
国連のアントニオ・グテーレス事務総長と国連気候変動枠組条約第30回ベレン締約国会議(COP30)議長国ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は9月24日、米ニューヨークの国連本部で気候サミットを開催。約100カ国が2035年の国別削減目標(NDC)を提出または公表することにコミットしたと表明した。
中国の習近平国家主席は、同サミットに出席し、中国の温室効果ガス排出量を2035年までにピーク時から7%から10%削減すると表明。また、非化石エネルギー消費がエネルギー消費総量に占めるシェアを30%以上に引上げ、風力発電と太陽光発電の設備容量は2020年の6倍以上の3,600GWに増やし、森林蓄積量も240億m3にすると表明した。電気自動車(EV)等の新エネルギー自動車を新車販売の主流にし、全国炭素排出権取引市場が主要な高排出産業をカバーすることも伝えた。
【参考】【中国】政府、2027年までに炭素排出量取引制度の対象業種大幅拡大。総量削減も(2025年8月27日)
習主席また、「世界のグリーン移行は、公平・公正を堅持し、発展途上国の発展権を十分に尊重し、移行を通じて南北格差を拡大せず縮小すべき」と主張。先進国は率先して排出削減義務を果たし、発展途上国により多くの資金と技術支援を提供すべきと表明した。同時に、「各国は、グリーン技術と産業の国際協力を強化し、グリーン生産能力の不足を補い、高品質なグリーン製品が世界で自由に流通することを確保し、グリーン発展が世界のあらゆる地域に真に恩恵をもたらすようにすべき」とも提唱した。
この中国政府の発表に対しては、環境NGOから、1.5℃目標の達成に向けて不足しているとの声も相次いでいる。
気候サミットに先駆けて国連やブラジル政府が開催された「気候ソリューション対話」では、エネルギー・運輸・産業のカーボンニュートラル化、森林保護、レジリエンス強化に必要な技術・ガイダンスはすでに存在しており、いかに社会実装をスピードアップとスケールアップを実現するかが課題ということが確認された。
また気候サミットでは、各国首脳は、エネルギー移行の加速が雇用創出、経済成長、エネルギー安全保障にメリットがあると強調。一方、発展途上国の首脳は、NDCへの適応策・レジリエンス強化策・損失損害対策の組み込みの重要性を訴えた。グテーレス事務総長は、「加速の10年はベレンで始まらねばならない」と語った。閉会スピーチでは、アミナ・モハメッド副事務総長が、「世界中のリーダーたちが一致団結し、分裂と不確実性の時代にあっても、気候危機と闘う抱負と決意が健在であることを示した」と述べた。
一方、米トランプ大統領は前日の9月23日に国連総会で約1時間のスピーチを実施。内容は約3分の1が国際安全保障、約3分の1が移民問題、残り3分の1が気候変動関連だった。気候変動については、現在は、気温は下降傾向にあるとの認識を披露。気候変動を課題として認識することは「世界に対して行われた史上最大の詐欺」であり、気候変動に関する「予測は全て間違って」おり、「それらを提唱したのは愚かな連中だ」と述べた。その上で、「当然ながら彼らの祖国は破滅し、それらの国々には成功の望みなどない。このグリーン詐欺から脱却しなければ、あなたの国は滅びる」と持論を語った。
COP30議長国ブラジル、COPでの議論を主導する気候ハイレベル・チャンピオン、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は9月23日、2030年を見据えた5カ年計画「グローバル気候行動計画」の策定に向けたパブリックコメントの要約を発表。主要テーマとして、国家気候行動計画・適応計画の遂行支援、ソリューションの拡大、既存イニシアチブの強化、現場で具体的な成果をもたらす体系的・部門的な変革の実現を挙げ、特に適応・レジリエンス分野に資金を動員し、発展途上国が公平にアクセスできることを確保する必要があるとした。
【参照ページ】Momentum Gathers Towards COP30 as Close to 100 Countries Signal New Climate Targets
【参照ページ】习近平在联合国气候变化峰会上的致辞(全文)
【参照ページ】RELEASE: China’s new target unlikely to drive down emissions
【参照ページ】Trump Speaks at U.N.
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら