
欧州委員会は6月7日、農業分野への少額補助に関する規則(農業デミニマス規則)の改正案を発表し、パブリックコメントの募集を開始した。締切は7月21日。資材の高騰で農家が打撃を受ける中、EU加盟国が独自の国内支援策を打ち出しやすくする。
EUでは、EU機能条約第108条3項で、EU加盟国に対し、国内補助金制度を実施する前にを欧州委員会に通知し、欧州委員会の承認を受けることを義務付けている。一方、欧州委員会は、EU国家補助実施規則により、EU単一市場と両立すると判断される一部の補助金制度については、事前承認制度を免除できる権限を持つ。
農業デミニミス規則は、少額の援助は単一市場における競争と貿易に影響を与えないとみなされるため、国家補助規制の対象外とするルール。2027年12月31日までの時限立法のため、継続するためには法改正が必要となっている。
現状では、同規則が2019年に改正された後、受益者1人当たり3年度で2万ユーロまでの支援が自由にできる。EU加盟国が国レベルの中央登録機関を設けてデミニマス補助を登録する場合は、より高い上限が適用され、3年度で2万5,000ユーロの補助が可能。
今回の改正では、補助上限を3万7,000ユーロまで引き上げる。同時に、農業生産額に基づいて計算される「国別上限」も改訂する。現行の規則では、この計算のために2012年から2017年の基準期間を考慮しているが、2012年から2023年までに拡大。特に過去数年間の農業生産額の増加を考慮することができるため、すべてのEU加盟国で国別上限額が増加することになる。期間算定も、他のデミニマス規則に合わせ、年度から年に修正される。さらに、中央登録機関を設けることを義務化することで、全ての国で農家補助金の上限が最大化されるとともに、農家(主に零細・中小企業)の報告義務を軽減する
透明性を高め、現在自己申告制を採用している農家が遵守状況を自己監視する必要がなくなるため、事務負担を軽減するため、国または欧州レベルでのデミニマス援助の中央登録の義務化を導入する(現在、このような中央登録は加盟国の任意となっている)。
欧州委員会が法改正前にパブリックコメントを積極的に行うことは異例。EUでは農家によるストライキやデモが昨年秋から発生しており、農家を懐柔する動きに出ている。
【参照ページ】Commission seeks feedback on draft targeted amendments to rules on small amounts of State aid to the agricultural sector
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