
中国アパレルEコマース大手SHEIN(希音)は8月、サプライチェーンの中で児童労働事案が2件発生したことを明らかにした。同社の2023年度のサステナビリティ報告書の中で明記した。
今回の発覚は、同社が自主的に実施しているSHEIN責任調達(SRS)監査の中で、2023年第1四半期から第3四半期にかけ検知された。同社は人権方針を策定しており、その中で強制労働と児童労働への関与を禁止している。
同社によると、児童労働関与が確認された2社に対しては、製造委託を停止し、調査を実施。また同社のSRS方針では、違反したサプライヤーには30日間の猶予が与えられ、2件とも適切な是正措置により解決したという。具体的な是正措置には、未成年従業員との契約停止、未払賃金の支払い、必要に応じて親または法定後見人に対し、健康診断の手配と本国への送還促進に関する対応の報告を行った。同社はまた、委託先に対し、新規採用者に対し、身分証明書の確認と記録の管理等、児童労働に関与しない選考プロセスの強化も徹底させたと報告。これらの措置により、違反した委託先も契約履行がすでに再開している。
同社は同報告書の中で、第4四半期に関しては児童労働の報告はゼロ。また強制労働については年間を通じて検知されなかったという。SRS監査では、新規サプライヤーに対し、監査実施を義務化しており、最も低い水準だった場合は取引を禁止。既存サプライヤーに対しては、取引金額と過去のSRS監査結果の観点からリスク評価をした上で、優先度の高いサプライヤーに毎年オンサイトでのSRS監査実施を義務化している。SRS監査を拒んだサプライヤーは取引が中止。また監査は、事前の通知なしに抜きうちでオンサイト監査を行っているという。
2023年には、中国でのオンサイトSRS監査を2,796社に対し、3,990回実施。そのうち92%の監査は第三者機関によって実施された。2023年の監査機関は、ビューローベリタス、インターテック、オープンビュー、SGS、テュフ ラインランド、QIMAで、いずれもAPSCA(専門社会コンプライアンス監査協会)の加盟機関。監査対象2,796社は、同社で販売されているブランド企業の取引額の95%をカバーしている。残りは、繊維サプライヤー、包装材サプライヤー、二次委託先等への監査となっている。2023年にはブラジルで218回の第三者SRS監査を実施。2024年にはトルコにも拡大予定。
同社は現在、SRS監査のグレード別結果も公表しており、最優良のAが9%。Bが20%、Cが51%、Dが18%、Eが2%と続く。AとBの合計は前年の18%から29%に増加。DとEの合計は前年の35%から20%へと減少した。SRS方針により取引停止となった社数は5社。内訳は、暴力行為による是正なしが3社、SRS監査拒否が1社、二年連続でE評価が1社。労働慣行や環境基準による違反検知割合も公表しており、検知された内容に対しては全て是正措置が採られたという。
同社は近年、ESG評価の向上に躍起になっているが、背景には、同社に対する人権や労働慣行についての懸念が各国で表明されているという状況がある。同社は現在、米国の証券取引所での上場を目指しているが、いずれも審査プロセスで先に進めていない模様。最近ではロンドン証券取引所にも上場申請しているが、こちらも順調にいくかはわからない。
英公共放送チャンネル4は2022年10月、SHEINのサプライヤーが長時間労働や賃金未払に関与していると報道し、社会の関心を集めた。そのため同社は2022年12月、サプライヤー監査に1,500万米ドル(約20億円)を投ずると発表。対策を強化する姿勢をみせた。それ以降も、同社に対しては、NGOが状況を注視しており、スイスNGOパブリック・アイが2024年5月に再び調査結果を発表し、サプライヤーでは週75時間労働が常態化しており、劣悪労働環境が続いていると公表。同社の発表との矛盾を突いている。
同社は2022年に本社を中国からシンガポールに移転。親会社Roadget Businessも2019年にシンガポールで設立されている。
【参照ページ】2023 Sustainability and Social Impact Report
【参照ページ】Inside the SHEIN Machine: Untold
【参照ページ】Follow-up investigation in China refutes Shein’s promise of improvement
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