ドイツのメルケル首相と州政府首相は1月17日、2038年までに石炭火力発電所を全廃することで合意した。同目標については、2019年1月の石炭委員会の結論として決まっていたが、1年をかけ、ようやく州政府との合意が実現した。連邦政府の政策では、同時に2038年までに原子力発電も全廃する。
【参考】【インタビュー】ドイツが掲げた2038年までの脱石炭火力 〜石炭委員会では何が議論されたのか〜(2019年2月20日)
今回の合意では、石炭の採掘及び火力発電所に依存する州に対し、合計約400億ユーロ(約4.9兆円)の補償金を連邦政府から支出することで妥結した。対象となる主な州は、特に低質の石炭である「褐炭」の依存度が高いザクセン・アンハルト州、ザクセン州、ブランデンブルク州、ノルトライン・ヴェストファーレン州の4州。前3州は旧東ドイツで、産業構造の課題が大きい地域。石炭火力発電所の廃止に関する補償だけで、旧東ドイツ地域に対し26億ユーロ、旧西ドイツ地域に対し17.5億ユーロを用意する。
今回の決定では、石炭依存州での新たな雇用創出のため連邦政府機関や軍施設を当該州へ移転する計画も進める。石炭火力発電所廃止計画の履行については、2026年と2029年にレビューを実施し、必要であれば新たな手を打つ。石炭火力発電所を廃止すれば、独エネルギー大手RWEだけで6,000人の失業者が出ると見られている。RWEは、当初35億ユーロの援助を期待していたが、実際には26億ユーロしか受け取れない見通しだという。
一方、ドイツの脱石炭政策に対しては、EUからドイツ連邦政府への助成金の流れがある。EUが具体策を発表したばかりのJust Transition Mechanismでは、ドイツとポーランドが大きく資金を受け取ることが見込み。金額はポーランドが20億ユーロ、ドイツが8.77億ユーロ。ルーマニアも7.57億ユーロ、チェコが5.81億ユーロの模様。
【参考】【EU】欧州委、欧州グリーンディール投資計画とJust Transition Mechanismの詳細内容発表(2020年1月18日)
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