世界経済フォーラム(WEF)は9月19日、パリ協定での定めた国際合意の達成のためにはバッテリーが鍵を握るとするレポートを発表した。世界経済フォーラムが運営する官民パートナーシップ「グローバル・バッテリー・アライアンス(GBA)」がまとめた。バッテリー技術を適切に導入すれば、世界の二酸化炭素排出量の40%を占める電力業界と輸送業界からの二酸化炭素排出量を30%削減できるとした。
WEFは、2050年に世界の二酸化炭素ネット排出量をゼロにするためには、2030年までに現在のバッテリー生産量の19倍の量が必要となると想定。今後10年間で5,500億米ドル(約59兆円)の投資が必要となると見積もった。それにより、原材料の生産量も5倍から40倍に、原材料精製は14倍が必要となる。
今回のレポートは、バッテリーが二酸化炭素排出量削減に果たす役割だけでなく、バッテリー事業のサプライチェーン全体が抱える環境課題、社会課題の分析も実施した。原材料の資源採掘を抑制するためには、バッテリービジネスの「サーキュラーエコノミー化」が必要と提言。バッテリーの再利用、最目的化、リサイクルのサイクルを確立すべきとした。そのためにバッテリー・リサイクルの規模も現状の15倍にまで拡大する必要があるとした。
例えば、電気自動車(EV)バッテリーを電力グリッド網につなぐことで、固定蓄電池の65%の機能を担えると分析。また、使用済バッテリーをリサイクルすることで、2030年には世界のコバルト需要の13%、ニッケルの5%、リチウムの9%を供給できると算出した。
さらに資源採掘を中心に、児童労働や強制労働等の人権侵害リスクがあることも指摘。トレーサビリティや地域のオペレーションへの介入をするための規範を確立すべきとした。
世界バッテリー連合には現在、44の企業・機関が加盟。フォルクスワーゲン、ボルボ、アウディ、アルファベット、SAP、BASF、ユミコア、ジョンソンコントロールズ、Signify、ロイヤル・ダッチ・シェル、エネル、Eurasian Resources Group(ERG)、トラフィグラ・グループ、中国五鉱化工進出口商会(CCCMC)等が参加。日本企業では、三菱商事とNECが参加している。また、世界銀行、国際環境計画(UNEP)、国連児童基金(UNICEF)、経済協力開発機構(OECD)、国際エネルギー機関(IEA)、アフリカ開発銀行(AfDB)、ドイツ国際協力公社(GIZ)や、責任ある企業同盟(RBA)等も参加している。
【参照ページ】Decade of the Battery: Sustainable Batteries Represent the Best Prospect for Meeting Paris Climate Goals
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