米経営学誌のハーバード・ビジネス・レビュー(以下、HBR)は10月14日、2015年度の"The Best-Performing CEOs in the World(世界のCEOベスト100)"を公表した。
同ランキングは在任期間中の株主総利回り(TSR)および時価総額の増加に基づき、世界で最も優れた業績を上げているCEOを格付するものだ。しかし、HBRは今年のランキングからそれらの要素に加えて新たに企業のESG(環境・社会・ガバナンス)指標をランキング要素に採用した。
HBRは同ランキングを作成する目的について「我々のゴールは最新四半期や年次業績を超えて、真に長期的なパフォーマンスを評価するリストを作成すること」だとしており、CEOおよび企業の長期的な業績をより正確に評価するために、新たにESG指標を加えた形だ。
今年のランキングは長期の財務パフォーマンスが80%、ESGパフォーマンスが20%という重みづけで行われており、ESGデータはサステナビリティ調査大手のサステナリティクスが提供している。
新たにESGが加味された結果、今年の1位に輝いたのは糖尿病ケアのリーディングカンパニーとして知られるデンマーク製薬大手、ノボ・ノルディスクのCEOを務めるLars Rebien Sørensen氏だ。同社は糖尿病の治療に必要なインスリンを糖尿病患者が激増しつつある新興国において非常に安価で提供している点、透明性の高さや動物実験に対する責任ある方針などが高く評価され、財務パフォーマンスのみでは6位だったものの、ESGスコアと合わせて一気にトップに躍り出た。
その逆に、昨年1位を獲得していたアマゾンのJeff Bezos氏は、ESGがランキング指標に加えられたことで一気に87位まで転落した。ESGが20%という大きな比重を占めるようになったことで、ランキング全体も昨年と大きく入れ替わった。
HBRは「ビッグデータと高い透明性の時代には、消費者や投資家らはますます企業の文化や価値観を理解することを望んでいるというのが我々の考えだ。彼らは企業の株価だけではなく、社会的な振る舞いを分析したがっている」としており、ステークホルダーの企業を見る目も変化してきている点を指摘している。
世界のベストCEOを選出する指標に新たにESGが加えられたことは「優れた企業とは何か」「優れたCEOとはどんな人物か」という問いに対する人々の考えが変わりつつある象徴とも言える。企業業績とESGが統合され、ESG課題と財務上の課題との間に境目がなくなる日も近いかもしれない。2015年のベスト10に選ばれた企業およびCEOは下記のとおり。
- Lars Rebien Sørensen(Novo Nordisk)
- John Chambers(Cisco Systems)
- Pablo Isla(Inditex)
- Elmar Degenhart(Continental)
- Martin Sorrell(WPP)
- Stephen Luzco(Seagate Technology)
- Jon Fredrik Baksaas(Telenor)
- George Scangos(Biogen)
- Michael Wolf(Swedbank)
- Fujio Mitarai(Canon)
【参考サイト】The Best-Performing CEOs in the World
【団体サイト】Harvard Business Review
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