オーストリア憲法裁判所は12月5日、現在の婚姻およびパートナーシップに関する法律は差別的だと認め、同性婚を2019年から合法化する判決を下した。政府の判断によっては、法律改正が前倒しになる可能性もある。
オーストリアでは、同性カップルを対象とした登録パートナー婚法第8条が2009年12月30日に公布され、2010年1月1日に施行されている。この法律の下では、同性カップルに対し、相続、社会保障、税制状の優遇措置については配偶者としての処遇が認められるが、養子縁組は認められていなかった。しかし同国では、未婚の異性カップルの場合には相手方の子供との養子縁組を認めていた背景があり、2013年2月に欧州人権裁判所において、第8条が欧州人権条約第14条(差別の禁止)に反するとした判決が下されていた。
欧州人権裁判所は、1953年発効の欧州人権条約に基づいて創設された欧州評議会の司法機関。欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配の3分野で、国際社会の基準策定を主導する欧州全域の国際機関として1949年にフランスのストラスブールに設立された。現在は、オーストリアを含む47カ国が加盟しており、日本、米国、カナダ等5カ国がオブザーバー国となっている。加盟国は欧州人権裁判所の最終判決に従う必要があり、最終判決は欧州評議会の閣僚委員会に送付され、その執行については同委員会が監視すると定められている。
今回の法律改正の直接的な契機となったのは、正式な結婚をウィーンの所轄当局に拒絶された2人の女性による訴状。オーストリアの憲法裁判所は登録パートナー婚法第8条を改めて見直し、その結果、「今日、結婚とパートナーシップを区別することは、同性カップルに対する差別としか捉えられず、現状を維持することはできない」と述べ、「この2つの制度を併存させることは、同性愛を指向する人びとが、異性愛を指向する人びとと平等でないことを意味する」としている。しかし同裁判所は、法律が改正された後にも、選択肢としての登録パートナーシップ制は存続させるとしている。
同国では、中道右派政党としてキリスト教民主主義を掲げる国民党、および連立与党の極右政党の自由党は、同性婚に反対の立場を取り続けて来ている。
同性婚合法化では、一足早く合法化に向け法改正を進めていたオーストラリアも12月9日に法案が連邦下院を通過し成立。26ヶ国目の同性婚合法化国となった。オーストリアは、27ヶ国目の合法化国となる見込み。
【参考ページ】Austria court legalises same-sex marriage from start of 2019, ruling all existing laws discriminatory
【参照ページ】国立国会図書館調査及び立法考査局行政法務課:「諸外国の同性婚制度等の動向:2010年以降を中心に」
【参照ページ】外務省:欧州評議会の概要
【参照ページ】欧州人権裁判所
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