
国連気候変動枠組条約第30回ベレン締約国会議(COP30)は11月22日、「グローバル・ムチロン」決議を採択し、閉幕した。「ムチラオン」とは、ブラジル先住民族の伝統的な言葉で「共通の目標に向けた人々の大規模な共同作業」を意味する。
今回の最終決議の原案は、ブラジルのルーラ大統領が2018年に提示。そこからの4日間で各国政府間での調整が発生し、最終決議がまとまった。
原案では、化石燃料に関し、「正かつ秩序ある公平な方法でエネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却(Transitioning Away From)を図り」や、「エネルギー貧困や公正な移行に対処しない非効率な化石燃料補助金を可能な限り早期に段階的に廃止(Phasing Out)するよう協力するよう促す」という文言を入れる案も示されていたが、全面的に削除された。
2023年の国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)で決議された「化石燃料からの脱却」に関しては、具体的なアクションを強めるためのロードマップの策定を求める国が多く、ルーラ大統領もロードマップ策定作業を開始させる意欲を見せていた。
また11月20日には、83カ国政府がロードマップ策定を求める声明を発表。特に、欧州、島嶼国、中南米からの支持が多く、韓国とモンゴルも支持した。
参加したのは、ブラジル、英国、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スイス、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スロバキア、モナコ、リヒテンシュタイン、マルタ、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ルーマニア、ブルガリア、スロベニア、クロアチア、エストニア、ラトビア、リトアニア、キプロス、韓国、モンゴル、ジョージア、バーレーン、モルディブ、メキシコ、チリ、パラグアイ、ペルー、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズ、パナマ、グレナダ、スリナム、キューバ、ハイチ、ジャマイカ、ケニア、ギニア、ギニアビサウ、シエラレオネ、ニウエ、カーボベルデ、モーリシャス、コモロ、アンティグア・バーブーダ、バハマ、ドミニカ、ドミニカ共和国、バルバドス、トリニダード・トバゴ、サントメ・プリンシペ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、パプアニューギニア、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ、東ティモール。
そのため、原案では、国別削減目標(NDC)の野心と実施のギャップに対処し、NDCの実施、国際協力及び投資を加速するための機会と行動を特定することを目的とする「1.5℃に向けたベレン・ロードマップ」の作成を開始、2026年のCOP31までに作業を完了させる案や、「各国が公正かつ秩序ある公平な移行ロードマップを策定する」ことへの支援を目的としたハイレベル閣僚級円卓会議を設置する案も示されていたが、資源国等の反対の声が大きく、最終決議ではいずれも削除された。代わりに、緩和と適応の両分野における国別貢献及び国家適応計画の実施加速、国際協力及び投資について検討する「ベレン・ミッション to 1.5」イニシアチブを開始することが決まった。
また原案では、先進国から発展途上国への1,000億円の資金提供目標に関し、発展途上国締約国が過去2年間に平均して受け取った資金は約600億米ドルに過ぎないことや、進捗を報告する金額算定手法の定義が固まっていないことを憂慮する文言も盛り込まれていたが、最終決議では全面的に削除された。その代わりに、「1.5℃パスウェイに沿った温室効果ガス排出の深遠かつ迅速かつ持続的な削減を達成するための緊急の行動と支援の必要性を認識し、資金、能力構築、技術移転が気候行動の重要な推進要因であることを指摘する」という文言が加えられた。
昨年の国連気候変動枠組条約第29回バクー締約国会議(COP29)で合意された「2035年までに、発展途上国向けの気候変動対策資金を年間3,000億米ドル以上、気候変動対策のための途上途上国への資金提供をあらゆる公的・民間資金源から年間1.3兆米ドル以上」は今回も盛り込まれた。但し、実現に向けた検討を深めるための作業部会の設置は見送られ、2年間の作業計画を進めることのみが盛り込まれた。
また、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)で合意された気候変動適応資金拡大を具体菓子、「2035年までに気候変動適応資金を3倍以上に増やす努力を求める」が盛り込まれた。但し、資金源については曖昧な表現に緩和され、原案で選択肢として示されていた対話機関の設置についても見送られた。
通商・貿易との関係では、中国政府等からの要請を背景に、「気候変動対策として講じられる措置(単独措置を含む)が、恣意的または不当な差別的手段、あるいは国際貿易に対する偽装制限となるべきでないことを再確認する」が盛り込まれた。
【参照ページ】Belém Political Package
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