オーストラリア金融当局のオーストラリア健全性規制庁(APRA)は2月24日、規制対象の金融機関に対し、従来型の金融リスクと同等のレベルで、気候変動による金融リスクを積極的に理解し、マネジメントすることを求める声明を発表した。オーストラリアでも金融当局から、金融機関に対し、気候変動リスクマネジメントのレベルアップ指示が出た。
APRAは、金融機関各社のビジネスモデルは多様なため、一律な対処方法の指示はしないとし、各社が自分たちで直接・間接双方のリスクを把握し、対処することを求めた。APRAが2018年に実施した調査では、大企業は気候変動による金融リスクを認識しているものの、気候変動データの欠如や、物理的及び移行リスクに関するインパクト・リスクの定量化に課題を抱えていることがわかった。
APRAは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインとシナリオテストが有効なリスクマネジメント手法だと言及した上で、APRAとして実施ガイダンス「気候変動金融リスク・プルーデンシャル・プラクティス・ガイド」を作成していく考えも明らかにした。そのため、金融機関から意見を募る。発行は年内を予定。
金融リスク分析のための気候変動データ欠如の問題については、金融当局の気候変動リスク検討会議体NGFSでも検討されていることに触れるとともに、国内でも有志の企業たちにより、タクソノミーやシナリオ設計が検討されている動きを紹介した。これらの動きと協働し、APRAは、預金受入銀行に対する気候変動金融リスク脆弱性評価を、2020年に設計、2021年に実施する計画も示した。オーストラリア準備銀行(RBA)も分析に加わる。脆弱性評価では、移行リスクと物理的リスクを両方考慮する。
さらにAPRAは、脆弱性評価の実施に向け、オーストラリア証券投資委員会や、RBAの金融規制委員会とも連携する。オーストラリア連邦科学産業研究機構や気象局からもインプットをもらう。
また年金基金に対しては、「Prudential Practice Guide SPG 530 Investment Governance」を改訂し、投資戦略でESG考慮のレベルを上げる考えも表明。2020年中頃にパブリックコメントを募集する。現行のSPG 530は、ESG投資を「倫理的投資」と位置づけ、受託者責任を遵守した形であれば実施してもよいというレベルに表現をとどめている。
【参照ページ】Understanding and managing the financial risks of climate change