【インタビュー】ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏「事業成長を支えるグローバルCSR戦略」 2016/02/08 事例を見る

 携帯電話基地局など通信関連機器で世界第2位のシェアを誇り、スマートフォンでは世界第3位のシェアを誇る、中国発のテクノロジー企業があるのをご存じだろうか?それが、今や世界のICT業界を代表する1社となった、ファーウェイ(華為技術有限公司、以下「ファーウェイ」)だ。

 中国の深圳に本拠を構えるファーウェイは、1987年の設立以降、積極的な研究開発投資を武器に事業を急拡大させ、現在では世界170以上の国と地域で事業を展開し、160以上の国籍にまたがる17万人以上の従業員を抱えるグローバル企業へと成長している。

 2015年の売上高は約3,900億元(約7.2兆円)に達する見込みであり、世界のICT通信インフラを支える企業として世界人口の約3分の1にサービスを提供している。2005年には日本にも進出し、ファーウェイ・ジャパンを設立。現在760名以上の従業員を抱えている。

 そんなファーウェイはCSRを事業戦略の核に据えており、従業員が全額出資しているプライベートカンパニーでありながらも自主的に非財務情報開示を継続しているなど、アジアを代表するサステナビリティ先進企業としても知られている。

 同社は「Bridging the Digital Divide(デジタル・デバイドの解消)」「Ensuring Stable and Secure Operation of Network(安定性・安全性の高いネットワーク運用のサポート)」「Promoting Green Environment(環境保護に向けたイノベーション)」「Seeking win-win development(相互に利益のある発展の追求)」という4つをCSR戦略の柱に据えて、世界各地でテクノロジーを強みとする革新的なCSRプロジェクトを展開し、コミュニティ投資を行ってきた。

 中国発のファーウェイがこの短期間でどのようにグローバル企業へと成長し、その成長を同社のCSR・サステナビリティ戦略がどのように支えてきたのか。そしてそれを実現するために、グローバル、ローカルの双方において社内ではどのようなCSRマネジメントが行われているのか。その秘密を探るべく、Sustainable Japanでは1月18日に開催されたCSRアジア主催の「CSRアジア東京フォーラム2016」に参加するために来日したファーウェイのグローバルCSR責任者、Holy Ranaivozanany氏にインタビューを実施した。

 Holy氏はフランスの通信事業者大手、オレンジで組織開発や人材育成、マーケティングなどに携わった後に2011年にファーウェイに入社。現在では同社のグローバル全体のCSRを統括する責任者として活躍している人物だ。フォーラムの講演では同社のコミュニティ投資の取り組みについて、グローバル全体としての戦略とローカルプロジェクトの事例をバランスよく交えながら解説し、改めてファーウェイのCSR推進力の高さを力強く印象づけるとともに、参加者らに多くの気付きを与えていた。

 インタビューではHoly氏が強調していたグローバルとローカルにおけるCSRマネジメント推進のポイントを中心に話を伺った。

ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏 インタビュー

ポイントは、グローバルにおける一貫性とローカルにおける重要性

―世界中で多くのCSRプロジェクトを展開しているが、ローカルに最も適したプロジェクトはどのように決定しているのか?

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 CSRプロジェクトの決定にあたっては、企業としての戦略と地域にとっての優先順位を整合させる必要があります。我々はグローバルにおける一貫性を非常に重要視しており、実施する全てのプロジェクトはCSR戦略の4つの柱のいずれかに関連している必要があります。

 加えて、我々はグローバルだけではなくローカルの視点も大事にしており、その地域にとって重要な課題は何かという点を重視しています。それを理解するためには、ローカルレベルのCSRトレンドや優先順位の高い課題を教えてくれるパートナーを特定し、彼らと協働する必要があります。

 このように、政府やCSRネットワーク、顧客、学術機関、メディア、ローカルコミュニティなどのステークホルダーと深く関わることはとても大事です。彼らが、我々が向かうべき方向についての理解を深めてくれるのです。また、ローカルの課題は常に変化していますから、常にステークホルダーの声に耳を傾け続け、毎年レビューを行いながら変化に対応していくことも重要です。

CSRプロジェクトを主導するのはローカルオフィス

―例えばマレーシアのプロジェクトについて決める際、深圳の本社にいるHoly氏はどのように情報を得て、どのように意思決定をしているのか?

 日本と同様にマレーシアにもCSRチームがあり、責任者がいます。前提として大事なことは、まずグローバル全体で企業戦略に関する共通理解を醸成しておくことです。そのために我々は定期的にトレーニングを実施しています。その上で、マレーシアのチームは何がローカルのコミュニティにとって重要な課題なのか、マレーシアにおける優先順位についても理解する必要があります。

 ローカルの状況を理解し、優先順位を定め、それが企業全体としての戦略やCSR上の優先順位とマッチしているかを見極め、それが正しいプロジェクトなのかを判断する意思決定は各ローカルオフィスに委ねられています。そのために、ローカルオフィスはステークホルダーの声を何度も聞きながら地域社会にとってもファーウェイにとっても重要な課題を特定していきます。

 このように、マレーシアのプロジェクトについて決めるときは基本的にマレーシアのチームが主導するのですが、そこには私も関わります。なぜなら、その中でグローバル全体に適用できる素晴らしいアイデアを発見する可能性があるからです。例えばマレーシアでは6年間にわたり教育プロジェクトを展開していますが、それはアジアやアフリカ、南米や欧州でも適用できるかもしれません。マレーシアのプロジェクトが我々に新たなアイデアを与えてくれて、グローバルのプログラムに発展する可能性もあるのです。

重要なのはガバナンスとストラクチャー

―マレーシアの場合、ローカルの戦略担当者、CSR担当者、コーポレート全体の戦略担当者、CSR担当者はどのようにコミュニケーションを図っているのか?

 ガバナンスと組織構造に関するとても重要な問題ですね。まず、マレーシアのCSRチームとは私が直接コンタクトをとっています。私が彼らにファーウェイ全体としての経営目標とCSR戦略を共有し、マレーシアのチームはファーウェイ・マレーシアとしての目標を共有します。コンタクトポイントを一つにしたほうが簡単ですしガバナンスも明確になりますので、ローカルとのやり取りはこのようにしています。

 また、コーポレートレベルで言えば、当社にはCSD委員会があります。この委員会は全ての事業部門から構成されており、その中には戦略部門や人事部門や広報部門、調達部門など全ての間接部門も含まれます。私は、戦略の意思決定にあたってコーポレートレベルでの情報や協力が必要な場合、その中で一人のキーパーソンにコンタクトするようにしています。特定の国や課題について最新の情報を持っているキーパーソンを特定しておくことは非常に重要です。関わる人が多すぎると意思決定が難しくなり、上手く機能しなくなります。だからこそ、コーポレートレベル、ローカルレベルにおいても組織のストラクチャーはとても重要です。

パートナー選定のポイントは「戦略との整合性」「活動記録」「モニタリング」

―ローカル・パートナーを選定する際の判断基準やスクリーニングプロセスは?

 我々はパートナー選定における基準を持っており、パートナーシップを締結する前にデュー・デリジェンスを実施します。その際の最初のポイントは、我々の事業戦略との整合性です。当社の掲げるCSR戦略の4つの柱と全く関わりがないパートナーと協働することはできません。また、相手の過去の活動記録も確認します。パートナーシップの締結は結婚のようなものですから、提携先が過去に社会からの信頼を損ねるような大きな問題を起こしていないかなどを確かめる必要があります。

 そして、提携時には互いの責任と役割を明確にすることも重要です。我々が望むのはパートナーシップであり、スポンサーシップではありません。ただお金を提供するのではなく、実際に自社が貢献することを望んでいますので、互いの責任と役割についての共通理解が得られるかは重要です。例えば、当社は技術的なサポートを提供し、相手はコンテンツを提供する、といった形で、お互いがそれぞれ何を期待されているのかを明確にすることが大事です。

 その上で、明確なモニタリングプロセスを用意します。例えば3年間のパートナーシップを締結するとして、その間にどのように資金が使われたのかを何もチェックしなかったとしたらそれはお互いにとって時間とお金の無駄になってしまいます。もちろんローカルのプロジェクトを主導するのはローカルオフィスであり、パートナーなのですが、我々が常に現場にいられるわけではない以上、明確なガバナンス、モニタリング、トラッキングができるかという点は重要になってきます。

ステークホルダーからフィードバックを得る仕組みづくり

―プロジェクトの成果(アウトカム)はどのように測定しているのか?

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 具体的な成果の測り方は、担当するステークホルダーによってそれぞれ異なります。当社にはCSD委員会があり、そのメンバーはフルタイムでCSRに従事しています。責任は一人一人に移譲されており、例えばサプライチェーン担当のメンバーは、何社のサプライヤーに対してトレーニングを実施したか、サプライチェーンの安全衛生環境がどの程度改善されたかなどの指標に責任を負っており、その進捗を管理しています。

 また、我々は毎年マテリアリティ・イシュー・アセスメントというサーベイを実施しており、政府やメディア、顧客、サプライヤー、地域社会、学術機関など、200以上のステークホルダーに対して調査を実施しています。それによりステークホルダーが重要だと考えている課題を把握し、毎年情報をアップデートします。

 我々はその結果を共有し、ステークホルダーの関心の高さと、自社にもたらすインパクトという2つの観点からそれらをマッピングすることで、我々が目を向けるべき最も重要な課題を特定します。

 さらに、我々は当社だけではなく、我々のパートナーも有益なフィードバックを得られる機会も設けています。具体的には自社が主催でカンファレンスを開催し、ステークホルダーから影響力のある人々を集めて相互理解を深めるための会議を行います。これは当社にとっても大きな利益をもたらしますが、出席した全員が多くのフィードバックを得られます。

 2014年には深圳で初めてサステナビリティカンファレンスを実施しました。そのときは参加者の多くがテクノロジー業界でしたので、テクノロジーの話題が中心となりました。2015年には少しアプローチを変えて、夏にヨーロッパのブリュッセルで会議を開催しました。

 その際はテクノロジー業界から対象を広げ、小売業界など他業界からも参加者を招きました。もしかしたら彼らと協働できることはないかもしれませんが、異なる業界の話には驚くべきことが多くありますので、その中から素晴らしいアイデアが見つかるかもしれません。

 そして昨年12月には、日本オフィスの協力も得て、SDGsに関するテーマでステークホルダーを集め、25名という小規模のサステナビリティサロンを開催しました。これは当社について話す場ではなくSDGsについて話す場です。国連からゲストを招いてSDGsについて話してもらい、コカ・コーラやVISAなど異業界の担当者、アカデミアの人々も招きました。

 このように、当社ではサーベイ以外にも他者から学び、フィードバックを得られる新たなプラットフォームづくりに取り組んでいます。

ローカルの仲間が共有するローカルのストーリーが、グローバルに共感を呼ぶ

―サステナビリティレポートの中で、ケニアから日本にいたるまで非常に多くの国々の課題を網羅しているが、どのようにそれを実現しているのか?

 我々も以前は年次のサステナリティレポートと各地域に特化したローカルレポートとを別々に作成していました。今でもいくつかの地域ではローカルレポートがあります。我々は170ヶ国で事業を展開していますから、全ての国の課題についてレポートの中で触れることはできません。

 しかし、我々はできる限り多くの地域の異なる課題に対する異なる事例を紹介しようと努めています。なぜなら、そうすることで国を超えてパートナーや他企業に対し、我々の取り組みに加わるように鼓舞することができるからです。実際、ほとんどのケースにおいて我々が取り組んでいる課題はグローバルイシューですから、例えばウガンダで起こっている問題は、他の多くのアフリカ諸国の人々の共感を呼ぶかもしれませんし、南米諸国の人々に響くかもしれません。また、我々は先進諸国が高い関心を持つ課題についても取り上げており、バランスをとろうと試みています。これを実現する上で重要なことは、我々にはローカルのステークホルダーにアプローチすることができ、ローカルのストーリーを共有してくれる仲間がいるということです。

CSRにおいては、全ての国が等しく重要

―事業機会が多い国のCSRプロジェクトを重視するなど、国ごとの優先順位づけはしているのか?

 全ての国が等しく重要だと考えています。当社はほぼ全ての国々でCSRプログラムを展開しており、その規模や内容は国によって異なりますが、それは国としての優先順位があるからではなく、各地域のローカルな課題やニーズに基づいているからです。

 例えば日本では環境問題に積極的に取り組んでおり、植林活動もその典型例の一つですが、他の国では環境よりも教育のほうが重要かもしれません。解決すべき課題はローカライズされるべきであり、そのために我々はローカルのステークホルダーと協働する必要があります。そうしない限り、インパクトを生み出すことはできません。

 より多くの人々が関心を持ち、より多くのステークホルダーがいる課題という意味での優先順位付けは大事ですが、ポイントは、あくまでそれらがローカルの人々にとって本当に重要な課題なのかどうかという点なのです。

 もちろん、我々も完璧ではありません。大事なことは、限られた資源の中でいかに大きなインパクトを生み出せるかという点です。我々の場合、専門はテクノロジーですから、いかにテクノロジーを活用して貢献できるかを考えます。我々にはテクノロジーに精通した人的リソースがあり、ナレッジが共有できる。そしてそれは時にお金に代えがたいほどの価値を生み出します。ただお金を寄付するよりもはるかに大きなインパクトを生み出せるのです。

きっかけは海外進出。外部からの支援がCSRレベルを高めてくれた

―ファーウェイは一般的な中国企業と比較してはるかに先進的なCSRを展開しているが、何かきっかけがあったのか?

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 きっかけは、2000年から本格化した海外進出です。そのとき経営陣は、環境や社会といった側面に配慮をしなければ事業を継続することはできないことを悟りました。今から16年前のことですから、とても早い時期ですね。しかし、本当の意味でCSRやサステナビリティの重要性を理解し、それを戦略レベルで実行するまでにはそこからさらに数年がかかりました。

 当時から経営陣からの多大なるサポートはあったのですが、実際に戦略を実行するミドルマネジメント層が、具体的に何をすべきかが分からなったのです。我々にはコアとなる事業がありますが、サステナビリティがそれらの事業にとってどんな意味を持つのかを理解するのに時間がかかりました。サステナビリティ報告書を発行し始めたのも2008年のことです。当社はプライベートカンパニー(非公開企業)ですので報告する義務はないのですが、我々はそれが改善の手助けとなることを知っていますので、現在もレポートを発行し続けています。

 また、2004年に国連グローバルコンパクト(UNGC)に加盟したのですが、これはとても良い経験となりました。なぜなら、UNGCは我々にフレームワークを与えてくれたからです。UNGCの提示する10原則は戦略を形作るうえで非常に役立ちました。我々は今もなおUNGCと密接に協働しています。彼らは中国ネットワークも持っていますし、ニューヨークを拠点とするグローバルネットワークも持っています。UNGCはサステナビリティ課題の優先順位を決める上でも役立っています。

 そして、UNGCと同様に大きかったことは、パートナー、とりわけ我々の顧客企業が、当社のサステナビリティの取り組みを手助けしてくれたという点です。特にヨーロッパの顧客企業は様々な要求を通じて我々のCSRの水準を高めてくれました。これこそが、我々が現在サプライヤーを支援している理由でもあります。我々が彼らにしてもらったことを、今度は我々がサプライヤーに対してお返しする番なのです。

ブリティッシュテレコムのサプライヤーフォーラムでゴールドを受賞

―具体的にどのような企業が後押ししてくれたのか?

 多くはヨーロッパの通信キャリア企業でした。彼らは非常に先進的なサステナビリティ戦略を持っており、我々にそのやり方を示してくれました。例えばブリティッシュテレコムは”Better Future Supplier Forum“(BFSF)という非常にユニークなイニシアチブを展開しています。

 昨年、我々はBFSFでゴールドサプライヤーとして表彰されました。2年前はシルバーでしたので、我々の取り組みは改善されたということです。常に自らの課題に挑戦し続け、改善を継続する上でこうしたイニシアチブの存在はとても重要です。

ミドルマネジメント層への働きかけ、経営陣の理解

―経営陣からのサポートには満足しているか?現状の課題は?

 経営陣はとても協力的で、これは素晴らしいことです。現在の我々の課題は、いかにミドルマネジメント層を巻き込むかという点です。戦略もあり、経営陣からのサポートもある。あとはその戦略を実行するだけです。我々は部門を超えてミドルマネジメント層に対して戦略の実行を促しており、新しいCSRプログラムを開始するときは彼らからのサポートを得ようと努めています。

 これは簡単なことではありませんが、我々にはCSD委員会があり、四半期ごとに全事業部門が集まり進捗を確認する機会があります。これはとても良い仕組みです。なぜなら、目標の達成に向けた障壁があれば、経営陣がそれをサポートすることができるからです。

 一方で、経営陣は協力的ですが、この機運を失わないことも重要です。彼らのサポートを受け続けるためには、常に彼ら自身に関与してもらい、常に状況は変化しているということ、例えば彼らが数年前に決定したことはもう機能しないかもしれないといったことを理解してもらう必要があります。そのためには、彼らに対してCSRが進展していることを示す必要があります。

 これはとても重要なことで、もしも彼らがCSRと事業戦略との関連性や実行したプログラムの結果を見ることができなければ、彼らのサポートや推進力を失ってしまう可能性があります。だからこそ我々は社内のコミュニケーションを強化しており、経営陣に対してもCSRのトレーニングを実施し、最新の課題やトレンドを伝えながら、我々は変化し、適応する必要があり、ときには優先順位を変える必要があるということを理解してもらおうと取り組んでいるのです。

オフライン、オンライン双方を活用したCSRトレーニング

―世界中にオフィスを展開しており、多くのミドルマネジメント層を抱えていると思うが、どのようにトレーニングに取り組んでいるのか?

 いくつかの方法があります。幸運なことに、本社では外部のトレーナーがいます。我々はBSRと協働しており、彼らは専門家としてサプライチェーンや環境など様々な課題に関するトレーニングをCSD委員会に対して定期的に実施してくれています。

 しかし、その場には海外拠点のスタッフは参加できませんので、我々はオンラインプラットフォームを活用して研修資料を共有したり、ビデオカンファレンスを行ったりしています。私自身も年に一度はローカルオフィスから責任者を集め、半日かけてCSRトレーニングを実施しています。

 このようにオンライン、オフライン、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを通じてトレーニングを行っていますが、全ての情報はオンラインプラットフォーム上で更新されています。全ての国を網羅するためには、テクノロジーを活用する必要があります。

SDGs達成の鍵を握るのはテクノロジー。業界を超えた協働も必要

―MDGsとSDGsの一番の違いとして「テクノロジーによる解決」を挙げていたが、テクノロジーとサステナビリティの関係についてはどう考えるか?

UNHCRとの協働により、ケニアの難民キャンプでタブレットを使った教育を展開

 テクノロジーとSDGsとの間には非常に高い関連性があると考えています。SDGsで掲げられた17の目標のうちいくつかは我々がこれまで取り組んできたことと非常に関わりが深く、テクノロジーの活用により確実に目標の実現を後押しできる分野だと言えます。

 例えば教育は非常に重要なテーマですが、これには単なる能力開発といった観点だけではなく、遠隔地における教育課題の解決に向けていかにコミュニケーションテクノロジーを活用するかといった点も含まれます。ビデオカンファレンス、スマートフォン、アプリ、タブレットなどをどう活用するかも重要です。こうした活動は既に我々が行っていることでもあり、例えばケニアの難民キャンプでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と協働し、彼らにタブレットを提供することで難民の子供たちの学習支援を行っています。

※参考記事:Innovation: Instant Network Schools open up a new world for Somali refugees
※参考記事:Huawei supports Vodafone Foundation Instant Network Schools Programme with tablet donation

 ヘルスケアの分野も同様です。健康のモニタリング用デバイスやデータ収集、リモート手術など、テクノロジーが解決できることは数多くあります。

 そして最大のグローバルイシューの一つでもある気候変動について言えば、スマートシティの推進もテクノロジーの活用分野です。COP21では各国に向けてCO2削減に向けた更なる努力を求める合意が実現しましたが、その手段の一つとして不可欠なのがスマートシティです。全ての交通や住宅をスマート化するというのはとても野心的な目標ですが、一歩ずつ着実に取り組んでいくことが重要です。

 これらの課題は確実にテクノロジーが解決できるものです。MDGsの時期を振り返ってみると、我々は現在のようなテクノロジーを持っていませんでした。テクノロジーは我々により多くの機会をもたらしているのです。

 将来的には、より業界横断型の協働も必要となるでしょう。例えばCO2排出を削減し、低炭素経済への移行を推進するためには、我々ICT業界が自動車業界やインフラ業界といかに協働するかが鍵を握っています。

プログラムに参加した学生とは常にコンタクトを取り続ける

―コミュニティ投資についての話があった。コミュニティ投資のメリットとして人材プールを作ることができる点を挙げていたが、人材が実際に育つまでには時間がかかる。そうした中・長期的な投資について、どのようなマネジメントをしているのか?

 それはとても重要なテーマで、フォローアップについての話です。我々は学生を対象とするSeed for the Futureというプログラムを展開しています。プログラム参加者の中には修士や博士に進む学生もいれば卒業してすぐに働き始める学生もいますが、我々はプログラムの終了後も参加者全員とコンタクトを取り続けています。(※参考PDF:Seed for the Future

Seeds for the Futureの様子(2015年8月)

 我々のプロジェクトへの参加機会を提供することもありますし、単にイベントへ招待するだけのこともありますが、我々はプログラムの終了後も彼らのキャリアパスをフォローできるように努めています。

 例えば、企業レベルでの取り組みとしては、我々はオンラインプラットフォームのリンクトインにコミュニティを作っており、プログラムに参加した全ての学生がそのコミュニティに参加しています。我々はそこで彼らの進路を確認することができますし、ICT業界の最新ニュースなども共有しつつ、もし当社に空きポジションがあれば彼らに最初にその機会を伝えるようにしています。例えば日本のプログラムに参加した学生が日本ではなくスペインでの就業を希望する場合、彼らはそれに応募することもできるのです。

 このように我々は彼らとコンタクトを取り続けるためのプラットフォームを持っていますが、さらにローカルレベルでもローカルチームが大学と協力して彼らをフォローしています。もちろん彼らの全員を当社が採用できるわけではありません。一部は我々の顧客企業で働くかもしれませんし、競合企業に入社するかもしれません。しかし、我々はそれでいいと思っています。彼らは依然としてICT業界に関わっているわけですから。

 そしてさらに面白いことに、彼らの一部は起業家となります。プログラムに参加し、ファーウェイのストーリーに鼓舞されたのかもしれません。我々も最初はスタートアップでしたから。彼らは会社を作るという決断をしましたが、我々はいつでも彼らに対してアドバイスをすることができますし、将来はファーウェイファミリーになる可能性もあるのです。

CSR部門とHR部門との協働が生んだプログラムが、学生の人生を変えるきっかけに

―サステナビリティ部門とHR部門が協力的な体制を築けている印象を受けるが。

 我々CSR部門は、HR部門と多くの面で協働しています。Seeds for the Futureはインターンシッププログラムであり、HRに関わるものです。しかし、このプログラムにはそれ以上の意味があり、採用活動を超えたリーダーシップ育成プログラムなのです。

Seeds for the futureの様子(2015年8月)

 プログラムに参加する学生は中国に来ると、トレーニングの内容を学ぶと同時に中国のカルチャーについても理解を深めます。また、彼らは世界中の仲間とコネクションを作ることができます。我々は現在このプログラムを60ヶ国で展開していますが、参加した学生はたったの数週間で、世界に対してはるかにオープンな視点とマインドを手にします。

 例えば日本人の学生はパキスタンとポーランドの学生とチームを組み、そこから多くを学びました。これには採用活動以上の意味があります。我々は彼らに対してグローバルな視点を持つことを望んでおり、将来ビジネスを行う際に、より大きく、よりグローバルに考えられる人材に育って欲しいのです。たった数週間で世界を変えられるわけではありませんが、彼らにとってはその数週間がスタート地点となるのです。

 実際に彼らは中国にやってきたときと帰るときでは大きく見違えたようになります。スキルトレーニングとリーダーシップ育成を統合したこれほどユニークなプログラムを私はこれまでに聞いたことがありません。彼らはとても優秀ですが、エンジニアにはテクニカルなスキルだけではなく、人と関わり、物事をより早く前に進めるためのリーダーシップも必要なのです。

「スキル」「カルチャー」「グローバルネットワーク」のバランス

―同様のプログラムをIT各社が提供しているが、他社と比較した際の貴社プログラムの特徴は?

 我々のプログラムのユニークな点としては、社内の異なる事業部からエキスパートのエンジニアを呼んで、学生に対して最新のテクノロジーに関するトレーニングを実施します。レクチャーもありますが、それに加えてハンズオン型のプラクティスもあり、展示ホールや工場など社内のキャンパスビジットも多く含まれています。製品がどのように作られているのかを実際に目で見て手で触って確かめることは、我々がグローバルに展開しているビジネスを理解する上でとても良い経験となります。

Seeds for the Futureの様子(2015年8月)

 また、もう一つのポイントは、彼らに対して中国に対する新たな見方を提供できるという点だと思います。これはプログラムの文化的なパートですが、参加学生は北京に行き、中国語のクラスなども体験しながら、中国の文化に肌で触れます。

 さらに、先ほどお伝えした異文化交流も重要な要素です。中国の文化だけではなく、グローバルなメンバー構成によるプラクティスに参加することで彼らは将来的にファーウェイに入社する、しないにかかわらず、グローバルコミュニティの一員になることができます。

 このようなプロフェッショナルスキルの育成、中国の文化理解、そしてグローバルネットワークの構築というバランスが、我々のプログラムをとてもユニークなものにしています。

CSRの柱は災害復興

―日本におけるサステナビリティプログラムの特徴や課題は?

 日本チームは素晴らしい働きをしています。あえて海外と日本を比較するとすれば、日本のCSRには災害復興というとても重要な柱があります。これは日本特有の取り組みで、地震の多いフィリピンなどでも同様の取り組みはありますが、日本ほど強いエンゲージメントは実現できていません。

 これは我々がグローバル全体で推進しているローカリゼーションの観点からも重要です。ローカルにとって重要な課題に取り組むことが最優先であり、日本の場合、それは災害復興というテーマです。

 また、日本はCSRに対する理解という点でも進んでいると思います。これまでは国内にどのようなベストプラクティスがあるかを聞く機会にあまり恵まれませんでしたが、CSRネットワークやプラットフォームなども数年前と比較して増えてきているのは素晴らしいことです。それにより、アジアで何が起こっており、何が重要なのかを理解することができます。災害復興以外に目を向けるべき問題がないか、中国や韓国などと協働できることはないか、など、我々が考えるべきことは多くあり、そのために我々は日本チームとも密接に協働しています。また、我々はアジアについてより大局的な理解を得るために、日本のアカデミアとも協働しています。

 さらに、昨年の夏には先ほどご紹介したSeeds for the Futureプログラムに20人の日本人学生が参加し、深圳の本社にやってきましたが、彼らは中国企業がテクノロジー面でいかに進んでいるかを知り、とても驚いていました。

 日本人は中国から歴史的に文化面の影響を強く受けているためか、中国といえば「文化」に関するイメージを強く持つ日本人学生も多いようですが、アフリカの学生は中国のイメージについて聞かれると「テクノロジー」だと回答します。このように、中国に対する認識も国によって異なります。実際に今や中国はテクノロジー分野において世界で最も先進的な国の一つです。我々は学生に対してこうしたグローバルに対するニュートラルな視点を持って欲しいと考えています。欧米だけを見るのではなく、もう一つの視点を持って欲しいのです。

あきらめず、社内へ働きかけ続ける。

―日本のCSR担当者に向けたメッセージをお願いします。

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 Don’t Give Up!(あきらめるな!)。これが一番大事です。CSRの仕事は、とても長い道のりです。私は既にこの仕事に10年近く取り組んでいますが、残りの人生全てを費やすこともできるでしょう。常に状況は変化しており、常に多くの課題が存在しています。我々は幸運にも経営陣からのサポートを受けていますが、それでもなお我々は取り組みを強化し、継続的に改善を重ねながら彼らに結果を示していかなければいけません。

 決してあきらめず、社内に働きかけましょう。「CSRを事業に統合する」というのは言葉で言うのは簡単ですが、1日でできるようなことではありません。マインドセット、プロセス、ガバナンスなど、注意を払うべきポイントは数多くあります。パートナーとの協働やコミュニティ投資よりも前に、まずは社内において共通のビジョンを持つことがとても大事なのです。

 そしてそのためには、コミュニケーションが重要です。社内の人々は、あなたが偉大な仕事に取り組んでいるということを知らないかもしれません。もし彼らがあなたの仕事を理解していなければ、彼らはあなたに協力しようとは思わないでしょう。でもお互いをよく知り合っていれば、お互いにより多くの貢献をすることができるのです。だからこそ、社内を歩き回って、話に行くのです。

 「戦略を持ち、実行し、コミュニケーションをとり、改善する。」これら全てには多くの努力が求められますし、忍耐も必要となるでしょう。常に創造的で、批判に対してオープンであるべきです。そして、変化に適応できるようにしておくことも大事です。これら全てが、将来大きなインパクトを生み出す上で重要なのです。

インタビュー後記

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中央右はファーウェイ・ジャパン CSR担当シニア・マネジャー 柳原 なほ子氏)

 Holy氏が講演の中でもインタビューの中でも繰り返し強調していたのが、「ステークホルダーにとって何が重要なのかを理解すること」、そしてそのためには「ステークホルダーエンゲージメント」が非常に重要だということだ。

 社外のパートナーとの協働によるプロジェクト推進やフィードバックの仕組みづくりはもちろん、社内における部門を超えた協働、経営陣やミドルマネジメントへの働きかけ、トレーニングの実施など、あらゆるステークホルダーに対する強力なエンゲージメントがファーウェイのCSR推進力を支えていることが良く分かる。

 これらのエッセンスを全て自社に取り入れることは難しいかもしれないが、Holy氏が語るように、まずはステークホルダーと密なコミュニケーションをとり、相手のニーズや課題をしっかり理解するというところからCSRの仕事は始まるということを改めて強く認識させられた。

 2015年はSDGsやCOP21におけるパリ合意など歴史的転換点となるイベントが目白押しの年だったが、2016年は各企業がそれらの実現に向けて具体的にアクションを起こす最初の年となる。ぜひHoly氏のインタビューを参考にしつつ、最高のスタートダッシュを切りたいところだ。

参考サイト

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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