英金融シンクタンクのプラネット・トラッカーは9月24日、欧州議会で審議されているEU漁船に関する新規制の政策効果を分析した結果を公表。新規制は、EUの海産物供給と海洋生態系の持続可能性を高めるとしつつも、政策効果を上げるためには遵守率を高めることも重要と指摘した。現行のEU規制でも、多くのEU加盟国で遵守率が低いことを突き止めた。
今回の分析では、9月15日時点でEUの船体登録システムに登録されている漁船81,181隻について、漁船航行追跡システムの搭載や漁獲の電子報告提出の状況を分析した。その結果、2012年に導入された規制の対象となっている全長12m以上の大型漁船では、42%が義務付けられている漁船航行追跡システムの搭載や漁獲の電子報告提出を怠っていた。さらに、そのうち47%は、そもそも履行状況を示す情報開示すらしていなかった。特にイタリアとギリシャでは未遵守が4分の3以上にのぼった。
同規制には免除項目があり、遵守基準を満たさない船舶の全てが必ずしも違法操業しているわけではない。それでも、報告未提出の大型漁船は、総トン数全体の29%を占めており、規制の穴となりやすい。
また、現在欧州議会で審議中の新規制は、漁船航行追跡システムの搭載や漁獲の電子報告提出の義務対象を全長12m未満の漁船にも拡大することを検討している。全長12m未満の漁船は、全漁船の85%を占め、EUでの漁獲量でも約25%を占める。特に、イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、クロアチアの5ヶ国は、EU域内の小型漁船全体の62%があり、そのほとんどが新規制の遵守基準を満たしていなかった。そのため、新規制の影響を大きく受けることとなる。
また、船数ではなく船の総トン数ベースで遵守状況を見た場合、遵守率に大きな差があった。具体的には、ベルギー、スペイン、英国(EU離脱済みだが今回の分析対象)、ポーランド、アイルランドでは、総トン数ベースで80%は遵守。一方、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ブルガリア、クロアチア、エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロベニアでは遵守率が50%以下だった。
総トン数ベースで考えた場合、現行規制を未遵守の大型漁船の総トン数が29%なのに対し、小型漁船全体の総トン数は11%を占めるのみ。そのため、プラネット・トラッカーは、今回の規制で小型漁船にも義務対象を拡大すると同時に、未遵守の大型漁船対策も必要となると提言した。
【参照ページ】Time to Rock the Boat – EU Must Enforce Rules to Bring Transparency and Sustainability to the Fishing Industry
【画像】Planet Tracker
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