【日本】政府、第5次エネルギー基本計画を閣議決定。技術自給率の概念を新たに強調 2018/07/04 最新ニュース

 日本政府は7月3日、日本の長期的なエネルギー計画政策方針を示す「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定した。第4次エネルギー基本計画は2014年に閣議決定しており、4年ぶりの改定となった。長期的な電源構成については、2015年7月に閣議決定した「長期エネルギー需給見通し」の中で示した2030年目標を据え置いた。

 エネルギー基本計画は、電力だけでなく、ガソリンやガス等を含むエネルギー全般の政策方針を示す重要な文書。エネルギー政策基本法により、約3年に1度基本計画を見直すことになっているが、今回は、再生可能エネルギーの位置付けや、原子力発電所に対する世論、国際的な二酸化炭素排出量削減機運の中での石炭火力発電所の位置付け等により議論が紛糾し、決定が遅れていた。

 前回から4年が経過し、パリ協定が発効し、国際的にも再生可能エネルギーへの期待感が高まる中、今回日本政府は、2015年に策定した2030年電源構成目標を変えることはしなかった。据え置かれた2030年目標は、液化天然ガス(LNG)火力が約27%、石炭火力が約26%、再生可能エネルギーが22%から24%、原子力が20%から22%、石油火力が約3%。このうち再生可能エネルギーには、水力約9%が含まれるため、太陽光、風力、地熱、バイオマスを合わせると13%から15%となる。

 政府は、エネルギー政策の基本方針について、安全性、資源自給率、経済効率性の向上、環境への適合の「3S+E」を改めて堅持しつつも、今回「技術自給率(日本の技術で賄えるエネルギー供給率)」という概念を強調した。これは、中国で技術開発が進む太陽光発電を警戒すると同時に、国産技術として標榜する原子力発電の重要性を謳うものと言える。また、同様に国産技術として強化することを狙う次世代高効率石炭火力発電、地熱発電、洋上風力発電、水素エネルギーへの予算投下の理解を促す役割も果たしている。

 原子力発電については、今回も「重要なベースロード電源」と明記し、再稼働を推進する方針を表明。「可能な限り原発依存度を低減する」という表現もあるが、その考慮の結論は、震災前のの25%から目標を「20%から22%」としたこの数%ということになる。今後政府は、原発再稼働とともに、懸案となっている高レベル放射性廃棄物の最終処分場の確保、使用済燃料の貯蔵能力の拡大、高速増殖炉もんじゅの廃止により挫折しかかっている使用済燃料再処理及びプルサーマル構想の立て直しも実施していく。一方で、再利用のため貯蔵されているプルトニウムの保有量については、「削減に取り組む」と初めて明記した。新設・増設については記載を避けた。

 バッシングが続く石炭火力発電に対しては、石炭ガス化複合発電(IGCC)、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)等の次世代高効率石炭火力発電と炭素回収・有効利用・貯蔵(CCUS)の実用化を柱とした。CCUSは、炭素回収・貯蔵(CCS)に有効利用が加わった概念で、日本が国際的に主張。有効利用では、炭素を油田に投入し原油採掘効率を上げる等の活用例がある。国内での石炭火力発電所については、超々臨界(USC)及びそれ未満の石炭火力発電所を「非効率」と謳い、より高効率のものへ切り替えていくことへの正当性を強調した。一方で、海外輸出についてはトーンダウンさせ、原則としてUSC未満の輸出は控える方針を示した。但し、国内ではUSCを非効率と言いつつ、海外輸出は是とする矛盾も見られる。

 再生可能エネルギーについては、「主力電源化」という表現を今回新たに用いたものの、具体的な計画は概ね従来のものを踏襲するという玉虫色の内容となった。再生可能エネルギー発電コストの低減が鍵を握るとしつつも、前述の「技術自給率」が今後の再生可能エネルギー政策の重要な裏テーマとなっていきそうだ。

 その他の電源では、火力発電の中では比較的二酸化炭素排出量の少ないガス火力発電を強化する考えで、高効率ガス火力発電の海外輸出も強化する姿勢を示した。将来政策とする水素エネルギーについては、水素供給コスト低減のため、石炭の中でも二酸化炭素排出量の多くて安価な褐炭を念頭に置いており、国際的な理解が得られるかは未知数。政府は、炭素回収・貯蔵(CCS)を組み合わせることで理解を得る考えだが、二酸化炭素排出係数をどれだけ抑えらえるかには懐疑的な見方もある。国産メタンハイドレートに関しては、高い期待を寄せ、研究開発を進める。

 また省エネについては、2020年代早期にスマートメーターを全世帯・全事業所に導入する考えで、特に個人向け電力消費量の抑制を狙う。さらに二酸化炭素多い住宅分野では、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す。住宅以外でも、2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現していく。

 ガソリンを含めエネルギーの多くを海外に依存する日本では、海外からの安定的な化石燃料供給も重要となる。石油・天然ガスの自主開発比率を、2016年度の27%から2030年には40%以上に引き上げ、石炭の自主開発比率も2016年度の61%並みを維持する目標を定めた。達成への最大の鍵をにぎるのは、2016年11月の法改正により企業買収支援等の機能が拡充された独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による海外資源資産の獲得。

【参照ページ】新しいエネルギー基本計画が閣議決定されました
【計画】第5次エネルギー基本計画
【計画】長期エネルギー需給見通し

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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