国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)は12月13日、当初の会期を1日延長し、グローバル・ストックテイクに関する決議を採択し、閉幕した。
同決議では、前文で、気候変動は「人類共通の関心事」であり、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の「締約国は、人権、清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利、健康に対する権利、先住民、地域社会、移住者、子ども、障害者、脆弱な状況にある人々の権利、開発に対する権利、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、世代間衡平性に関するそれぞれの義務を尊重し、促進し、考慮すべきであることを認識する」と言及。気候変動問題が多岐に渡る課題であることを再確認した。
さらに気候変動が、食料安全保障や水系と水関連生態系の保護、保全、再生、森林、海洋、山岳、雪氷圏を含むすべての生態系とも関係しており、気候変動と生物多様性喪失が相互にリンクする世界的な危機に包括的かつ相乗的な方法で対処していく緊急の必要性があるとも述べた。
本文の中では、気温上昇を1.5℃に抑え、オーバーシュートも極限まで抑える場合、世界の二酸化炭素排出量は遅くとも2025年までにピークアウトさせる必要があることを確認。また世界全体のピークアウトのためには、特に発展途上国の状況を踏まえ国情に沿ったものとなることも確認し、先進国が率先して早くピークアウトさせる必要があると示唆した。その上で先進国は発展途上国の資金及び技術の面で支援できるとした。それを踏まえ、二酸化炭素排出量を2035年までに2019年比で60%削減することについても合意した。
この目標を達成するためのアクションとして8つの項目を列挙した。
- 2030年までに、再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にし、エネルギー効率の改善率を世界平均で年率2倍にする
- 削減努力のない(Unabated)石炭火力発電の段階的廃止に向けた努力の加速させる
- 今世紀半ばよりかなり前、あるいは半ば頃までに、ゼロカーボン燃料や低炭素燃料を活用したネットゼロ・エミッションのエネルギー・システムに向けた取り組みを世界的に加速させる
- 公正で秩序ある公平な方法でエネルギーシステムで化石燃料からの脱却を図り、この重要な10年間に行動を加速させ、科学に則り2050年までにネットゼロを達成する
- とりわけ、再生可能エネルギー、原子力、炭素回収・利用・貯留(CCUS)等の排出削減・除去技術、特に排ガスの排出が困難なセクターにおける排出削減・除去 技術、低炭素水素製造等を含む、ゼロエミッションおよび低排ガス技術を加速させる
- 2030年までに、特にメタン排出を含め、二酸化炭素以外の排出を世界的に加速的に大幅に削減する
- インフラ整備やゼロエミッション車(ZEV)・低排出車の迅速な導入等、様々な経路で道路交通からの排出削減を加速させる
- エネルギー貧困や公正な移行に対処しない非効率な化石燃料補助金をできる限り早く廃止する
この中で、「エネルギーシステムで化石燃料からの脱却」の文言が入ったことは大きな注目を集めた。当初、国連側は、段階的廃止を案として盛り込んでいたが、COP28議長国のアラブ首長国連邦(UAE)等が「段階的廃止」を固く拒否。「段階的削減」案も出たが、こちらは米国やEUが反発。最終的に「化石燃料からの脱却(Transitioning away from fossil fuel」)」という表現で妥結した。
これに関し、サイモン・スティール国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長は、閉会スピーチで、「ドバイで化石燃料の時代に終止符を打つことはできなかったが、この結果は『終わりの始まり』だ。今、すべての政府と企業は、これらの誓約を遅滞なく現実の経済的成果に変える必要がある」と締めくくった。
またアントニオ・グテーレス国連事務総長は、スピーチの中で、「COP28の文書で化石燃料の段階的廃止について明確に言及することに反対した人々に対して、私は、彼らが好むと好まざるとにかかわらず、化石燃料の段階的廃止は避けられないと言いたい。手遅れにならないことを祈りましょう」と述べた。
気候変動適応については、会期中にアフリカ各国が結成した「アフリカ交渉グループ」が、適応での資金支援の拡充が必要と記者会見で強調する一幕があった。決議の本文では、発展途上国が国家適応計画(NAP)の実施で資金アクセスに重大な課題が発生することを認識し、2030年までに毎年2,150億米ドルから3,870億米ドルの資金動員が必要なことを確認。さらに発展途上国での気候変動緩和でも2030年までに5.8兆米ドルから5.9兆米ドルの資金ギャップが存在していることも確認した。そのため、新規の追加的な無償資金、譲許的資金、非債務手段を拡大することが引き続き重要となると明言し、また民間投資を拡大するために法規制環境を整備していく必要があるとした。
ロス&ダメージ(損失と損害)については、「気候変動がすでに損失や損害を引き起こしており、今後もますます引き起こしていくであろう」と認識。専門家グループ、技術専門家グループ、タスクフォース、サンティアゴ・ネットワークを含む「ワルシャワ国際メカニズム」の下で、気候変動の影響に伴うロス&ダメージを回避し、最小化し、対処するための緊急かつ強化された行動と支援で協力していくこととした。
UNFCCC事務局は、今回採択されたグローバル・ストックテイク決議は、COP28の中心的な成果であり、交渉中のあらゆる要素が含まれているとコメント。2025年までに各国が国別削減目標(NDC)をアップデートする上で利用できると強調した。
2024年のCOP29はアゼルバイジャンで11月11日から22日まで、2025年のCOP30はブラジルで11月10日から11月21日まで開催することでも合意した。UNFCCCは、COP29で各国政府は、気候変動問題の規模と緊急性を反映した新たな気候資金目標を設定する必要があり、COP30では、経済全体をカバーし、すべての温室効果ガスをカバーし、1.5℃の気温制限に完全に合致した、新たな国別削減目標(NDC)を固めていく必要があるとした。
【参照ページ】COP28 Agreement Signals “Beginning of the End” of the Fossil Fuel Era
【参照ページ】Nations at COP28 in Dubai approved earlier on Wednesday a roadmap for “transitioning away from fossil fuels” – a first for a UN climate conference – but the deal still stopped short of a long-demanded call for a “phaseout” of oil, coal and gas.
【画像】UNFCCC
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