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【EU】欧州委、工場と畜産農場の汚染物質削減強化でEU指令改正案発表。Fガス規則改正案も

 欧州委員会は4月5日、産業排出指令(IED)改正案を発表した。大規模工場約3万ヶ所と大規模畜産施設約2万ヶ所が対象とし、規制対象を大幅に拡大するルール案を示した。環境の議論が、気候変動だけでなく、生物多様性・生態系に広がってきたこととも関係している。

 産業排出指令(IED)は、2010年に気候変動緩和と大気汚染物質排出抑制のために導入されたEU指令。大規模工場を対象にしている。欧州委員会は、2019年12月に「欧州グリーンディール」を掲げており、その中で、2050年までに「汚染ゼロ」も打ち出している。

【参考】【戦略】EU欧州委が定めた「欧州グリーンディール政策」の内容。〜9つの政策骨子を詳細解説〜(2019年12月12日)

 今回のEU指令改正案でも、規制強化により、イノベーションを促進し、EU産業の国際競争力を強化することを目的としている。また、低炭素・脱炭素での成功例を踏まえ、EU指令として法整備することで、長期投資の予見性を高めることを狙う。

 IEDのルール骨子は、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、アンモニウム、メタン、水銀等の環境汚染物質に関し、事業所に対し、事業活動内容に応じた「利用可能な最善の技術(BAT)」の導入を義務化するもの。EU主導でBATの基準を見定め、それを各加盟国が具体的な数値基準として設定し、各事業者に設定された基準をクリアするよう求める。規制対象物質も、従来の二酸化炭素を含む大気汚染物質から、排水と廃棄物排出も加える。

 同EU指令案では、規制対象事業者の拡大も盛り込んだ。まず、バッテリー生産と、原料となる金属・レアースの採掘・加工。カーボンニュートラルとデジタルトランスフォーメーション(DX)の双方により、バッテリー需要が今後急増することを見据え、対象に加える。

 拡大されたもう一つのセクターが、150家畜単位(LSU)以上の集約型畜産農場。大規模な牛、豚、鶏の飼育場が徐々に対象となる。集約型畜産農場は、EUの商業農場の約13%を占める。畜産からのアンモニア排出の60%、メタン排出の43%を占めており、今回規制強化に乗り出す。

 対象事業者は、EUの2050年汚染ゼロ目標や、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの政策目標を達成するため、事業所の改善計画を2030年または2034年までに策定することが義務付けられる。一方、EUとしては、イノベーションセンターとして産業転換・排出権イノベーション・センター(INCITE)」を設立する。

 欧州委員会によると、IEDの成果もあり、対象事業者の汚染物質の大気への排出は、物質により40%から75%削減。水系への重金属排出も最大50%減少したという。しかし、依然として、二酸化炭素排出量の約40%、SOx、重金属等の有害物質の大気排出量の50%以上、NOx及びPMの大気排出量の約30%を占めているという。

 また欧州委員会は同日、2050年までの気候中立を目指す欧州グリーン・ディールの一環として、冷蔵庫、エアコン等に使用されるフッ素化ガス(Fガス)と、オゾン層破壊物質(ODS)の規制強化に向けた2つのEU規則改正案も発表した。

 まず、2015年に施行したFガス規則を改正。Fガスでは、すでに国際的にモントリオール議定書キガリ改正が国家義務を課しているが、従来EUとして特定の免除措置を設けてきたFガス制度を廃止し、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の段階的削減ルールを、モントリオール議定書キガリ改正に完全に一致させる。

 まず、Fガスの約90%を占めるハイドロフルオロカーボン(HFC)の総量を、2030年までに2015年比で79%まで段階的削減するルールを導入する。削減速度は、代替物質の存在有無により変わり、例えば、SF6は、2031年までに送電用のすべての新しい機器(スイッチギア)で段階的に廃止される予定。Fガスは、EUの温室効果ガス(GHG)排出量の2.5%を占めており、2050年までにHFCが気候に与える洗剤影響を97.6%削減する考え。

 加えて、Fガスに関し、事前登録された生産者及び輸入業者による割当分のみの販売を認める制度も導入する。これにより、税関や監視当局による輸出入管理を厳格化。一部のFガス使用機器の使用も禁止する。さらに、ガス漏れ検査、記録保管、廃棄方法等、取引規制の執行を強化するため、認証制度やラベル義務も改定する。

 もう一つが、ODS規則の改正。ODSは、EUではすでに一部を除いて生産、販売、使用が禁止されているが、すでに販売済みのODS関連製品の規制を強化。特に、建物の改築・解体に関し、ODSを含む断熱材等の回収・処分義務を課す。

 IED、Fガス規則、ODS規則の改正は、今後、EU理事会と欧州議会との調整に入る。IEDは、制定後18ヶ月内に国内法化が義務付けられる。その後、欧州委員会がBATを採択すると、工場では4年、畜産農場は3年の遵守期間後に達成が義務化される。

【参照ページ】Green Deal: Modernising EU industrial emissions rules to steer large industry in long-term green transition
【参照ページ】Green Deal: Phasing down fluorinated greenhouse gases and ozone depleting substances

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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