なアクションを通じて事例が積み重なることで、民間資本はインクルーシブかつグリーンな経済への移行に向けたファイナンスへと振り向けられ、SDGs(持続可能な開発目標)の実現が支援されるとしている。
UNEPは、世界各国の金融規制当局が導入した持続可能な金融システムを構築するための方策として「情報開示の強化、責任の明確化、商品基準の改善による市場慣行の強化」「財政インセンティブや公的金融機関、中央銀行の政策を通じた公的バランスシートの活用」「特定セクターへの優先的な融資、法的用件の設定」「キャパシティ・ビルディングやインセンティブ・市場構造の再設計による金融風土の変革」「ガイダンスや規制、パフォーマンス評価によるシステムガバナンスの改善」の5つを挙げている。また、既に実行されている具体的な方策として中国やフランス、ペルー、ケニア、米国など100以上の事例を挙げている。
世界経済全体がSDGsの実現に向けて効果的に機能するためには、サステナビリティ目標と整合性のとれた金融システムの設計が欠かせない。企業や投資家にサステナビリティに資本を投下するインセンティブをもたらす制度づくりはSDGsを達成する上での必須要件となる。同報告書ではその具体的な方策について幅広くまとめられているので、興味がある方はぜひ確認して頂きたい。
【レポートダウンロード】The Financial System We Need.
【参照リリース】UNEP Inquiry Shows How to Align Global Finance with Sustainable Development
【団体サイト】UNEP
【参考サイト】UNEP inquiry
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