フレンチアルプスの麓、サヴォワ県アルベールヴィルにある発電所では、近くのチーズ製造工場から出る残余廃棄物を使って近隣1,500世帯分が十分に賄える電力を発電するというユニークな取り組みが進んでいる。
この発電所は昨年10月にバイオ燃料製造企業のValbioにより建設されたものだ。同地方の名産品である「ボーフォールチーズ」の製造過程で発生する副産物、ホエ―(乳清)を活用し、年間280万キロワット時の発電を行っているという。ホエ―はチーズの製造過程でできる透明な液体で、ヨーグルトの上部にもよく見られるものだ。
発電方法としては、ホエ―をバクテリアと共にタンクに入れることで自然発酵によりメタンが生成され、バイオガスが発生するという仕組みだ。生成されたバイオガスはガスエンジンに投入され、水を90℃に加熱することで電気が創出される。電気はエネルギー企業のEDFに売却されるという流れになっている。発電を含む一連のプロセスを経て、ボーフォールチーズの製造過程で作り出される残余物はほぼ全てが利用され、廃棄物はなくなるという。
アルベールヴィルの発電所はValbioが所有する稼働中の発電所としては最大規模となり、同社はヨーロッパ各地およびカナダに約20の小規模施設を所有している。今後はさらにオーストラリア、イタリア、ブラジル、ウルグアイでもチーズ製造による発電施設の設置を計画している。
このようにエネルギー創出にチーズを利用する事業はここ数年で広がりを見せており、2013年には英国最大のチーズメーカー、Wyke Farmsがバイオガスプラントで創出する自然エネルギーにより100%自給自足するチーズメーカーとなった。
英国のAnaerobic Digestion and Bioresources Association(嫌気性消化・バイオガス協会)によると、同国での嫌気性消化(AD:酸素の存在しない条件下で嫌気性細菌 によって分泌される酵素の働きだけで有機物を分解・消化すること)分野におけるバイオエネルギー発電量は2013~2014年比で40%増大したという。
また、チーズ以外のADを活用した発電の一例としては、今年初頭にアルコール飲料のグローバル企業、ディアジオは、スコットランドで新たなADプラントを設置し、ウィスキーの蒸留過程で約8,0000メガワット時の熱エネルギーを創出している。
【参照記事】French power station generates electricity for 1,500 homes from cheese
【参照記事】French power station generates electricity from cheese
【企業サイト】Valbio France
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