
英エネルギーデータ大手ブルームバーグNEF(BNEF)は9月24日、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)で設定された、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を3倍にするという目標の達成に向けた進捗状況を分析した報告書を発表した。
同報告書は、COP28で設定された2030年までに再生可能エネルギー設備容量を3倍の約11TWにするという目標の達成に向けた進捗状況と、各地域や必要な政策に関して分析したもの。2023年に再生可能エネルギーへの投資額は、過去最高の6,230億米ドル(約89兆円)となった。
2024年上半期には、3,120億米ドルが再生可能エネルギーに投資される予測であり、このうち 2,210億米ドルは大規模及び小規模な太陽光発電プロジェクトに、910億米ドルは風力発電に投資された。
しかし、現在の投資水準では2030年までに導入される再生可能エネルギーの設備容量は8.2TWまでしか増加せず、COP28で設定した11TWの目標に対して大幅に不足すると指摘。同時に、BNEFの2050年ネットゼロシナリオにおいて、再生可能エネルギーの設備容量は11.6TW必要だと試算しており、投資規模を現状から大幅に引き上げる必要性を訴えた。
(出所)BNEF
目標達成に向けて、2024年から2030年までの期間に年間平均1兆米ドルまで引き上げる必要がある。さらに、同期間において電力貯蔵に年間平均1,930億米ドル、送電網に年間平均6,070億米ドルの追加投資が必要と分析した。
(出所)BNEF
太陽光発電は非常に安価であり、政府支援なしで拡大を続けていると報告。しかし、太陽光発電は設備利用率が低く、冬季には電力供給が大きく不足する可能性がある。目標達成に向けて、太陽光発電以外の風力発電、蓄電、送電網等の投資が遅れている分野を政府が支援するべきとした。
地域別の分析では、中国、欧州、インド、米国、日本、サブサハラ・アフリカ、中東・北アフリカ・トルコ、インドネシアについて実施。中国は、2024年上半期に再生可能エネルギーへの投資額が1,300億米ドルとなり、世界最大の市場となった。加えて、ブラジルでも投資が加速しており、目標達成の軌道に乗っているとした。
欧州、米国、インドは、エネルギー転換に対する強力な政策支援を行っているが、より取り組みを強化する必要があるとした。日本、サブサハラ・アフリカ、中東・北アフリカ・トルコ、インドネシアでは、再生可能エネルギーの導入と投資の必要量が大きく遅れていると指摘した。
日本の2023年の再生可能エネルギー新規設備容量は5.8GW。前年比5%増だったが、日本のネットゼロシナリオの軌跡を大幅に下回るペースと警鐘を鳴らした。日本は2030年までに300GWの設備容量が必要であり、このうち221GWが太陽光発電となり、日本最大の電力供給源となる見込み。洋上風力発電も2023年末の156MWから、13GWにまで拡大する必要がある。
これを実現するには、2023年の再生可能エネルギーへの投資水準から3倍以上が必要。しかし、投資額は年々減少を続けており、太陽光発電への投資額は2014年の350億米ドルから、2020年には105億米ドル、2023年には過去10年で最も低い62億米ドルまで落ち込んでいる。
(出所)BNEF
太陽光発電への投資額の減少は、政府による投資額の縮小の影響が大きいとした。日本の多くの土地は山岳地帯であり、太陽光発電パネルを設置するコストを押し上げている。補助金を増加することで解決するはずとした。また、明確な所有者が不明な土地は日本の総面積の10%に当たる410万haと推定され、これらの活用を促す新たな法律の整備が進んでいないことにも言及した。
風力発電では、長く複雑な許認可プロセスと地域住民への説明プロセスが、風力発電の設備容量の増加を難しくしていると指摘。洋上風力発電の投資も大幅に増やす必要があるが、2030年よりも前に稼働する可能性は低いとした。
日本政府が掲げる目標もBNEFのネットゼロシナリオよりも低く、原子力発電の再稼働への動きも再生可能エネルギーへの投資を鈍らせているとした。
【参照ページ】Renewables Off Pace for Global Tripling, but the Goal Is Still Within Reach
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