
米連邦最高裁判所は2月20日、米トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠法として発動したカナダ、メキシコ、中国に対する関税と、全ての貿易相手国に対して発動した10%以上の相互関税を無効とする違憲判決を下した。同判決には、9人の判事のうち、6人が賛成、3人が反対した。
今回の事案は、2つの訴訟が統合されて審理が進められてきた。原告の一つ目は、教育玩具の輸入企業Learning Resources及び中小企業2社で、連邦地方裁判所に提訴。原告の2つ目は、ワイン輸入V.O.S. Selectionsと中小企業5社で、米国際貿易裁判所(CIT)に提訴。双方とも、関税による直接的な経済的損害を理由としていた。また、一部の州政府も原告に加わっていた。
今回の判決では、リベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事、エレナ・ケイガン判事、ソニア・ソトマイヨール判事が賛成。さらに保守派のジョン・ロバーツ首席判事、ニール・ゴーサッチ判事、エイミー・コニー・バレット判事も賛成に回った。一方、保守派のクラレンス・トーマス判事、ブレット・カバノー判事、サミュエル・アリト判事は反対した。
多数意見ではまず、合衆国憲法が課税権を連邦議会に専属させている点を強調。合衆国憲法第1条は「租税、関税、輸入税および消費税を課す権限」を連邦議会に与えており、関税は典型的な課税の一種であるとした。連邦政府側も、平時には大統領が固有の関税賦課権を持たないこと自体は認めており、IEEPAがその権限を委任していると主張したが、同裁判所は、IEEPAの条文に関税や「義務税(duty)」への言及が一切ないことを重視。IEEPAは大統領に対し、外国由来の脅威に対処するために輸入や取引を「調査し、阻止し、規制し、指示し、無効にし、防止し、または禁止する」等の多様な措置を認めているが、これらは経済制裁や取引制限を想定したものであり、「規制し」には関税課税は含まれないと判断した。
また、ニール・ゴーサッチ判事とエイミー・コニー・バレット判事は、いわゆる「重大問題法理(major questions doctrine)」にも言及し、経済や政治に重大な影響を及ぼす権限を行政に委任する場合、連邦議会は明確な文言でそれを示さなければならないと断定した。
他方、反対派の意見では、外交・安全保障・緊急事態の分野では大統領に広い裁量が必要であり、IEEPAの文言は関税を含み得ると主張した。
今回の判決により、IEEPAを根拠法としていたカナダ及びメキシコからの輸入品に対する追加関税25%、中国からの輸入品に対する10%の追加関税、諸外国に対する10%以上の相互関税が無効となった。一方、同訴訟には、通商法第604条や通商拡大法第232条等に基づく大統領権限として発動された鉄鋼・アルミ関連への追加関税や、自動車・自動車部品向け追加関税は含まれておらず、これらの関税は無効になっていない。
【参考】【アメリカ】トランプ大統領、日本含む10カ国・地域に鉄鋼・アルミ関連に追加関税25%。3月12日から(2025年2月11日)
【参考】【アメリカ】トランプ大統領、自動車と自動車部品4種に25%関税発動。インフレ懸念なしと説明(2025年3月27日)
同判決に対し、トランプ大統領は同日、対抗措置を表明。同判決に基づき、各連邦政府機関に可能な限り早急に無効となった関税徴収の停止を実行するよう求めつつ、新たに1974年通商法第122条を根拠法とする暫定的な輸入関税を課す大統領宣言に署名した。米国に輸入される全ての物品に対し10%の追加関税を課す(2月21日には自身のSNSで15%に引き上げると発言)。期間は150日間で、東部標準時2月24日午前0時1分に発動される。加えて、低価額貨物のデミニミス・ルールの停止も継続し、今回の追加関税も課される。
但し、例外措置として、書籍等の情報資料、寄付品、随伴手荷物、特定の航空宇宙製品、乗用車、特定の軽トラック、特定の中型・大型車両及び特定部品、特定の電子機器、医薬品及び医薬品原料、牛肉、トマト、オレンジを含む特定の農産物、米国で栽培・採掘・生産できないまたは国内需要を満たす十分な量が生産できない天然資源・肥料、特定重要鉱物、通貨・地金用金属、エネルギー及びエネルギー製品は追加関税の対象外とした。
さらに、ドミニカ共和国・中央アメリカ自由貿易協定(CAFTA-DR)に基づき、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの物品として無税で輸入される繊維製品及び衣類と、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の適合品、現在通商法232条措置の対象となっているまたは今後対象となる物品及びその部品についても、追加関税を一時的に免除するとした。
またトランプ大統領は、恒久的な対抗措置を検討するため、米通商代表部(USTR)に対し、米国の通商に負担または制限をもたらす特定の不合理かつ差別的な行為・政策・慣行について、通商法第301条に基づく調査権限を行使するよう指示した。
【参照ページ】LEARNING RESOURCES, INC., ET AL. v. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL.
【参照ページ】Fact Sheet: President Donald J. Trump Imposes a Temporary Import Duty to Address Fundamental International Payment Problems
【参照ページ】ENDING CERTAIN TARIFF ACTIONS
【参照ページ】Imposing a Temporary Import Surcharge to Address Fundamental International Payments Problems
【参照ページ】CONTINUING THE SUSPENSION OF DUTY-FREE DE MINIMIS TREATMENT FOR ALL COUNTRIES
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