国連責任投資原則(PRI)は9月10日、気候変動に関する新シナリオを策定したレポート「Inevitable Policy Response(IPR)」を発表した。PRI署名機関は目下、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインを基に気候変動シナリオ分析や投資分析を進めているが、現行の政策ベースとなる国際エネルギー機関(IEA)の「新政策シナリオ(NPS)」に代わる現実的な政策ベースが必要と判断。IPRでは、新たに「予測政策シナリオ(FPS)」を策定した。
IEAのNPSシナリオは、パリ協定を基に各国が提出した削減目標等をベースにしたシナリオで、気温が2100年に2.7℃から3.5℃上昇するものとなっている。しかしPRIは、2023年から2025年の間に、各国政府での政策強化、消費者需要の変化、テクノロジーの発展、金融機関の低炭素積極化等の動きが起こることを予見。企業や投資家が将来の計画を策定する上で、NPSに代わる妥当なシナリオとしてFPSが必要と判断した。
IPRレポートは、3つの内容で構成。まず、2025年から2050年までに新シナリオとなる「FPS」の策定。続いて、2050年から2100年までのシナリオとして、バイオエネルギーを活用する炭素回収・貯蔵(BECCS)等の二酸化炭素吸収技術の実用化を考慮したシナリオの策定。そして、新シナリオと1.5℃目標の乖離を把握した上での新たアスピレーションの提言。
2023年から2025年までに予見している具体的な動きとしては、石炭火力発電の段階的廃止、電気自動車(EV)等の普及、カーボンプライシングの導入、省エネの推進、中国での原子力発電の普及、農業での低炭素化技術の拡大、森林保護やバイオエネルギーの活用を挙げた。但し、炭素回収・貯蔵(CCS)技術については2030年までには世界のどこでも実用化される可能性は低いと見立てた。
今回の新シナリオ策定では、PRIが資金を拠出し、Vivid EconomicsとEnergy Transition Advisersが実働を担った。2° Investing Initiative(2°ii)、カーボントラッカー、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所もコンソーシアム・パートナーに加わった。
PRIは、投資家や信用格付機関に対し、シナリオ分析の際には、今回のIPRシナリオも参照することを呼びかけた。
【参照ページ】What is the Inevitable Policy Response?
【レポート】IPR Policy Forecasts
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