ケーブルテレビ大手米コムキャストは3月24日、アメリカ住宅都市開発省(HUD)が進めているイニシアチブ「コネクトホーム」と連携し、マイアミ・デイド郡、ナッシュビル市、フィラデルフィア市、シアトル市の低所得公共住宅居住者向けに、デジタル・デバイド是正に向けた試験的なプログラムを実施すると発表した。
このプログラムには、コムキャスト社が2011年から進めているプロジェクト「インターネット・エッセンシャルズ」が大きな役割を果たしている。インターネット・エッセンシャルズでは、教育機関や政府、NPOと連携したデジタル・デバイドの是正を目的とし、10Mbps以上の高速ネット環境の整備、wi-fiルーターの無償提供、デジタル・リテラシー教育、150米ドル(約16,500円)未満の低額パソコンの販売などを行っている。実績として、2011年から現在に至るまで60万世帯、240万人にインターネット環境を提供している。
アメリカでは、2009年から2014年の間に、プロバイダー企業らが4,220億米ドル(約46兆8,500億円)の設備投資を行ってきたにもかかわらず、未だにアメリカの1/4の世帯が自宅においてインターネットにアクセスできる環境にない。子供を持つ低所得世帯ではそれが顕著である。また、低所得世帯の約2/3がパソコンを保有しているにもかかわらず、その半分未満がインターネット契約をしていない状況にある。アメリカ住宅都市開発省(HUD)が立ち上げた「コネクトホーム」は、このデジタル・デバイドによってもたらされる教育格差やデジタル・リテラシー格差の是正を目的として立ち上がったイニシアチブであり、子供たちが自宅でインターネットを接続できるよう環境を整備している。
コムキャストは、「インターネット・エッセンシャルズ」の受益対象者を5年で8回ほど拡大しており、2015年には低所得高齢者と低所得地域の大学生まで対象を広げた。さらには、1946年当時のトルーマン米国大統領が採択した低所得者層向けへの学校給食の低価格ないしは無償提供プログラム(National School Lunch Program:NSLP)の対象生徒が一定割合以上いれば、その学校のすべての生徒を「インターネット・エッセンシャルズ」の受益対象者であると定めた。現在では、約48,000あるサービス対象地域校のうち約半数がサービス受益校となっている。
コムキャストのように、自社が掲げる目標と、外部機関の目標をうまく連携させ、より大きなインパクトを達成しようとする動きが欧米企業に見られる。持続可能な開発目標(SDGs)など社会全体が課題感を抱く目標であったり、政府や国際機関が抱く政策目標であったり、これらの動きを敏感に察知し、自社の戦略立案や遂行に結びつけていくことが、サステナビリティ部門やCSR部門には求められている。
【参照ページ】Comcast and the U.S. Department Of Housing And Urban Development Announce Pilot Program to Close The Digital Divide
【政府サイト】Connecthome
【プログラムサイト】Internet Essentials
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