Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等)

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 1

 近年、気候変動対策への関心が世界的に高まっており、カーボンニュートラルに関する取り組みや再エネの主力電源化に向けた施策が行われています。2021年の気候変動枠組条約締約国会議(COP26)終了時には、154カ国がカーボンニュートラル宣言しています。日本も2020年10月、2050年までにカーボンニュートラルになることを宣言しており、2030年までに温室効果ガスを46%削減する目標を掲げています。

 しかし、新型コロナウイルスによる経済の停滞が回復するにつれて増加しているエネルギー需要や世界的なエネルギー価格の高騰など、エネルギーに関する問題は不確実性が高まっています。日本でも2021年に起きた寒波やLNG(天然ガス)不足などが電力需給に影響を与えました。このような状況下で、日本のエネルギー・電力の供給量割合がどのように変化しのか、紹介していきます。

日本のエネルギー・発電の供給量割合

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 2
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 こちらは経済産業省エネルギー庁が発表している「2023年度エネルギー白書」のデータです。このグラフは、日本の発電事業者全体での、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)別の電源割合を示したものです。統計対象については、2016年度のエネルギー白書までは、旧一般電気事業者、すなわち電力会社10社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)のみが集計対象(「電源開発の概要」「電力供給計画の概要」)でしたが、2017年度からは、製鉄や重工業メーカーや再生可能エネルギー発電事業者が主な主体となる独立系発電事業者(IPP)を含む発電事業者全体を集計対象(「総合エネルギー統計」)とする大きな変更がありました。それに伴い、2010年以降のデータも新手法により再計算されました。

 この推移から、日本の発電の歴史が垣間見られます。発電の主要電源は、1965年頃までは水力、1973年の第一次オイルショックまでは石油、そしてその後は石油に変わって石炭とLNG、そして原子力が担っていきます。2011年の東日本大震災以降は、原子力発電の割合がほぼゼロにまで減り、その減少分の大半をLNGがカバーしています。

 最新の2021年時点で、割合が最も大きなものがLNGで34.4%、石炭が31%、石油等が7.4%であり合計72.8%を火力発電が占めています。2020年度と比べてLNG、水力のシェアが減少する一方で、原子力、新エネと石油等の割合が増加しました。新エネの2021年度の発電量は、前年度の1,199億kwhから1,317億kWhとなり、前年度比9.9%増となりました。

 発電総量が2010年以降減少傾向だったことも、興味深いポイントです。東日本大震災から約13年経ち、市民の生活にはほぼ節電の印象はなくなりましたが、実際には電力会社の発電総量は当時の水準には戻っていません。日本が発電量を減らしながら持ちこたえている背景には、企業による節電努力があると言えそうです。2021年度は新型コロナウイルス・パンデミックからの経済回復等の影響で発電総量は前年度の10,013億kwhから10,328億kwhとなり、前年度比3.1%増でした。 また、2015年末の気候変動枠組み条約パリ条約で化石燃料、とりわけ石炭火力発電からの脱却が世界的なトレンドとなる中、日本では石炭火力発電の割合が2012年の31.0%から減少していない状況は続いています。

各電力源の状況

水力発電(一般水力・揚水水力)

 2021年度末時点において、日本における一般水力発電所の既存数は2,028カ所あり、新たに建設中の施設は92カ所に上ります。また、未開発の発電所は2,660箇所ありますが、未開発の一般水力発電(包括的水力発電)の平均発電量は7,203kWであり、既存の13,554kW、建設中の発電所の11,180kWよりも小さいことが分かります。また、他の発電源に比べて高価であり、開発の大きな障害となっています。今後は、農業用水などを利用した小水力発電の可能性を活かすことが重要となります。小規模水力発電は、地域のエネルギーの地産地消の促進にもつながります。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 3
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 2012年に開始された固定価格買取制度の効果により、2022年3月時点で新たに稼働した小水力発電は82万kWとなり、今後も開発が進む見込みです。2021年度末には、一般水力と揚水発電を合わせた水力発電の設備容量は5,001万kWに達し、年間発電量は876億kWhとなりました。水力発電の設備容量に占める日本のシェアは、世界第7位(約4%)です。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 4
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

石油等

 下の図は1960年から2020年まで長期に渡る日本の原油輸入量の推移です。日本では、二度の石油危機を経験したことで、原油の輸入先が多角化しました。中国やインドネシアからの原油輸入を増やすことで、中東地域の比率は1967年度の91.2%から1987年度には67.9%まで低下しました。その後、中国や東南アジア諸国からの輸入が減少したことから、中東への依存度が再び高まり、2009年度には89.5%に達しました。そして、2010年代に入り、サハリンや東シベリアなどロシアからの原油輸入が増加したことから、中東依存度は2009年度に比べて低下傾向にありました。しかし、2016年度にはロシアをはじめとするアジアからの輸入が減少し、中東への依存度は再び高まり、2020年度には92.5%に達しました。これに対して、2020年の米国の中東依存度は9.0%、欧州OECDは14%であり、日本の中東依存度は他の国々と比べて高い水準にあります。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 5
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 アジアの石油生産国の需要と供給のトレンドを見ると、国内の石油需要が増加し、これまで輸出されていた原油が国内にシフトしていることから、1990年以降原油の輸出量が減少していることが分かります。IEAは各加盟国に対し、石油の純輸入量の90日分以上の緊急備蓄を維持することを勧告していますが、日本は2022年8月時点で219日分の石油備蓄を保有しています。これは、産油量があり純輸入量が少ないため備蓄日数が多く算出されるエストニア、デンマーク、米国、オランダを除く24カ国中、フィンランドに次ぐ2番目の日数であり、24カ国の平均145日より74日も多い石油を備蓄しています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 6
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 原油価格のトレンドはこの数年で急速に変化しています。リーマンショックの2009年頃から原油価格は急速に高騰していきましたが、2014年秋から反落、今は2019年頃の水準に回帰しています。背景には、シェールガスやシェールオイルにより米国を始め世界中で化石燃料供給量が一気に増え、それに対し従来は価格調整機能を果たしていたOPECが対抗するために原油産出量を減らさない方針を発表したことがありました。その結果、石油火力発電のコストは減少。しかし、その後、再びエネルギー需要の増加により価格は一旦持ち直したものの、2020年3月に新型コロナウイルス・パンデミックが起こりました。

 この状況に対処するため、OPECは2020年3月に非OPEC諸国に追加減産を提案しましたが、ロシアがこの提案を拒否したため、協調減産自体が破綻し、崩壊しました。この結果を受けて、協調減産を主導していたサウジアラビアが態度を一変させ、増産を表明しました。市場は価格競争に突入するとみられ、原油価格は急落しました。原油価格の急落から2020年4月にOPECプラスは再び協調減産に合意しましたが、都市封鎖(ロックダウン)などで世界の石油需要は急減し、また原油の貯蔵能力の限界を超えるとの見方から、一時WTI原油はマイナス価格を記録するという前代未聞の状況を経験しました。

 その後はOPECプラスが合意した過去に例のない規模での協調減産の効果や、新型コロナウイルス・パンデミック以降の経済回復などにより価格は緩やかに上昇しています。その後、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略の影響で原油価格は高騰、2022年7月には約10万円/klとなりました。以降は米国政策金利の上昇や世界経済の減速懸念により、価格は下落傾向となりました。2023年にはパレスチナ・ガザ地区での戦争等による中東情勢の悪化から、再び上昇傾向に転じています。

 原油の輸入代金は、日本にとって無視できない負担となっています。近年の日本の総輸入金額に占める原油輸入金額の割合を見ると、2015年度に10%を下回って以降、9%から11%程度の水準が継続しており、2019年度は10.3%、金額で7兆9,772億円となっています。しかし、2020年度は新型コロナウイルス・パンデミックの影響による石油需要の減少から原油の輸入量が減少し、原油の輸入CIF価格が低下したことにより、原油輸入金額の占める割合は5.9%となりました。2021年度は新型コロナウイルス・パンデミックからの経済回復による石油需要の増加から原油の輸入量が増加したこと、原油の輸入CIF価格が上昇したことにより、原油輸入金額の占める割合は8.8%となりました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 7
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

石炭

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 8
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 上記のグラフは、日本の石炭の国内生産量と輸入量の推移を示しています。2021年度に日本は石炭の99.7%を海外からの輸入に頼っています。日本の国内石炭生産量は、2000年代以降、年間120万t前後で横ばいでしたが、2021年度には66万tに減少しました。2021年度の輸入原料炭は6,338万t、輸入一般炭は1億1,421万tで、無煙炭を含む石炭の総輸入量は1億8,382万tに達しました。2021年度の輸入一般炭のうち、オーストラリアが72.3%を占め、ロシア(11.2%)、インドネシア(9.5%)、米国(3.6%)、カナダ(2.7%)の順となっています。日本企業はオーストラリアを中心とした海外の炭鉱開発に積極的に参加してきましたが、近年、企業に環境への配慮を求めるESG投資への移行に伴い、海外の一般炭鉱から撤退する動きが出てきました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 9
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 1990年以降、日本において輸入される石炭の価格(CIF価格)は原料炭で4,000円/tから10,000円/t、一般炭で3,500円/tから8,000円/tの範囲で変動してきました。2000年代半ばからは、原油価格の上昇に伴い石炭の採掘コストや輸送コストが上がり、世界的な石炭需要の増加もあって石炭価格が高騰しました。しかし、2009年には世界金融危機の影響で急落。その後、2011年には中国などの需要増により再び価格が上がりました。原料炭の輸入価格は、2017年3月に5年ぶりに20,000円/t前後まで上昇した後、反動減があったものの再び上昇し、2019年5月には17,000円/tから18,000円/t台で推移しました。

 生産・輸出は堅調の一方、需要の伸びが鈍化したため、徐々に低下していき、新型コロナウイルス・パンデミックで経済活動が停滞したこともあり、2020年7月以降は10,000円/t台まで下落しました。そして、2021年に入ると、鉄鋼需要の回復や中国において需給が逼迫したため、急速に上昇し、2021年11月には28,000円/tまで上昇しました。2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が発生し、同年4月のEUと日本によるロシア炭の輸入禁止表明等もあり、5月には50,000円/tまで上昇しましたが、輸入需要が停滞する中で供給が追い付き、7月をピークに下落基調となり、2023年1月には40,000円/t台まで下落しました。一般炭の輸入価格においても金額に多少の違いがありますが、同様の傾向で推移してきました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 10
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 2021年の世界の石炭消費量は、前年比6.0%増の79億5,812万tと推計されています。2021年の石炭消費量の国別シェアを見ると、中国の消費量は42億2,590万tで、中国だけで世界全体の53.1%を消費してます。中国の石炭消費量は、2000年代に入って急速に増加し、2013年には40億tを超えました。その後、大気汚染対策により2016年まで減少しましたが、2017年以降に増加に転じています。また総消費量の13.8%を占めるインドと中国で世界の石炭消費量の66.9%を占め、米国、ロシア、日本を加えた上位5カ国で世界の石炭消費量の78.1%を占めています。日本の2021️年の石炭消費量は1億7,420万tで、世界第5位、全体に占める割合は2.2%となっています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 11
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 中国が膨大な石炭を必要としている背景には、石炭を用いた火力発電の伸長があります。中国は現在、再生可能エネルギーや原子力発電の建設を推し進めていますが、火力発電、特に石炭火力にかなり依存しています。石炭は石油や天然ガスと比しても世界での埋蔵量が多く、今後も安定的なエネルギー源として用いられていく見込みですが、需給が逼迫すれば当然価格は高騰します。また、石炭は他のエネルギー源に比べ、燃焼による窒素加工物含有量や硫黄加工物含有量が多く、後処理をしなければ深刻な大気汚染を引き起こします。環境対策も今後の大きな課題です。

石油・石炭・天然ガスの化合物含有量

天然ガス

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 12
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 ガスと言うと、お風呂やガスコンロで用いられるガスのことを想像するかもしれません。確かにガスという燃料はそのまま家庭用や産業用に「ガス」という状態のままで使用されています。ところが、実際の日本での消費量を見てみると、都市ガスとして使われているのは全体の36%にすぎず、ほとんどのガス燃料は、火力発電のための燃料して使われています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 13
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 天然ガスには、ガス採掘所から気体のままパイプラインを通して流通させるものと、一度冷却し液体状態にしたLNG(液化天然ガス)の2種類があります。ヨーロッパや米国では一般的に天然ガスはパイプラインで輸送されています。日本でも国内で採掘させる天然ガスはパイプラインで輸送されています。しかし国内天然ガスの採掘量は日本全体の供給量の2.2%と非常に少なく、日本は海外からの輸入天然ガスに頼っています。日本が輸入している多くの天然ガス産地は日本から離れており、LNGの形でタンカーに載って国内に入ってきています。国内天然ガスの生産は、新潟県、千葉県、北海道を中心に生産されており、2020年度は約22.6億㎥(LNG換算で約159万トン)です。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 14
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 日本は現在電力の約34%を天然ガスで調達しています。では、その天然ガスはどこから輸入しているのでしょうか。2012年度から最大のLNG輸入先であるオーストラリアからは、新たなLNG基地からの輸入を開始しており、LNG輸入に占める割合は、2012年度の19.6%から2021年度には38.3%に拡大しています。一方、インドネシアは1980年代半ば、マレーシアは2000年代半ばにピークを迎え、その割合は年々減少しています。また、2014年度にはパプアニューギニアからの輸入が始まり、2017年1月からはシェールガスを原料とする米国からのLNG輸入が始まるなど、供給源の多角化もさらに進んでいます。2021年には、日本の輸入量が世界のLNG貿易の19.6%を占めました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 15
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 価格推移では、2011年度から2013年度にかけて、日本のLNG輸入CIF価格は、原油価格が3年連続で平均100ドル/バレルを超え続け、円建てLNG輸入CIF価格は2014年度に約87,000円/tと過去最高を記録しました。2014年度後半には、国際原油価格の下落に伴い円建てLNG輸入価格も下落し、2016年度の円建てLNG輸入価格は約39,000円/tと、過去最高だった2014年度の半分以下の水準となりました。また、2017年度に国際原油価格が上昇に転じたことで、2018年度の円建てLNG輸入価格は約60,000円/tに上昇しました。2019年度からは再び原油価格が減少に転じ、また原油価格に連動しない米国産LNGやスポットLNG増加の影響もあり、2020年度は41,000円/t台に低下しました。2021年には原油輸入CIF価格が上昇に転じたこともあり71,000円/t台となりました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 16
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 2021年の世界の天然ガス生産量は約4.0兆㎥でした。2009年から2010年までの10年間の平均成長率は3.1%でしたが、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で需要が低迷し、2020年度は前年比で2.7%減少となりました。しかし、2021年度は前年比で4.5%増となり生産量は回復しました。

 さらに、油価の低下の影響により、新規LNGプロジェクトの最終投資決定は減少傾向にありますが、需要が安定的に伸びるためには、今後も新規プロジェクト投資が必要であると考えられています。現在、GTL(Gas to Liquids)やDME(Di-Methyl Ether)など、天然ガスの新しい利用法の可能性を広げる技術が開発され、商業生産も進んでいます。また、世界の多くの国で、シェールガスやCBMなどの非在来型天然ガスの開発が計画されており、特に米国ではシェールガス増産が顕著であり、2021年には8,490億㎥に達しました。ただし、CBMの生産量は過去最高を記録した2008年以降減少傾向が続いています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 17
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

原子力発電

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 18
(出所)第38回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会「原子力政策に関する直近の動向と今後の取組

 日本のエネルギー政策全体の大きな転換点となった東日本大震災時の東京電力福島第一原子力発電所事故発生から13年が経過しました。東日本大震災後に原子力発電所が全て稼働停止となりましたが、その後も2013年まで少量ながら原子力発電量が存在している理由は、関西電力の福井県大飯発電所の原子力発電所が一時的に再稼働されていたためです。もともと原子力発電は、日本の高度経済成長期に膨れ上がる電力需要を賄うため政府主導で進められてきました。

1955年12月原子力基本法が成立し原子力利用の大枠が決定、1957年には原子力発電を行う事業者として日本原子力発電が発足します。1963年に日本初の原子力発電に成功し、1966年には日本初の原子力発電所・東海発電所が完成し、商用の営業運転を開始しました。「省資源・二酸化炭素排出量ゼロ・エネルギー安全保障の確立」という夢の技術として期待された原子力発電は、2011年の東日本大震災で社会の捉え方が大きく変化しました。

その後全ての原子力発電所は全て活動を停止しましたが、2015年8月に九州電力の川内原子力発電所が運転を再開、2016年2月に関西電力の高浜原子力発電所が運転を再開しました。しかし同3月大津地方裁判所の仮処分を決定、高浜原子力発電所は運転を再び停止しました。また、2018年には関西電力大飯発電所の1、2号機、四国電力伊方発電所の2号機、東北電力女川原子力発電所の1号機がそれぞれ運転を終了しました。2019年には九州電力玄海原子力発電所の2号機が4月に、東京電力福島第二原子力発電所の1〜4号機が9月に運転を終了しました。

2024年2月末時点で再稼働中の原子炉は12基、原子力規制委員会による新規制基準適合に係る設置変更の許可がなされた原子力発電所は5基となっています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 19
(出所)第6次エネルギー基本計画

 原子力発電の魅力的な点は発電コストの低さです。現在日本政府が2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」で使われているコストの比較データでも、原子力発電は最も発電コストの低い手法の一つとして扱われています。過去、この発電コストの低さを強調する議論に対し、「原発事故が起こった場合の対策費用や社会的損失費用などがしっかり考慮されていない」といった指摘がありました。

 そのため、経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に「発電コスト検証ワーキンググループ」が設置され、最新のエネルギー市場を踏まえて再度エネルギーコストを試算し、発電コストの見直しが実施されています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 20
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 原子力発電にはメルトダウンなどのリスク以外にも、放射性廃棄物の再処理・中間貯蔵・最終処分の問題があります。そのためもあり、第6次エネルギー基本計画では、「安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」という方針が決まりました。しかしながら、全面廃止するという意味合いではなく、発電コストを下げ、目標とするエネルギーミックスの実現に向けて、経済産業省は原子力発電の再稼働を進めてきました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 21
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、日本では原子力発電による発電量が減少しましたが、2014年には再び増加に転じました。一方、欧米では、原子力発電所の新規建設は少ないものの、発電量の増加や設備利用率の向上などにより、発電量は増加傾向にあります。例えば米国では、スリーマイル島事故後の安全性向上のための自主的な取り組みにより、官民一体となって原子力発電所の稼働率を向上させた結果、近年は90%前後の稼働率を維持しています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 22
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023

 一方、日本では、東日本大震災後、原子力発電所が長期にわたって停止しており、2015年8月に新規制基準の施行後初めて再稼働した九州電力川内原発1号機をはじめ、2024年2月までに12基が再稼働したものの、設備利用率は低迷したままです。また、エネルギー需要が急増している新興国を中心に、新たな原子力発電所の導入や原子力発電所の増設が検討されています。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 23
 (出所)経済産業省資源エネルギー庁「サプライチェーン強化に向けた人材育成の取組

 安全を第一とした原子力発電の再稼働に向けた必要不可欠な要素の1つが人材の確保です。東日本大震災以降、原子力関連業務に従事する従業員数の減少し、原子力関連企業の就職説明会への参加数は減少しています。原子力発電に関わるサプライヤーの数も減少しており、東日本大震災以降合計20社が事業から撤退しました。そのため、戦略的な原子力人材育成・確保策を展開する必要性があります。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 24
 (出所)原子力人材育成ネットワーク戦略ワーキンググループ「原子力人材育成戦略ロードマップ2023年度改訂版

 これらを背景に、産官学一体となった原子力人材育成活動を推進する「原子力人材育成ネットワーク(人材NW)」の戦略ワーキンググループ(戦略WG)は2024年3月、「原子力人材育成戦略ロードマップ2023年度改訂版」を発表しました。2014年の策定以来10年ぶりの更新となり、今後3年毎にアップデートされます。

 今回の改定では、10年後のあるべき姿を「原子力の社会的認知・将来的な役割認識」「福島の復興・再生」「原子力発電の持続的な活用 (再稼働、運転保守、新増設)」「核燃料サイクル・放射性廃棄物処分 (一般廃炉含む)」「研究開発」「原子力教育」「国際貢献・国際展開」の7つのテーマを設定し、人材育成に関する施策を5つに分類しロードマップとして定義しました。

 新規追加されたテーマは、「原子力の社会的認知・将来的な役割認識」「研究開発」の2つです。「原子力の社会的認知・将来的な役割認識」では、そもそも原子力分野に人材が集まる環境かどうかを観点として組み込み、原子力の社会的認知・将来的な役割認識が高まっている状態を目指すこととしました。「研究開発」では、原子力発電に関する長期的かつ戦略的な研究開発を着実に進めるために、それを支える人材が持続的に育成されるべきだとし追加されました。

再生可能エネルギー(新エネルギー)

 最後に、「未来のエネルギー」と呼ばれてきた再生可能エネルギーの状況を見ていきましょう。再生可能エネルギーと一言で言っても実は定義は曖昧です。経済産業省は、再生可能エネルギーと新エネルギーの用語を使い分けており、再生可能エネルギーは広義で、太陽光発電(PV)、太陽熱発電(CSP)、風力発電、地熱発電、潮力発電、バイオマス発電、水力発電などを全て含みます。一方で新エネルギーは、再生可能エネルギーから大規模水力発電、フラッシュ方式地熱発電、空気熱発電、地中熱発電を除いたものを指します。ですが、実態としては専門家の間でも定義は今でも揺り動いていますし、外国にいけばなおさら定義は異なります。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 25
(出所)IRENA

 こちらは国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表したデータです。再生可能エネルギーの発電コストについて、2010年と2022年を比べたものですが、太陽光(PV)、太陽熱(CSP)でコストが大きく下がり、風力もコストが低減していることが見て取れます。背景には、太陽光発電パネルメーカーも風力発電機メーカーもグローバル規模で熾烈な企業競争があります。とりわけ、中国やインドなどの新興国メーカーの台頭が目覚ましく、それらが発電コストをどんどん押し下げてくれています。日本政府も、固定価格買取(FIT)制度を2012年に本格開始しました。固定価格買取制度の導入により、再生可能エネルギーに対する投資回収の見込みが安定化したこともあり、制度開始後、2018年度末までに運転を開始した再生可能エネルギー発電設備は制度開始前と比較して約2.3倍に増加しています。2022年4月1日より、固定価格買取制度(FIT)に加えて、再生可能エネルギー発電事業者の投資の予見性を確保しつつ、市場を意識した行動を促すために、市場価格に応じた固定のプレミアムを提供するFIP制度が開始されました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 26
(出所)METI

 上の図は、経済産業省より入手した2020年度の再生可能エネルギー導入状況です。近年の世界的なエネルギー需要の急増を背景に、これまでと同じ質と量の化石燃料の確保が困難になることが懸念されています。このような状況に対応し、低炭素社会を実現するために、再生可能エネルギーの需要が高まっています。2010年6月に改訂された日本政府の「第3次エネルギー基本計画」では、原子力発電と再生可能エネルギー(水力含む)の比率を、2020年までに50%、2030年までに70%とする計画を打ち上げました。さらに、その中で、再生可能エネルギーが占める割合を、2020年までに全体の10%に達するという計画も含まれました。実際、2020年度の再生可能エネルギーは全体の約20%に達していますが、原子力発電は東日本大震災によって計画の方向性を失い、2021年10月の「第6次エネルギー計画」では、原子力発電の目標を20%〜22%としています。一方、再生可能エネルギーの目標は2018年7月「第5次エネルギー計画」の22〜24%から36〜38%に引き上げています。2024年は第7次エネルギー計画の策定が予定されており、目標設定に関する動向が注目されます。

では、再生可能エネルギーはやはり期待できない電力源なのでしょうか。国際機関の分析によると、日本の再生可能エネルギーの設備容量は世界第6位、太陽光発電の設備容量は世界第3位となっています。日本の発電量はこの8年間で約4倍に増加しており、世界で最も成長している国の一つと言えます。しかし、日本の発電における再生可能エネルギー割合は19.8%です。この数値で比較すると中国は27.7%、ドイツは43.6%、同じ島国英国は43.1%、カナダはなんと67.9%です。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 27
(出所)METI

電力の行方

 電力問題の課題には基本的に3つの大きなテーマがあります。

  1. ピーク電力需要の削減(ピークシフト・ピークカット)
  2. バッテリーと水素蓄電
  3. 系統強化

 ピーク電力需要の削減とは、1年や1日の中で最も電気を必要とする時間帯の電気使用量を減らすということです。電気は1日中満遍なく使われているわけではありません。基本的には夏の昼間が最も電力需要が大きく、春秋の夜は電力需要が著しく低下します。すなわち1日をかけて電力消費量を減らす必要はなく、ピーク時の電力需要を削減できれば発電容量を大きくする必要がなくなるというわけです。そこでピークシフトとピークカットという考え方が出てきます。ピークシフトとはピーク時に節電しピーク時でないとき電気を使うという電力需要の差を平準化する試みです。その方策としては、ピークでないときに蓄電してピーク時に使用するという供給側の対策と、電気料金を時間帯ごとに変えピーク時に高くそれ以外に安くすることで利用者のピーク時以外利用を促すという需要側の対策の2つが大きく検討されています。ピークカットとは節電技術を開発・導入して常時電力を下げるという方法と、ピーク時に活用できる太陽光発電などを利用してピーク時の商用発電量を減らすという方法があります。

 日本が目指す再生可能エネルギーの大量導入には、電力需要のピークを抑えるための蓄電対策に加え、出力変動を吸収するための大量の蓄電システムが必要となります。そこで注目されているのが、水素エネルギー貯蔵の可能性です。Power to Gas(P2G)は、不安定な再生可能エネルギーの余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵・利用するシステムで、貯蔵した水素はいつでも燃料電池で電気として取り出すことができます。蓄電池と水素を比較すると、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵するという点では同じですが、蓄電池は変換部分と貯蔵部分が一体化しているため、大容量を実現するためにはコストのかかる蓄電池をいくつも並べる必要があります。一方、水素は貯蔵部(ガスタンク)を追加するだけで簡単かつ安価に容量を増やすことができ、また、水素貯蔵は既存の蓄電池に比べて大容量の電気を長時間貯蔵できるというメリットもあります。日本におけるP2Gはまだ始まったばかりですが、今後の再生可能エネルギーの拡大のためには必須の技術です。欧州で活躍している水電解システム、水素エネルギー貯蔵システム、燃料電池システムなど、P2Gに必要な技術は、いずれも日本が得意とする技術であり、これらの技術を普及させることで、再生可能エネルギー発電の大量導入を実現することができます。

 最後に、再生可能エネルギーの大量導入に対応した電力の系統(送配電線)の強化が重要となります。経済産業省電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2023年3月、再生可能エネルギーを最大限活用していくための「広域連系系統マスタープラン」を発表し、2050年カーボンニュートラルも見据えた将来的な系統の絵姿を策定しました。これは将来の電力需要及び電源構成のシナリオを前提とした需要と供給のアンバランスを補強する系統強化の方針であり、今後具体的な整備内容やコスト等が策定されます。将来の投資額シナリオは最大7兆円となり、最も投資額が大きいのは、北海道-東北-東京の広域系統整備に2.5兆円から3.4兆円。北海道内の増強でも1.1兆円を見立ました。

【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) 28
(出所)経済産業省資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」

 電力の問題は、今や地球環境の問題と密接に関連してきています。日本が目指すカーボンニュートラルへの挑戦は簡単なことではなく、あらゆるリソースを最大限投入し、経済と環境の好循環を生み出していくことが重要です。これはエネルギーも含めてです。電力や再生可能エネルギーについて基本的な内容を知った後は、国連や経済界が今後の世界がどうなっていくと予測しているのかもおさえておきましょう。またESGの話題についても理解しておくと、今の世の中や将来についての視界が開けてくると思います。

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。