【エネルギー】世界の「一次エネルギー」の現状 〜発電・輸送・発電ロスの統計〜 2016/05/11 体系的に学ぶ

energy

一次エネルギーとは

 一次エネルギー(Primary Energy)とは、人間社会のエネルギー源として活用される天然資源から得られるエネルギーのことです。一次エネルギーには、電力エネルギーに変換される石炭、天然ガス、石油などや、ガソリンやジェット燃料などに変換される石油、給湯器に使われるガス、プラスチックなどの樹脂製品に加工される石油などが全て含まれます。また、太陽光発電エネルギー、水力発電エネルギーなどのエネルギーも一次エネルギーに含まれます。一方で、電力、ガソリンなど一次エネルギーから変換された生成されるエネルギー源のことを二次エネルギーと呼びます。このように、一次エネルギーはエ人間社会に必要なエネルギーの源であり、エネルギー削減やエネルギー効率などを考えるにあたりとても重要な概念なのです。

一次エネルギー供給量とは

 一次エネルギー供給量(Total Primary Energy Supply: TPES)とは、一次エネルギーとして供給されるエネルギー量のことを指します。特に、一次エネルギー供給量は国単位で算出されることが多く、その国の経済や生活にどれぐらいの一次エネルギーが投じられているかを計測するために用いられています。一次エネルギー供給量の単位には、石油換算トン(toe)や熱量単位であるペタジュール(PJ)が用いられています。

 エネルギー分野の国際機関である国際エネルギー機関(IEA)は、一次エネルギー供給量の計算式をこのように定義しています。

一次エネルギー供給量 = (一次エネルギー産出量)+(一次エネルギー輸入量)-(一次エネルギー輸出量)-(国際船舶エネルギー使用量)-(国際航空エネルギー使用量)+-(貯蓄量)

 この計算式のポイントの1点目は、産出量から輸出入量を差し引いているということです。例えばサウジアラビアなどの産油国は、産出量が豊富ですが、そのほとんどを輸出に回しており国内の経済や生活のためには供給されていません。ですので、国内の経済や生活への供給量を測るために、輸出入量が考慮されます。ポイントの2点目は、国内に投下されるエネルギー量を計測するために、国際船舶や国際航空に用いられるエネルギー使用量が差し引かれるということです。IEAの統計においては、世界全体の一次エネルギー供給量算出の場合のみに、国際船舶や国際航空に用いられるエネルギー使用量が含まれ、各国の算出からは上記の式のように差し引かれます。ポイントの3点目は、貯蓄量です。産出または輸入された一次エネルギーの中には石油備蓄などのように将来需要のために貯蓄されるものがあります。貯蓄されたものは使用されていませんので、貯蓄量は一次エネルギー供給量から差し引かれます。反対に貯蓄を取り崩した場合は一次エネルギー供給量に加えられます。

世界の一次エネルギー供給量は年々増加

世界の一次エネルギー供給量の推移
(出所)IEA

 現在まで一次エネルギー供給量は世界の豊かさともに増加しています。最近では2009年に一度減少しましたが、これはリーマンショックによる世界的な不景気の影響です。

Share-of-TPES-2013

2013年の割合で見ると、最大のエネルギー源は石油(31.1%)です。石油は、ガソリン、経由、ジェット燃料、石油化学製品、発電エネルギー源などとても幅広い用途に使われています。続いて、発電エネルギー源や鉄鋼素材として使われる石炭(28.9%)、そしてガスや電気エネルギーとして使われている天然ガス(21.4%)です。石油、石炭、天然ガスの合計で81.4%となり、人間社会はこれらの化石燃料に大きく依存していることがわかります。発電だけに絞った際には3.7%に達した地熱・太陽光・太陽熱・風力・潮力の合計も、一次エネルギー供給量全体で見るとたったの1.2%です。バイオマス・廃棄物は発電分野では2.0%ですが、一次エネルギー供給量全体では10.2%と増加します。この背景には、薪や落ち葉などを燃やして暖を取ったり、調理をしたりする行為が発展途上国などでは一般的であり、バイオマス・廃棄物エネルギーが発電以外の手段でも人間社会のエネルギー源となっているためです。

一次エネルギー供給量は先進国では横ばい、途上国で急増

TPED-and-GDP
(出所)IEA WOE-2013

 一次エネルギーが顕著に伸びている国は発展途上国です。発展途上国ではGDPの成長とともに一次エネルギー需要も急増しています。一方の先進国では、GDPは緩やかに成長していながらも、一次エネルギー需要は横ばいで推移しており、省エネルギーの改善が大きく進んでいることが分かります。同時に、一次エネルギーには生活エネルギーだけでなく産業エネルギーも含まれるため、先進国から発展途上国に製造現場が移ってきていることが、発展途上国で一次エネルギー需要が増加しているひとつの要因にもなっています。

一次エネルギー供給量は先進国では横ばい、途上国で急増

Energy-balance-2010
(出所)IEA WOE-2012

 一次エネルギーの多くは、発電エネルギーに使われたり、加工されて他のエネルギー源に変換されます。発電と変換エネルギーを比較すると、化石燃料のうち、3,626Mtoeは発電に、6,557Mtoeは加工されており、発電よりも変換エネルギーのほうが圧倒的に量が多いことがわかります。また、変換エネルギーのうち、多くが輸送(Transport)の分野に使用されています。すなわち、ガソリン、軽油、重油、ジェット燃料などの交通輸送に使用されるエネルギーです。このように、二酸化炭素排出量の削減やエネルギー効率の向上を考える際には、発電だけでなくより広範囲のエネルギーを考慮していかなければなりません。

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 また、発電エネルギーのうち、2,656Mtoeという膨大な量がLoss(損失)として無駄になっていることもわかります。この損失は、発電ロスや送電ロスと呼ばれるものです。発電時には100%電力に変えることはできず、熱エネルギーとして逃げて行ったりするロスが発生します。これが発電ロスです。一方、送電ロスは発電された電力を家庭や工場に配電する際に発生するロスです。送電ロスは基本的に送電網が長距離になればなるほど増えていきます。多くのエネルギーが発電ロスや送電ロスとして無駄になっていることから、このロスを減らすための発電効率や送電効率を上げる取り組みも必要となっています。
 

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所所長

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