スウェーデン鉄鋼大手スウェーデンスティール(SSAB)、スウェーデン鉄鉱石採掘LKAB、スウェーデンのエネルギー大手バッテンフォールの3社は6月20日、化石燃料を一切用いない製鉄の実証プロジェクト「HYBRIT Pilot Plant」を開始した。スウェーデン北部のルーレオーに製鉄所を建設し、2020年に完成する予定。同プロジェクトには、スウェーデンのエネルギー庁も協力し、開始イベントには同国のステファン・ロベーン首相も参加した。
一般的に製鉄には化石燃料を大量に用いる。まず、自然状態の鉄鉱石は酸化しているため、鉄を取り出すために石炭を投入し、鉄分子を取り出すが、その過程で副産物の二酸化炭素が大量に発生する。また、製鉄プロセスでは大量の電気も消費するため、スウェーデンは歴史的に製鉄が発達してきた国。製鉄は気候変動にとっての大きな課題とされており、二酸化炭素を発生させない製鉄手法を構築することで、新たな製鉄産業のリーダーシップを狙う。
今回の製鉄プロセスでは、LKABが石炭に変わりに水素を用いた「直接還元(Direct Reduction)」製法を用いて、パレット上の純鉄を生産する。この手法は日本では「海綿鉄」とも呼ばれる。また、製鉄プロセスで用いる電力は、バッテンフォールが水力発電や再生可能エネルギーを通じて供給する。山間部の多いスウェーデンではもともと水力発電の割合が高い。この製法を用いると、二酸化炭素を排出せず、副産物は水だけとなる。同製法で本格的な製鉄所が誕生するのは世界初だという。
同プロジェクトは2016年春に発足。2035年までに商業化に漕ぎ着けたい考え。スウェーデン・エネルギー庁は、同プロジェクトを全面的にバックアップしとえり、これまでに実証実験プロジェクトして2案件、研究プロジェクトとして1案件に補助金を拠出。実証プラントにも、5億2,800万スウェーデンクローナ(約65億円)を出した。一方、プロジェクトに加わる3社も合計で8.3億スウェーデンクローナ(約103億円)投資する。
【参照ページ】HYBRIT: Construction start for globally-unique pilot plant for creating fossil-free steel
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