欧州委員会は8月29日、競争法上の優越的地位の濫用の罪で、クアルコムに対し9億9,700万ユーロの制裁金を2018年に科した事案で、6月に欧州司法裁判所(ECJ)の一般裁判所で敗訴した判決結果を確定される方針を示した。勝訴の見込みがないとして、控訴を断念する。
同事案では、欧州委員会が2018年、クアルコムがLTEベースバンドチップセットの市場で、主要顧客に対し、ライバル企業から購入しないことを条件に多額の支払を行うことで、ライバル企業の市場競争を妨げたと認定した。具体的には、クアルコムは、アップルのiPhone及びiPad端末にクアルコムのチップセットを独占的に使用することを条件に、アップルに支払を約束。違反した場合には、資金の返却条項まで盛り込まれていたという。同契約は、2013年には、契約期間が2016年末まで延長。同契約が終了した2016年9月から、アップルはインテルからも調達を開始した。欧州委員会はこれらの行為を競争法違反と判断した。
しかし、ECJ一般裁判所は、欧州委員会の捜査の手続き不備を指摘し、クアルコム側が勝訴。さらに欧州委員会に対し、強引な捜査と厳しく叱責する事態にもなった。判決では、欧州委員会が第三者と行った多くの面談をクアルコムに知らせなかったことを強く批判。欧州委員会が、面談の適切な記録を保持しなかったため、同面談の関連性に対する欧州委員会の主張が立証できず、クアルコムの防御権侵害が確認された。さらに、また市場影響での経済分析でも、適切にクアルコム側に反対意見を述べる機会を与えなかったことも、権利侵害と認識された。
加えて、当時の市場構造では、クアルコムは、アップルがiPhoneに求める技術や期間の要件を満たす唯一のサプライヤーであり、契約内容如何にかかわらず、アップルはクアルコムから調達をしていたと考えられるとの見方も示した。これにより、競争法違反判断の根幹が揺らぐ形となった。
今回の一連の事案では、欧州委員会は、契約内容を把握したことで、早急に競争法違反の捜査を開始したが、同行為による実際の市場影響の分析を丁寧に進めることを怠ったと言える。これにより、証拠能力が失われ、敗訴となった。
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