国連食糧農業機関(FAO)は5月7日、4月期の「FAO食料価格指数」が前月比3.4%、前年同月3%下落したと発表。新型コロナウイルス・パンデミックに伴い、経済や物流が打撃を受けた結果、世界のコモディティ需用は著しく減少。一方、サプライチェーンが断絶したことで、世界中で飢餓リスクが高まっている。
【参考】【国際】UNDP、新型コロナで脆弱な途上国の窮状訴え。FAOも飢餓防止で食料サプライチェーン維持要請(2020年5月4日)
FAO食料価格指数は、FAOが月次発表する世界の食料価格の指標で、砂糖価格指数、植物油価格指数、乳製品価格指数、食肉価格指数、穀物価格指数の5つで構成。2002年から2004年の価格を基準値として、国際取引価格から算出する。
砂糖価格指数は、3月比14.6%下落し、13年来の安値となった。エタノール用サトウキビの需要が減少し、砂糖に転用されたため、輸出可能量が拡大した一方、新型コロナウイルス・パンデミックを受け、多くの国で外出禁止措置が採られたため、需用が減退したと分析した。
植物油価格指数は、5.2%下落。背景には、バイオ燃料や食品セクターの需用の減少に加え、マレーシアのパーム油、米国の大豆の生産増等によるパーム油、大豆油、菜種油の価格が下落があるとした。
乳製品価格指数は3.6%下落。輸出増加、在庫増加、輸入需要の低迷、北半球の外食売上減少を受け、バターと粉乳の価格は、2桁の下落を記録した。
肉価格指数は2.7%下落。対中国輸出は一部回復したものの、他国への輸出減少を埋め合わせるには至らず、主要生産国は、物流や外出禁止措置に伴う食品企業からの需用の急激な落ち込みに苦しむ結果となったと分析した。
穀物価格指数は、微減に留まった。トウモロコシ価格は、家畜飼料とバイオ燃料生産の需要の減退に伴い、10%下落した一方、国際米価格は、主にベトナムによる一時的な輸出制限により、3月比7.2%上昇。国際小麦価格は、ロシアからの輸出割当量の迅速な履行により2.5%上昇した。
FAOは、2020年度の小麦需給の見通しを発表。欧州、北アフリカ、ウクライナ、米国の収穫量は減少するものの、豪州、カザフスタン、ロシア、インドの増加で相殺され、生産量としては、概ね2019年同水準の7.6億tと予測した。小麦消費率は、飼料消費が工業用消費を上回ると予測。在庫については、各国で5%減少し、2013年以来最低水準まで低下することが見込まれる一方、中国でかなりの上昇が予想され、2.7億tに達すると分析した。また、FAOはまもなく始まるアルゼンチン、ブラジル、南アフリカでのトウモロコシの大量収穫も見込んでいる。
2019年度の穀物消費量予測は、新型コロナウイルス・パンデミックを受け、2470万t下方修正を実施。米の消費量は、ナイジェリアの食糧摂取量予測の低下を受け、先月から減少したものの、全体としてはアジアの摂取量拡大により過去最大となると予測した。小麦消費率も1.2%増加とした。
穀物消費率の低下は、在庫増加を引き起こす。予想以上のトウモロコシ在庫の増加を背景に、穀物在庫は、現時点8.8億t。在庫消費比率は31.6%と、先月予測の30.7%を上回っている。
また2019年度の穀物取引については、トウモロコシと小麦を筆頭に2.8%増加し、4.2億tになると予測。黒海地域で栽培された小麦に対する輸出制限もほぼ解除され、生産国の輸出に影響を与えることはないと見込む。
今回の経験から、サプライチェーンの混乱は、商品価格暴落による農家や食品企業のダメージと、食品が届かなくなったことによる飢餓リスクの増大という二重苦を伴うことがみえてきた。
【参照ページ】Global food commodity prices drop further in April
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