
旭化成は4月23日、オランダNobian Industrial Chemicals、フルヤ金属、英Mastermeltと共同で、クロールアルカリ製造プロセスにおける食塩電解用のセル及び内部に組み込まれる電極に使用される金属のリサイクルで、実証を開始したと発表した。
クロールアルカリ製造プロセスとは、食塩水を電気分解し、塩素と苛性ソーダを製造するプロセスのこと。クロールアルカリの2024年の世界需要は約1億t。有機物、無機物、医薬品、石鹸・洗剤等の多くの最終用途に使用されている。クロールアルカリ製造プロセスでは、従来の水銀法や、アスベストを使用する隔膜法と異なり、有害物質を使用せず、消費エネルギーを抑えたイオン交換膜法が主流となっている。
イオン交換膜法の食塩電解用のセル・電極には、イリジウム、ルテニウム等のプラチナ族金属(PGM)が使用されている。だが、これらの貴金属の産出量には限りがあり、電池・電子部品の需要拡大や、水素製造技術の1つである固体高分子(PEM)型電解装置等の特定分野での高耐久部材や触媒用途への期待の高まりにより、需要が年々増加傾向にある。価格上昇や調達難のリスクが高まっているため、貴金属の安定確保と効率的な資源利用は中長期的な重要課題だった。
そこで、旭化成とNobianは協働し、2023年12月から欧州で、セルのレンタルサービスの実証を開始。セルの予備品をユーザーが所有する必要性がなくなるため、使用する貴金属量の削減が可能となる。
さらに、今回の貴金属リサイクルでは、まず、旭化成がNobianから耐用年数を迎えた電極を回収。次に、Mastermeltとフルヤ金属が、電極からの触媒剥離と次工程に向けた剥離物の加工、及び加工後の剥離物からの貴金属抽出・高純度化を行う。旭化成がその貴金属を原材料とした触媒を塗布したリサイクル電極を製造し、Nobianが食塩電解を実施する。
(出所)旭化成
同社は今後、今回の施策をエンドユーザーや、サプライヤー間だけでなく、クロールアルカリ業界全体へと拡げ、セル・電極の安定供給を通じたエコシステム構築を目指す。将来的には、同エコシステムにトレーサビリティを付与することで循環性と透明性を高め、リサイクルした貴金属を含む金属を活用したセル・電極の導入を進める。また、グリーン水素製造用の水電解分野への応用・展開も視野に入れている。
【参照ページ】旭化成・Nobian・フルヤ金属・Mastermelt、4社共同で食塩電解用セル・電極の金属リサイクルに関する実証開始
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