
国際民間航空機関(ICAO)は11月7日、10月に開催された第42回ICAO総会の結果を踏まえ、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の科学技術助言補助機関会合(SBSTA)に対し、国際航空・輸送に使用される燃料からの排出量削減施策の状況を報告した。
ICAOは2024年12月、「ICAO戦略計画2026-2050」を発表。航空事故及び違法妨害行為による死亡者ゼロ、2050年までに国際民間航空運航におけるネットゼロ、接続性・アクセス性・包摂性・手頃な価格を備えたグローバル輸送システムの不可欠な要素として航空を位置付けという、3つを重点目標を掲げている。ICAOによると、旅客数は2024年の46億人から2050年までに124億人へ増加すると予測されており、ICAOとして長期目標を設定している。
10月に開催された第42回ICAO総会では、「ICAO戦略計画2026-2050」を踏まえ、長期グローバル目標(LTAG)のモニタリング・報告(LMR)を実施していくことや、2030年までに航空クリーンエネルギーによる二酸化炭素排出量を5%削減するというICAOグローバル・フレームワークの実施状況をモニタリングしていくことを決議。低炭素航空燃料(LCAF)向けのサステナビリティ認証スキーム(SCS)を確立する重要性も確認された。
ICAOの排出量削減目標達成に向けた各国政府による国家行動計画(SAP)の策定では、2025年10月時点で154カ国が提出を完了。世界の航空交通量の99%以上をカバーしている。
SAF支援・能力構築・訓練(ACT-SAF)プログラムでは、フィジビリティと事業実施に関する調査が著しい進展しており、インド、チリ、ヨルダン等の10カ国の調査が完了。さらに22件の調査が進行中。これらの調査は、EU、フランス、イタリア、オランダ、英国、エアバス、ボラリスから拠出された資金で実施されている。
ICAOの国際航空炭素オフセット・削減スキーム(CORSIA)は、2021年以降に国際航空の排出量を2019年比で85%削減し、その水準を2035年まで維持することを目指している。各国の自主的参加期間となる2026年までのフェーズ1では、参加国が当初の88カ国から2026年には130カ国が参加する状態へと発展。義務参加となる2027年からのフェーズ2には134カ国が参加すると予測されている。フェーズ2でも低所得国や島嶼国は参加義務が免除となる。


第42回ICAO総会では、他に、航空機騒音、地域大気質、使い捨てプラスチック、二酸化炭素以外の温室効果ガス等の課題に関する作業を進めることも決議された。森林火災の消火活動を含め、気候変動適応の必要性に関する科学的ナレッジの強化、国際協力の強化、気候リスク評価とインフラ強靭性に関する最新ガイダンスの発行等でも合意している。
気候変動政策に反発している米トランプ政権は、第42回ICAO総会に代表団を派遣したものの、演説の中でICAOの気候アクションを批判。航空輸送システムの安全性、保安、効率性とは無関係な社会プログラムや気候変動資金調達イニシアチブをやめるよう主張している。
ICAOは11月10日から14日までドミニカ共和国でICAO航空サービス交渉イベント2025(ICAN 2025)を開催し、87カ国が出席。二国間や多国間の協定が440件締結されている。こちらにも米国政府は参加したが、日本政府は参加していない。
【参照ページ】Aviation sends strong signal on environmental protection
【参照ページ】Air Transport for All: Hundreds of new air service agreements accelerate progress towards ICAO’s 2050 Vision
【参照ページ】ICAO unveils 2026-2050 Strategic Plan: “Safe Skies, Sustainable Future”
【参照ページ】ICAO strengthens air transport’s global framework for net-zero carbon emissions and sustainable development
【参照ページ】U.S. Transportation Secretary Sean P. Duffy to Deliver Speech Highlighting U.S. Priorities at ICAO
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