【アメリカ】ウォールストリートの洗礼を浴びるBコーポレーション、Etsy 2015/06/11 最新ニュース

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 今年の4月16日に米国のNASDAQ証券取引所に上場したEtsyの動向が話題を呼んでいる。Etsyが先月に上場後初となる決算発表を行って以降、同社の株価が上場直後から約50%も下落してしまっているのだ。

 Etsyはハンドメイドやビンテージ、クラフト資材を個人間が売買している世界最大規模のオンラインマーケットプレイスで、社会、環境に配慮した事業を展開している認定Bコーポレーションとしても有名な企業だ。本業を通じて環境に優しいハンドメイド製品を販売したい商店とそれらを購入したい消費者を結びつけるだけではなく、環境フットプリントの自主的な公開や管理職の約半数に女性を配置するなど、自ら率先して環境、社会に対するポジティブ・インパクト創出に向けて取り組んでいる。

 認定BコーポレーションのEtsyがNASDAQに株式市場に上場するにあたっては、多方面から様々な懸念の声が上がっていた。例えば米ペンシルバニア大学ウォートンスクールは、”Crafting a Questionable Future: Will a Successful IPO Ruin Etsy?“という記事の中で、上場が同社の社会的ミッションの実現にもたらす影響について不安視していた。

 具体的には、Etsyが上場することで、ハンドメイド製品を製造・販売している地域の中小事業者を支援することで地域社会に利益をもたらすといった同社の理念が、規模と利益を重視するウォールストリートからの圧力に屈してしまわないかといった点や、株主だけではなく社会や環境、従業員といった他のステークホルダーを同様に重視するというBコーポレーションの考え方が、株主至上主義で短期利益を重視するウォールストリートのロジックとマッチするかといった点だ。

 また、ウォートンスクールでマーケティングを教えるDavid Reibstein教授は、”To keep the artisan, handcrafted image is going to be difficult as they grow”と語り、事業規模が拡大するにつれて職人の手によるハンドメイドといったイメージを保つのは難しくなるだろうと指摘していた。

 こうした一連の懸念に対し、EtsyのCEOを務めるChad Dickerson氏は、上場にあたり米国証券取引委員会に提出したレターの中で、同社が上場するべき理由について「説明責任・透明性」「コミュニティの参画」「長期の持続可能性」「世界をよりEtsyのようにする」の4点を挙げている。

 上場により透明性を更に向上させるだけではなく、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーへとなることで投資家も含むより多くの新たな人々にEtsyへの参画を促し、資金調達を通じて事業のサステナビリティを高め、結果としてEtsyの価値観を世界全体に伝えていくというのがその意図だ。Etsyにとって上場はあくまでの同社の社会的使命を果たすための通過点に過ぎず、真に社会的企業であるために上場するというのが同社の考えだった。

 このように様々な懸念、期待が入り混じる中で4月16日に米国ナスダック証券取引所に上場したEtsyだったが、初日は公募価格の16米ドルを2倍近く上回る一株当たり31.86米ドルをつけ、時価総額3500億ドルを超える認定Bコーポレーションとなった。

 しかし、同社が5月19日に上場後初となる四半期決算の発表を行った後、同社の株価は24%も急落した。四半期で前年比の約7倍となる3660万米ドルの損失を計上したほか、四半期の売上は44%増加となる5850万米ドルを記録したものの、市場予測の5900万米ドルをわずかに下回り、投資家の期待に沿うことができなかったのだ。その後もEtsyの株価は下降を続け、6月上旬には上場直後の50%以下となる一株あたり15米ドルまで株価が下落してしまっている。

 業績の懸念と合わせて同社の先行が不安視されているのには大きく分けて2つの理由がある。一つはEtsyのオンラインマーケットプレイス上に出品されている偽造品の問題と、もう一つは競合のAmazonが新たにAmazon Handmadeと呼ばれるハンドメイド製品のマーケットプレイスのローンチを計画していることが明らかになったことだ。

 Business Insiderによると、5月11日には米国のリサーチ・格付会社のWedbushが、Etsyに出品されている商品の約5%に相当する200万商品が、ルイ・ヴィトンやシャネル、ディズニーといったブランドの商標権などを侵害している模造品で占められているという調査を発表し、1日で9%も株価を下げたという。Wedbushは、もしこれらのブランドらがEtsy上の取り締まりを強化したとすれば、Etsyの売上は20%ダウンするだろうとしている。

 さらに5月22日にはWall Street Journalが、AmazonがEtsyを標的としてAmazon Handmadeというハンドメイド製品向けのオンラインマーケットプレイスのオープンを予定していると報じ、話題になった。現状Etsyの出店者らは同社が掲げる世界観、ミッションに対する忠誠心が強く、加えてAmazonの出店手数料はEtsyよりもかなり高く設定されているためそこまで脅威ではないとみる向きもある一方で、Etsyより圧倒的に多くのアクティブユーザーを抱えるAmazonのマーケットプレイスに興味を示すEtsy出店者は少なくないという声もある。

 Etsyにとってみれば、同社の長期的なビジョンを考えれば短期的な株価の上下落はそれほど問題ではないかもしれない。しかし、社会、環境面への配慮を強みとしながらも実際には自社のマーケットプレイス上でブランド模造品が流通しているという問題やAmazonのような競合が自社の事業ドメインに進出し、ユーザーの囲い込みをしようとしているという点は決して軽視できる問題ではない。

 株式公開したBコーポレーションとしての長い旅路を歩み始めたばかりのEtsyに、早くもウォールストリートの洗礼が浴びせられている。

【企業サイト】Etsy
【参考サイト】Crafting a Questionable Future: Will a Successful IPO Ruin Etsy?
【参考サイト】As filed with the Securities and Exchange Commission on March 4, 2015.
【参考サイト】Analysts warn that Etsy might have a big problem with fake stuff and now the stock is getting crushed
【参考サイト】Amazon Targets Etsy With ‘Handmade’ Marketplace

(※写真提供:Evan Lorne / Shutterstock.com

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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