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【EU】欧州委、「グリーンディール産業計画」発表。投資拡大で新たな政策確立へ

 欧州委員会は2月1日、「グリーンディール産業計画」を発表した。欧州のカーボンニュートラル関連産業の国際的な競争力を強化しにいく。「グリーンディール産業計画」は、ウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で構想を披露し、今回ついに公式発表となった。

 グリーンディール産業計画は、2022年12月にEU理事会が欧州委員会に対し、カーボンニュートラルでの国際競争力強化に向け必要な投資が迅速に行われるような計画策定を1月31日までに行うよう要請し、欧州委員会としてこれに応えたもの。

 今回の欧州委員会は、多くのカーボンニュートラル関連産業を中国が独占していることを懸念。さらに、米国のインフレ抑制法(IRA)が2032年までに3,600億米ドル(約46兆円)以上の資金動員が見通されることや、日本がグリーントランジション計画で20兆円の資金を動員することにも触れられている。特に欧州委員会は、投資が米国に向かっていることに危機感を示し、EU域内への投資を維持、さらに拡大することを狙っているとも言われている。

 欧州委員会は今回、グリーンディール産業計画は、欧州グリーンディールやREPowerEUの下で行われている施策を補完するものと説明。4つの柱として、予測可能で簡素化された規制環境、資金調達へのアクセスの迅速化、スキル向上、レジリエントなサプライチェーンのための自由貿易を掲げた。

 予測可能で簡素化された規制環境では、迅速に当局が対応できる規制枠組を整えるため「ネットゼロ産業法」を策定する方針を盛り込んだ。EU域内での大規模な技術のスケールアップを支援するための基準策定を行う。すでに策定されている「重要原材料法」や電力市場改革とも足並みを揃える。

 資金調達の迅速化では、欧州におけるクリーンテクノロジーの生産への投資と資金調達を加速。公的資金を呼び水に、民間資金を動員するブレンデッドファイナンス考え方を軸にする。また、競争政策では、EUの各加盟国は個別の産業補助金を出すことが禁止されているが、グリーンディールに関しては、各加盟国が関連補助金を出せるよう、一般的ブロック免除規則を改正し規制緩和しにいく。またEU予算の動員拡大のため、既存のREPowerEU、InvestEU、Innovation Fund
に加え、2023年までに「欧州主権基金」の創設構想も固める。

 スキル向上では、今後のグリーントランスフォーメーション(GX)で、全雇用の35%から40%が影響を受ける可能性があると見立て、高賃金で質の高い仕事に必要なスキル開発を加速。戦略的産業におけるスキル向上とリスキル・プログラムを展開するための「ネットゼロ産業アカデミー」の創設を掲げた。また「スキル・ファースト」アプローチを打ち出し、資格制度の改革も行う。優先度の高いセクターへの外国人人材の呼び込みも強化する。

 レジリエントなサプライチェーンのための自由貿易では、EUの自由貿易協定(FTA)のネットワークや、グリーンな移行を支援するためのパートナー国との協力の発展を継続。特に原材料の確保に重点を置き、原材料の「消費者」と資源保有国を結びつける「重要原材料クラブ」や、「クリーンテック/ネットゼロ産業パートナーシップ」の創設も検討するとした。

 同計画に関しては、すでに複数の加盟国から、新たにEUとして債券発行等での資金調達を行うことには反対の声も出ている。そのため今回の発表では、すでに調達した資金を有効活用することを優先することを強調しながらも、さらにEUとしての財源を確保していきたい思惑も滲ませた。加盟国との調整は、2月9日から10日に行われる欧州理事会での協議が一つの山場となる。

【参照ページ】The Green Deal Industrial Plan: putting Europe's net-zero industry in the lead
【参照ページ】Special Address by President von der Leyen at the World Economic Forum
【参照ページ】European Council, 15 December 2022

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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