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【国際】PM2.5の削減で気温上昇は加速。九州大学教授が論文発表。吸収しなければ止められないという論文も

 九州大学応用力学研究所の竹村俊彦主幹教授は12月10日、大気汚染対策により、人間活動により排出されるPM2.5の主要物質である硫酸塩エアロゾルの大気中濃度が減少することで、二酸化炭素排出による気温上昇は加速するとの研究論文を発表した。国際学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

 竹村教授は、自ら開発したエアロゾル(微粒子)による気候変化を計算できるソフトウェアMIROC-SPRINTARSを利用して、近い将来に想定される硫酸塩エアロゾル濃度の低下に伴う気温上昇について予測した。

 PM2.5 は、深刻な大気汚染を引き起こしていることで知られているが、PM2.5の主要物質である硫酸塩エアロゾルは、大気を冷却する効果があることがわかっている。今回の予測の結果、大気中の二酸化炭素濃度が高いほど、硫酸塩エアロゾル濃度を下げることによる気温上昇効果が大きくなるとの結果が得られた。

 同論文は、大気汚染対策の観点からPM2.5濃度を下げる場合、同時に温室効果ガスの濃度上昇を抑制しなければ、地球温暖化が加速度的に進行することを示した。これにより、気温上昇を抑制するためには、既存の想定以上に、二酸化炭素濃度を下げなければいけないことがみえてきた。

 気候変動の進展については、他にも悲観的な研究が最近明らかになっている。気候変動研究の大家でノルウェーの名誉教授Jorgen Randersと、ローザンヌ大学のUlrich Goluke准教授は11月12日に論文を発表。今後の気温上昇のシミュレーションを実施したところ、すでに気温上昇は、自動的に継続するステージに入ってしまっており、二酸化炭素排出量を削減しても、気温上昇は止められないという結論を導き出している。

 この論文「An earth system model shows self-sustained melting of permafrost even if all man-made GHG emissions stop in 2020」は、同じくScientific Reportsに掲載されている。北極圏の氷融解と永久凍土の融解により、大気中の水蒸気、メタン、二酸化炭素濃度が上昇する可能性があり、人為的な排出量を止めたとしても、自動的に濃度が上昇するサイクルに入ってしまっているという。

 同論文は、複雑度の低い地球システムモデル(ESCIMO)を用いて20500年までのシミュレーションを実施。気温上昇と海面上昇を回避するためには、1960年から1970年に人為起源の二酸化炭素排出量をゼロにする必要があったと算出。人為起源の排出量を2030年代にピークアウトさせ2100年までにゼロにしても、2500年までに産業革命前からの気温は3℃上昇し海面は3m上昇。たとえ2020年にゼロにしても、気温上昇は3℃、海面も2.5m上昇するという。

 同シミュレーションによると、これからの気温上昇を食い止めるためには、大気中から毎年二酸化炭素を33Gt吸収する必要があるとしている。

【参照ページ】PM2.5削減とCO2濃度増加により地球温暖化は急拡大することを解明
【論文】Return to different climate states by reducing sulphate aerosols under future CO2 concentrations
【論文】An earth system model shows self-sustained melting of permafrost even if all man-made GHG emissions stop in 2020

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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