
世界保健機関(WHO)は9月4日、気候変動による教育への影響について分析した報告書を発表した。気候変動が中低所得国の教育に及ぼす悪影響を検証し、解決策を提示した。
同報告書によると、2022年以降、4億人以上の生徒が気候変動での学校閉鎖の影響を受けている。気候変動が低所得国の教育に最も影響を与えており、高所得国では気候変動による休校が年間2.4日だが、低所得国では年間18日だった。2024年時点の10歳児は、1970年の10歳児と比較して生涯で3倍の洪水、5倍の旱魃、36倍の熱波を経験している。
学校に通学できたとしても、異常気象が学習へ与える影響は大きい。ブラジルの最貧困層の50%の生徒は、高温により最大半年分の学習機会を失う可能性がある。オーストラリアでは、最高気温が15.6℃を下回る寒い日が10日増えると、テストの成績が標準偏差の1.2%下がっており、この減少分は通常の1年間の学習の4%に相当する。
世界の教育は、気候変動の影響を受けるだけではなく、気候変動に関する資金調達においても見落とされがちだという。気候変動資金のうち、教育に投資されるのは全体の1.5%しかない。しかし、子供1人当たり18.51米ドルの投資で、教室の温度改善、レジリエンスなインフラの構築、教師への研修等、気候変動への適応策を講じることができるとした。
若者の気候変動に対する考えと必要な知識やスキルの欠如に関する分析も実施。アンゴラ、バングラデシュ、中国、コロンビア、インド、カザフスタン、セネガル、タンザニアの8カ国の低中所得国では、若者の約65%が気候変動に関するスキルを身につけなければ自身の将来が危ういと考えている。しかし、60%は学校で気候変動について十分に学ばなかったと感じている。
1年間の教育で気候変動に対する意識が8.6%向上することが、96カ国のデータから判明している。教育水準が高い国ほど災害への備えや対応力が高くなるため、災害による悪影響が軽減され、かつ災害からの回復も早い。教育は、中低所得国における気候変動への行動変容のために重要であり、情報やスキル、知識への格差を克服する重要な手段だと訴えた。
また、多くの中低所得国ではグリーンスキルの需要が供給を上回っているため、中低所得国では、幅広い業界とスキルレベルで、グリーンスキルが求められていると報告。例えば、フィリピンではグリーンジョブの31% が中程度の技能職。しかし、8カ国の中低所得国の若者の約73%が科学、技術、工学及び数学(STEM)のスキルがなければグリーンで仕事につけないと誤解している。
各国政府に対し、より持続可能な世界の移行を後押しするために、高等教育におけるグリーンスキルとイノベーションの優先の必要性を訴えた。
【参照ページ】More than 400 Million Students Affected by Climate-Related School Closures since 2022
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