英環境・食糧・農村地域省は12月19日、環境法制を包括的に規制するための「環境法」の法案を公表した。環境法制の原則や政府の環境当局の設置等を定めており、環境行政の大改革を実施する。また、来るEU離脱を見越し、同国の環境行政を一元的に再構築させる狙いもある。
現在の英国の環境行政は、EUでの政策方針や監督行政に大きく依存しており、EU離脱に伴い、同国内で体制を再構築しなければならない。また、規定した環境法制の監督や司法制度等も自前で設置する必要がある。特に、昨今「合意なき離脱」となるリスクも生じており、このシナリオでも環境法を確実に執行しうる体制を整える必要性まで生じている。
今回の環境法案では、環境当局体制の新設、大気汚染改善、自然保護、廃棄物マネジメント・省エネの改善、地方水・下水・地下水・廃水マネジメントの改善を大きな主眼に置いた。英政府は2018年1月、環境関連の各分野での長期目標を定めた「2025年環境計画」も発表しており、今回の法案は、それの達成に向けた役割も担う。
環境当局体制の新設では、新たに「環境保護室(OEP)」を設置。政府の環境政策を独立的かつ総合的に判断し、政府と英国議会の双方に対して環境法規制の監督、評価、諮問を行う。また、「合意なき離脱」の際には、合意までの移行期間までの間、アイルランドと北アイルランドの国境に物理的な管理施設を設けない措置が導入できない場合に、EUと英国全土を単一の関税区域に置く「バックストップ」と俗称される制度が開始される予定となっている。その際には、英国にはEUとの関税同盟を構築するため、現行の欧州司法裁判所のようなものに替わる、英国でのEUの環境法制を遵守させる措置や違反時の司法措置が求められることとなる。今回の環境法案では、OEPにその役割を担わせると規定している。
環境政策の設定に関しては、現在は、EUに関する国際機構条約の中で種々の環境原則を規定しており、EUの中で具体的な議論を始める際に、それらの原則を参照してきている。しかしEU離脱後は、EUの各条約が関係なくなるため、改めて英国としての原則制定や、原則に基づく政策方針を規定する必要が出てきた。今回の環境法案では、政府として公式に環境原則の解釈や適用に関する方針声明を策定し、各省庁に対し通知することを義務化した。
また2025年環境計画との関係では、同計画の中で表明した政府としての環境マネジメントのあり方を環境法案の中に盛り込み、法制度化する。
【参照ページ】New environment protections set out in flagship bill
【参照ページ】Environment Bill: policy paper
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