EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月15日、環境犯罪の捜査と訴追を強化するEU指令案で政治的合意に達した。同指令は、環境保護を強化するための刑罰や訴追の強化に関し、EU加盟国の最低基準を設定するもの。今後、双方での立法手続きに入る。
【参考】【EU】欧州委、環境犯罪の刑罰強化へ。懲役刑導入を義務化。象牙取引規制も強化(2021年12月17日)
EUでは、2008年に環境犯罪指令(刑法による環境保護に関する指令2008/99/EC)を制定していたが、欧州委員会が2020年に発表したレビュー文書によると、環境犯罪での立件は少なく、現状の刑罰措置は抑止力として不十分と判断。国境を越えた協力も弱いことが問題視されていた。
同指令案では、EU刑法に現在存在する環境犯罪数を9種類から18種類に増やす。例えば、世界の一部の地域で森林破壊の主な原因となっている木材の密売、船舶の汚染部品の違法リサイクル、化学物質に関する重大な法律違反等が含まれる。さらに、「適格犯罪」条項でも合意。意図的に行われた犯罪は、破壊、不可逆的で広範囲かつ実質的な損害、または相当な規模もしくは環境価値のある生態系、保護地域内の自然生息地、大気、土壌、水の質に対する長期にわたる広範囲かつ実質的な損害を引き起こした場合、適格犯罪とみなされる。
罰則も強化される。法人による環境犯罪では、最も重大な犯罪では、法人のグローバルでの総売上の5%以上もしくは4,000万ユーロ(約65億円)の罰金。その他のすべての環境犯罪では、法人のグローバルでの総売上の3%以上もしくは2,400万ユーロ(約40億円)の罰金。加えて、環境修復や損害賠償の義務化、公的資金へのアクセスからの排除、許認可の取消等の行政処分も科される可能性がある。
自然人による環境犯罪では、故意な致死では10年以上の懲役。壊滅的な結果をもたらす特定犯罪は8年以上の懲役。重大な過失致死では5年以上の懲役。法律に含まれるその他の意図的な犯罪の場合は、5年以上または3年以上の懲役とする。
さらに、EU加盟国は、裁判官、検察官、警察当局等、環境犯罪の摘発、捜査、起訴の従事者に対する研修を実施する義務も負う。また、訴追体制を充実させるための予算や人員の確保も義務化される。
【参照ページ】Environmental crime: Council and European Parliament reach provisional agreement on new EU law
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