インドネシアの紙パルプ製造大手、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(以下、APP)グループは8月13日、現在危機的状況にある泥炭地の保全を目的として約7,000ヘクタールにおよぶ高炭素泥炭地における商業植林地の操業を停止すると発表した。環境保全を目的とした操業停止としては世界初の事例となる。
インドネシアにおける泥炭地開発は、世界最大の温室効果ガス排出要因の一つとなっている。今回のAPPによる撤退は、2020年までに温室効果ガス排出量を26%削減するというインドネシア政府の目標に大きく貢献することになる。
撤退地域はリアウ州と南スマトラ地域にある5カ所のアカシアの植林地に広がっており、これらの地域は研究機関のデルタレスにより再生に向けた早急な取り組みが必要だと勧告されている。なお、この5地域においてはAPPの森林保護方針(FCP)に沿って操業停止の前にFPIC(Free and Prior Informed Consent:自由意思に基づく事前の合意プロセス)が実施されることになっている。
今回の発表は、インドネシア政府や他のプランテーション企業にも適用可能な、科学的根拠に基づく最善の植林地管理を実現するというAPPのコミットメントの一環だ。2013年2月に全ての自然林と新たな植樹林の開発を停止した同社のFCPが土台となっている。
また、取り組みの一環としてデルタレスはAPPと協働してLiDAR遠隔センシング技術を活用した熱帯泥炭地としては過去最大規模となるマッピング作業を進めている。航空機に搭載したLiDAR技術を利用することで、APPのサプライヤーが位置するインドネシアの全泥炭地の約4分の1をマッピング可能となる。対象地域は合計約450万ヘクタールあり、マップ作成は2016年に完了する予定だ。
マッピングにより、数多くの泥炭地の水理特性や環境状況に関する新たな知見がもたらされる予定だ。分析データによりデルタレスはAPPが泥炭地における排水の影響を最小化する方法について更なる提言を行うことができるようになり、気候変動の原因となる森林破壊の減少だけでなく、温室効果が排出量の減少にも役立つと見られている。
今回のAPPによる決断は、インドネシアの森林・環境保全を超えて世界全体の気候変動対策にとっても大きな一歩となる。また、新たなマッピングテクノロジーによる持続可能な泥炭地管理に関するノウハウが、世界規模で活用されるようになることを期待したい。
【参照リリース】Asia Pulp & Paper commits to the first-ever retirement of commercial plantations on tropical peatland to cut carbon emissions
【企業サイト】APP
【団体サイト】Deltares
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