
国際グリーンボンド基準策定NGO気候債券イニシアチブ(CBI)は3月26日、サステナビリティ・リンクボンド(SLB)の市場動向に関する初の報告書を発行した。シンガポール証券取引所(SGX)グループが作成資金を拠出した。
サステナビリティ・リンクボンド(SLB)は2018年に初めて発行されて以降、2021年に発行額が大きく増加。同時にその頃から、設定しているSPTの質に関する議論も噴出し、課題が認識されるようにもなった。一方、CBIは、適切なSPTが設定されれば、グリーントランジションにおいて重要な役割を果たすことができるとみている。
発行額の国別上位は、イタリアが495億米ドルで最大。そのうち63%をエネル1社が占める。次いで、フランスが287億米ドル、ドイツが230億米ドル、中国が217億米ドルの順。発行数と発行体数では中国が首位。
市場動向では、サステナビリティ・リンクボンド型国債をチリとウルグアイが2022年に発行済み。また発行体種別では、非金融法人が84%を占めている。SPTの設定数は、1つのKPIが最多で、発行数の59%、発行額の54%を占めた。SPT達成の条件変更では、金利ステップアップが発行数の58%、発行額の77%と大半を占めた。ステップアップの平均額は24.8bps。
CBIは2023年6月、サステナビリティ・リンクボンド(SLB)の市場データベース構築に関し、適切性を判断するメソドロジーを公表。同メソドロジーを基準にしたところ、高い整合性が確認されたのは、過去累計で発行数の14%、発行額の17%にとどまることがわかった。2023年単年でも整合していたのは発行数の33%のみだった。
サステナビリティ・リンクボンド(SLB)の発行と、企業の環境情報開示の質には強い正の相関関係も確認された。移行計画(トランジションプラン)の策定では、上位50社の平均は35ポイント中17.4ポイント(金額加重平均では17.9ポイント)だったが、偏差は大きい。
設定されたSPTの達成進捗状況では、発行数ベースでみると、すでに目標を達成しているのが20%弱、達成ペースなのが30%弱ある一方、達成ペースでないところが50%弱ある状況。例えば、発行額最大のエネルは4月29日に、SPTを達成できず、25bpのステップアップを引き起こしている。同社は、2024年に目標期限を迎えるSLBを5本、2026年に1本抱えている。未達のSPTはスコープ1の排出量削減。
(出所)CBI
SLBの目標未達で、必ずしも市場から悪者の烙印を押されているわけではない。未達のリスクがあるほど、野心的な目標を掲げていた証拠となったという見方や、未達ながらも変化の度合いに着目し、個別に発行体の本気度を評価するという動きもある。
CBIは今回、科学的根拠に基づく排出量削減目標を、できればスコープ3まで含めた形で総量目標でSPTに盛り込むことを提言。またESG評価機関のESGスコアを使わず、具体的なKPIを設定することを提言した。スコープ3での目標に関しては、短期的にはバリューチェーンでのエンゲージメント目標を、中期では削減量そのものを目標に用いることを提唱した。
【参照ページ】86% of SLBs not aligned with climate best practice, but credibility and ambition are improving.
【参照ページ】SUSTAINABILITYLINKED BONDS: Building a HighQuality Market
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