
高市早苗首相は2月20日、衆参両院本会議で、同日に閣議決定された施政方針演説を実施した。
施政方針演説は、通常は毎年1月に召集される通常国会で行われるが、今回は通常国会の冒頭で衆議院が解散されたため、特別国会で実施することとなった。また、特別国会や臨時国会の場で首相が個人の所信として国政についての方針や重点課題を説明する「所信表明演説」とは区別される。
今回の施政方針演説では、2025年の臨時国会では、物価高対策を最優先としたが、2026年の通常国会では、「責任ある積極財政」を主軸とし、経済政策と外交・安全保障政策を重要テーマとして掲げた。
積極財政の対象としては、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー・資源安全保障、健康医療安全保障、国土強靱化対策、サイバーセキュリティ等の様々なリスクを最小化する「危機管理投資」と、AI、半導体、造船等の先端技術を花開かせる「成長投資」の2つを挙げた。また、これらにより、物価上昇に負けない賃金上昇を実現すると強調した。
積極財政の財源確保では、約2年をかけ、毎年補正予算が組まれることを前提とした予算編成と決別し、可能な限り当初予算で対応すると表明。複数年度予算や長期的な基金による投資促進策を大胆に進めると伝えた。同時に、財務省に租税特別措置・補助金見直し担当室を設置し行財政改革を進め、不要な予算を削減する。
成長投資のテーマでは、すでに発表済みのAI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティ、コンテンツ、フードテック、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靭化、創薬・先端医療、核融合、マテリアル(重要鉱物・部素材)、港湾ロジスティクス、防衛産業、情報通信、海洋の17分野に対し、 大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、研究開発、産学連携、国際標準化、防衛調達を含む官公庁による調達、規制・制度改革等を進める。具体的には、2026年夏までに「日本成長戦略」で定量的に示す。
加えて、岸田政権で打ち出された貯蓄から投資に向けた「資産運用立国」も継続する。さらに、コーポレートガバナンスの在り方を見直し、企業の長期的な成長に資する人的投資や新事業への投資がより積極的に行われるよう、株主への還元も含めた企業の資源配分戦略を成長志向型に変容させる。
安倍政権から続く働き方改革では、裁量労働制の見直し、副業・兼業に当たっての健康確保措置の導入、テレワーク等の柔軟な働き方の拡大を検討する。
危機管理投資のテーマでは、まず、経済安全保障を強化するため、対内直接投資に対する審査の実効性を高めるための「日本版CFIUS(対日外国投資委員会)」を創設する。
エネルギー・資源安全保障と脱炭素・GXを挙げ、省エネ技術の活用とともに、国産エネルギーの確保を挙げ、地域の理解や環境への配慮を前提に、サプライチェーンの強靱性確保を図りながら、「脱炭素電源を最大限活用」すると表明した。その一環として、原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働を官民を挙げて加速させる。廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建替えに向け、次世代革新炉の開発・設置についても具体化を進める。
再生可能エネルギーについては、「同盟国・同志国と連携しつつ、ペロブスカイト太陽電池や次世代型地熱発電設備に係るサプライチェーンを国内に構築」すると言及。但し、特に、太陽光発電については、設置に当たっての安全性確認規制や環境アセスメントの強化、発電に係る支援制度の見直し、太陽光発電パネル廃棄に当たってのリサイクル制度の創設等、一連の規制・制度の導入及び適正化を進める。核融合の早期社会実装、水素社会の実現並びに資源開発及び資源循環も加速させるとした。南鳥島周辺海域の海底のレアアース資源の活用も重点分野とした。
GX投資については、「危機管理投資」の観点からも重視し、GX型の産業集積やワット・ビット連携を促進し、新たな産業クラスターを形成すると宣言した。
次に、食料安全保障の強化では、食料自給率の向上を重視。農業については、全ての田畑をフル活用すべく、五年間の「農業構造転換集中対策期間」において別枠予算を確保する。それに基づき、農地の大区画化や中山間地域におけるきめ細かな整備、共同利用施設の再編・合理化を進めるとともに、世界トップレベルの植物工場、衛星情報、AI解析等のスマート農業技術の開発・実装を加速させる。林業・水産業についても、陸上養殖や航空レーザー計測等のスマート技術の活用により生産性向上を図る。農林水産物や食品の需要拡大・輸出拡大も、農林水産相、経済産業相、外相、首相の重要ミッションとして打ち出した。
国土強靱化対策では、「地球温暖化の影響もあり、自然災害の激甚化・頻発化が世界的課題となってい」ると表明。2026年度中に防災庁を設立する法案を提出し、地方機関である防災局も設置する。特に、事前防災及びインフラの予防保全を重点テーマとし、国・自治体によるシミュレーションによりリスクを総点検し、人工衛星等のテクノロジーも活用しながら、ハード・ソフト両面での対策を強化する。首都機能分散及び多極分散型経済圏を形成する観点から、首都及びいわゆる副首都の責務と機能に関する検討も進める。
石破政権が重視していた「地方創生」政策では、「地域未来戦略」と題し、大胆な投資促進策と産業用地を含めたインフラ整備とを一体的に進める。各地に産業クラスターを戦略的に形成しつつ、魅力ある地域資源を活かした地場産業の成長も支援する。地域経済を支える金融機関の経営基盤の強化を図るための環境整備も行う。多様性に富んだ地域の魅力や文化・スポーツを活かした地域活性化も進める。観光業については、地方への誘客の促進等のオーバーツーリズム対策を強化しつつ、持続可能な観光を推進する。
外国人との共生では、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、問題ある行為に毅然と対応することで、日本が排外主義に陥らないようにすると強調。「外国人との秩序ある共生社会」を実現すると伝えた。外国人による土地取得等に関する規制も強化する。同時に、短期滞在者の来日に関して、電子渡航認証制度「JESTA」を創設する法案を提出する等、問題ない来日客の入国手続を円滑化する。
防衛関連では、主体的に防衛力の抜本的強化を進めるため、2026年度中に防衛三文書を前倒しで改定する。航空自衛隊も「航空宇宙自衛隊」に改編し、「宇宙作戦集団」を新たに編成する。さらに、防衛装備移転三原則の運用指針で、防衛装備品の完成品の海外移転が認められるケースとして「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定されている状況を改め、攻撃能力が高い装備品を他国へ輸出できるようにすることも検討する。インテリジェンス面では、首相を議長とし関係閣僚で構成される「国家情報会議」を内閣に設置し、内閣情報調査室を「国家情報局」に格上げする。
【参照ページ】第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説
【画像】内閣広報室
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