世界中で森林破壊が深刻化する中、つい最近までブラジルにある世界最大の熱帯雨林、アマゾンはその流れに逆らっていた。1990年から2010年で世界の熱帯雨林は62%も消滅した一方で、ブラジルでは同期間における森林破壊が急減していたのだ。その背景には規制強化や熱帯雨林跡地での大豆栽培の禁止など様々な森林保護活動があった。
しかし、そんな状況に再び暗雲が立ち込めている。米環境ジャーナルのScientific Americanは、"Amazon Deforestation Takes a Turn for the Worse"と題してアマゾンの現在の状況に対する警鐘を鳴らす記事を掲載している。
同記事によると、衛星データ分析研究所のImazonによる調査によって2014年8月以降、同国の森林伐採は前年比で2倍以上に急増していることが分かったという。森林破壊を後押ししているのは、畜牛用の牧草地だ。牧草地は現在森林破壊の最大の要因となっており、全体の70%近くが該当するとのことだ。
また、同記事は、先ごろ大統領に再選されたDilma Rousseff氏が新たに数基の水力発電用ダム建設とアマゾン中央部を縦断する高速道路建設を要望しており、ブラジル政府は環境保護活動より経済成長を優先させた政策を推進するべく、違法な伐採を見逃していると指摘している。
ブラジル国立宇宙科学研究所(INPE)の調査によれば、特にアマゾン流域南端の広大な伐採が大気中の水分の南下を減少させており、ブラジル最大の都市、サンパウロの極度の干ばつの原因となっている可能性があるとのことだ。
当然ながら、アマゾンの森林破壊による影響はブラジル国内だけに留まらない。アマゾンの熱帯雨林は一日200億トンもの水蒸気を樹葉の蒸発を通して空中に放出しており、大陸の遥か向こう側の気候にも影響を及ぼしているという。これ以上アマゾンの森林破壊が進行すると、現在の気候システムおび雨量の維持は限界に近づき、アマゾン南部、東部の広範囲がサバンナと化す可能性があるという。
また、同記事は、アマゾンの全体的な森林破壊は米国カリフォルニア州シエラネヴァダ地域の農業に必要な春の雨水となる降雪を50%減少させると予測する調査も紹介している。カルフォルニア州も現在世界の中で最も深刻な干ばつに悩まされている地域の一つだが、アマゾンの森林破壊により、状況が更に悪化する可能性があるのだ。
世界最大の熱帯雨林、アマゾンの保護は地球全体の気候変動対策を考える上で最も重要なテーマの一つだが、ブラジルでは状況が世界全体の合意とは逆方向に向かって進んでいる。
【参考記事】Amazon Deforestation Takes a Turn for the Worse
【参考サイト】Scientific American
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