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【EU】欧州委、持続可能な農業への転換強化で農家支援策拡充へ。売手交渉力向上や資金支援

 欧州委員会は12月10日、新たなEU共通農業政策を採択した。「農産物共通市場メカニズム(CMO)」を定めた現行の法的枠組みの改正と、国境を越えた不公正取引慣行の執行に関する新たな規則を制定しにいく。

 EU域内では、2023年後半からEUの政策に対する農家の反発が激化。2024年3月には、従来の政策和組を維持しつつ、農家の状況を踏まえた進め方をしていく形に農業政策の仕切り直しを発表している。

【参考】【EU】欧州委、農家オンライン調査開始。行政負担炙り出し。持続可能な農業促進の障壁撤廃へ(2024年3月10日)

 今回の発表は、フォン・デア・ライエン第2次政権にとっての農業政策発表第1弾となる。今年実施した農家アンケート調査の内容も踏まえつつ、農家の立場を強化し、農産物サプライチェーンの関係者間の信頼を回復することを目的に据えた。

 農産物共通市場メカニズムの改正では、まず、農家とバイヤー間の契約に関する規定の強化、書面による契約の義務化、市場の動向やコストおよび経済状況の変動を考慮した長期契約の方法の改善を実施。農家とバイヤー間の調停メカニズムの確立も義務化する。これにより、バイヤーに対する農家の交渉力を高める。

 さらに、農家団体や連合体の交渉力の強化、加盟国による共通農業政策の分野別介入に基づく農家団体への財政支援の拡大、法的承認に関する規定の簡素化による農家団体及び連合体の強化も位置づけ、農業団体の交渉力も高める。危機対応のための民間主導の農家組織に対しEUが財政支援することも可能にする。

 加えて、農産物のマーケティング時に、サプライヤーが「公正」「公平」「短縮されたサプライチェーン(地産地消)」等の表現を行う際の定義を明確化。また、世代交代の支援、小規模農場の事業継続の維持、農家及び農場労働者の労働条件の改善等、社会サステナビリティ観点でのイニシアチブについて、農家及び他女ステークホルダーが合意できる範囲も拡大する。

 国境を越えた不公正取引慣行の執行強化では、不公正な取引慣行(UTP)指令を改正し、各加盟国国の執行当局間の協力関係を強化する。

 また欧州委員会は同日、農業分野への少額補助に関する規則(農業デミニマス規則)に基づくルールも改正した。欧州委員会への通知や承認を不要とし、EU加盟国政府が簡潔かつ迅速に、直接かつ効率的に農家を支援できるようにした。6月に発表していて原案から上限額を大きく引き上げた。

【参考】【EU】欧州委、加盟国の独自農家補助金上限を3年で3.7万ユーロに引上げへ。農家支援(2024年6月18日)

 現行の農業デミニマム規制では、EU加盟国は農業セクターに対し、欧州委員会の承認を得るための事前通知なしに、3年度にわたり、受益者1人当たり2万ユーロ(加盟国がミニマム援助を登録する中央登録機関を有する場合は2万5,000ユーロ)を上限とする補助金支給が可能となっている。また、別途、受益者ごとの上限額に加え、補助金プログラム毎の国別上限額も規定されている。

 今回の改正では、3年度の1社あたりの上限額を25,000ユーロから50,000ユーロに引き上げる。国別上限額も、各国の農業生産高の1.5%から2%に修正。基準期間は2012年から2017年の区間から、2012年から2023年の区間に延長される。これにより、特にここ数年の農業生産額の増加を反映できるようになった。及び、加盟国が同一製品部門に対して国内上限額の50%を超えるデミニマム補助を支給することを禁じていた「セクター別上限」に関しては撤廃した。

 EU加盟国における国レベルもしくは欧州レベルでのデミニマム補助の中央登録制度構築も、現在の任意から必須に変更。これにより、現在自己申告制を採用している加盟国の農家も、遵守状況を自己申告する必要がなくなるため、事務負担を軽減できる。

 改正農業デミニマム規制の適用期限も、2032年12月31日までに延長された。

 他にも、欧州投資銀行(EIB)は同日、欧州農林水産業向け融資としては最大規模となる今後3年間で30億ユーロの融資パッケージと、農業保険の拡充を発表した。土壌の健全性、デジタルツール、水管理、気候変動レジリエンス等、持続可能な農業の実践を支援。研修や、若い農家や新規就農者による土地購入にも充てられる。

 同融資制度では、有利な融資条件を確保するため、EU予算及び国家予算による金利補助や資本助成も受けられる。これらも含め、他の金融機関により同額が融資され、農林水産業及びバイオエコノミー分野に約84億ユーロの資金を動員する。

 農業保険では、気候変動適応に向けた投資を促進するための汎欧州的な措置や、気候変動による災害の影響を受ける企業に対する流動性や信用リスクの補償を強化するための措置を検討する。

 今後、欧州委員会では、発足後100日以内に「農業・食料ビジョン」を発表する予定。それに向けて、EU加盟国閣僚級のEU理事会も12月9日、政策文書を採択し、2027年以降の共通農業政策の在り方について要望を示している。内容は大筋、今回欧州委員会が示した方向性と一致している。

【参照ページ】Commission proposes new measures to strengthen farmers' position in the agri-food supply chain and enhance cross-border enforcement against unfair trading practices 【参照ページ】Commission amends rules on small amounts of State aid to the agricultural sector 【参照ページ】Joint press release between the European Commission and the EIB Group on €3 billion of EIB Group financing for farmers and bioeconomy 【参照ページ】A competitive EU farming sector based on a farmer-focused common agricultural policy: Council approves conclusions

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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