地球環境戦略研究機関(IGES)は5月30日、国際資本市場協会の「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」を活用し、経済産業省が発表した「トランジション・ファイナンスに関する電力、ガス、石油分野における技術ロードマップ」の政策課題を分析したレポートを発行した。ICMAハンドブックには準拠していないとの見解を伝えた。
【参考】【国際】ICMA、気候変動移行を資金使途のESG債に追加要件設定。発行体全体の戦略や目標等(2020年12月11日)
【参考】【日本】経産省、電力・ガス・石油分野のトランジション・ファイナンス技術ロードマップ公表(2022年2月18日)
同レポートは、ICMAハンドブックでは、1.5℃目標との整合性が要件となっているのに対し、経済産業省のロードマップは、1.5℃目標との整合性がないと指摘した。また、1.5℃目標では、2030年までの具体的な排出削減につながる分野にも重点が置かれているが、経済産業省のロードマップは、 2030年以降の導入が見込まれる技術が中心となっていると課題を突いた。
次に、ICMAハンドブックが掲げる要素「科学的根拠のあるトランジション戦略」と「実施の透明性」の観点からは、技術面に関する知見が限られている⾦融機関等でも、技術オプションやロードマップについての客観的な評価が可能となり、トランジションファイナンスの妥当性を判断できるような情報を提示することが求められている。これに対し、経済産業省のロードマップは、技術オプションとその開発・導入に関するタイミングが記載されているだけで、技術オプションの導入のハードルやロードマップが成り立つための前提条件についての説明が欠けていると批判した。
また、経済産業省のロードマップが前提としているカーボンクレジットの活用に関しても、ICMAハンドブックに基づくと、クレジット購入による排出削減が、当該企業の中核的な事業活動の転換にどのように結び付くのかについての説明が必須となると指摘した。
日本の気候変動シンクタンクClimate Integrateも6月30日、日本政府が進めるアンモニア活用の課題を指摘するレポートを発行。石炭火力発電にアンモニアを混焼する政策を進めているのは、日本だけであり、アンモニア混焼型の石炭火力発電は発電単価が大幅に上昇することから経済性がないとの見解を伝えた。そのため、混焼のためにアンモニアの技術やインフラに膨大に投資することは、資金の有効活用にはならないと糾弾した。
【参照ページ】日本における電力分野の早期の脱炭素化に向けたトランジション・ファイナンスの政策的課題
【参照ページ】レポート更新版(2022.6)「アンモニア利用への壮大な計画ー 迷走する日本の脱炭素 ー」
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら