
アフリカ農業適応(AAA)イニシアチブは9月17日、2016年の設立から10周年を機に、2036年までのアフリカ農業の気候変動適応ロードマップを発表した。持続可能かつ気候変動レジリエントな農業を確実に進めることで、アフリカのGDPは大幅に向上し、アフリカの極度貧困も5,900万人減少できると伝えた。
AAAイニシアチブは、2016年の国連気候変動枠組条約第22回マラケシュ締約国会議(COP22)で発足。アフリカ38カ国が加盟するとともに、国連食糧農業機関(FAO)、世界気象機関(WMO)、国際農業研究協議グループ(CGIAR)、気候変動適応グローバル委員会、アフリカ開発基金等がサポートしている。民間セクターからは、クレディ・アグリコル、Mirova、Natixis、東アフリカ取引所(EAX)、OCPグループ等がパートナーになっている。
現在アフリカでは、旱魃、洪水、高温、降雨といった異常気象が発生し、すでに農業生産と食料安全保障を脅かしている状況にある。気候変動は単独で危機を生じさせるだけでなく、紛争、貧困、資源管理の弱さなどを増幅。政府は食料危機や保健、安全保障にも対応しなければならず、財源と行政能力に制約があるアフリカ各国政府を苦しめている。さらに債務負担と開発援助の縮小が投資余力を奪い、気候災害による財政悪化が次の災害への備えを弱める悪循環が生じている。
AAAは、過去10年間の活動を通じ、恒常的な財団、閣僚会合、国際機関との協力網を築き、農業適応の国際交渉上の位置付けを高め、気候変動適応指標に関する国際プラットフォーム(IPAM)には約190人の専門家を擁し、アフリカが適応の測定ルールづくりに参加する基盤となったと評価。一方、政策提言の強化が大規模な資金供給を実現したとはいえず、投資計画の策定支援も広範な展開には至っていないことを課題視した。
また同報告書は、アフリカ53カ国の国別削減目標(NDC)、28カ国の国家適応計画(NAP)、24カ国の隔年透明性報告書(BTR)を分析し、アフリカ連合(AU)の包括的アフリカ農業開発計画(CAADP)の評価や、世界銀行の43件の国別診断と照合。53カ国がNDCで申告した適応資金需要は総額約5,660億米ドル、各国の計画期間に応じた年換算では約560億米ドルに達し、そのうち農業分野として集計された需要は約800億ドルだが、農業を分離して費用算定していない国も多く、実際の需要を十分に捉えていない可能性が高いと分析した。
これに対し、BTRで受入れを確認できる資金は累計約82億米ドルで、申告需要との単純比較では約1.5%しかない。但し、この比率は対象国、期間、資金の範囲が異なる資料を用いた診断値であり、大陸全体の適応事業の達成率を示すものではない。受入資金の記録から農家への効果まで追跡することも、現状では困難。NDC、NAP、BTRの3つがそろう国は11カ国に限られ、計画策定をサポートしていく必要があるとした。
これらを踏まえ、現状の構造的課題として、計画、実行、説明責任の3つの断絶があると指摘。申告された需要が具体的な費用付き計画に落とし込まれず、計画があっても資金が届かず、支出しても成果との関係を追跡できていない。NAPのうち資金計画の構成要素が整っているものは61%にとどまり、技術の選択肢は多数記載されている一方、近年の政策に対応できる技術ニーズ評価を持つ国は11カ国しかなかった。その結果、課題は技術紹介だけでなく、費用算定、案件形成、資金申請、調達、実施管理まで担える行政能力の育成にあるとした。
さらに、国際的な気候変動政策とアフリカ独自の農業政策の間にも乖離があることを特定した。AUの包括的アフリカ農業開発計画(CAADP)に言及しているNDCは53カ国中5カ国、NAPは28カ国中2カ国しかない。農業関連省が担う大陸の農業政策と、環境関連省を中心とするパリ協定の報告制度が並行して動き、同じ施策を異なる指標や様式が用いられている状況にある。CAADPの評価でも総合目標の達成ペースに乗っている国はなく、同じ成果を一度測定し、複数の制度で利用できる共通の対応関係を整えることが重要とした。
具体的な対策では、農業保険、アグロエコロジー、気候スマート農業、気候に強い種子の4分野を、政策上の言及に比べて資金供給が乏しい領域と特定した。各々の分野では、アフリカ・リスク・キャパシティ、肥料・土壌健全性行動計画、CAADP、地域の種子制度等の仕組みが動いているが、各国の国家計画や資金供給にまで反映させるべきと強調。土壌管理、灌漑、水利用効率、気象情報、早期警戒も重要だが、土地利用権や共有資源の管理が不安定ならば導入は進まないこととにも警鐘を鳴らした。さらに、女性の土地・金融・普及サービスへのアクセス、若者の雇用、地域固有の知識も、気候変動適応の実効性を左右するとした。
資金面では、量と手段の双方を問題視。資金追跡データでは、アフリカの農林業・土地利用への適応資金は年約35億米ドルから40億米ドルだが、援助国のコミットメント額を分析すると、農業向けで適応を主目的とするものは年約4.6億米ドルにとどまっている。異なる集計方法を用いても、需要に対する不足が確認された。また、アフリカに流入する気候資金の約半分は融資で、債務負担を重くする恐れもある。同報告書は、無償資金や債務状況に配慮した金融手段、保険、公的資金によるリスク分担の拡充を求め、同時に各国政府にも農業適応の予算項目を明示し、国内財源による関与を強めるよう促した。
2036年ロードマップでは、既存制度の接続を柱とした。各国の気候政策をCAADPや国家農業投資計画と結び、施策毎に予算項目、資金記録、成果指標を対応。支援不足の4分野には、既存のアフリカ大陸各機関を通じて資金を流通させ、IPAMを共通の適応指標の基盤とすることを掲げた。さらに、技術ニーズ評価や費用算定、案件形成を支える協力体制を整え、国際交渉ではアフリカ共通の要求と獲得した成果を公開して検証すべきとした。地域毎の重点事項にも差異があり、サヘル地域では高温対策とリスク移転、中央アフリカでは森林の測定、北部と南西部では水利用効率等が特に課題とした。
これらの調整、共通指標、案件準備等に必要な費用は、10年間で約1億から2億米ドルと見積もられた。AAAは資金管理や事業実施を直接担うのではなく、既存機関を結び付ける役割に徹する姿勢を表明。2036年までにNDCの80%超でCAADPとの接続を進め、20カ国超で政策から資金・成果まで追跡可能にする等の目標を提案し、毎年の閣僚会合で検証するとした。
同報告書は、現状の延長でも、アフリカの農食料輸入額は2043年に約5,100億米ドルへ拡大するが、アフリカでの極度貧困は5,900万人残ると分析。一方、持続可能で気候レジリエントな農業に変革するシナリオでは、現状継続に比べGDPが約3,540億米ドル増え、極度の貧困人口がゼロになり、輸入額は約2,120億米ドル少なくできると伝えた。
【参照ページ】New roadmap signals Africa’s pathway for sustainable and resilient agriculture
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