環境情報開示を推進する国際NGOのCDPは3月23日、アフリカ地域主要48都市を分析した気候変動報告書を発表した。同地域について、気候変動によるリスクの認識が高いと評価した一方で、先進国に比べて資金調達が低いことを指摘し、低炭素社会への投資を加速するよう警鐘を鳴らした。
CDPは2019年、アフリカの48都市から環境に関する各種データを受領。48都市政府とともに気候変動に関するリスクや危険を測定・管理している。
今回の報告書では、48都市のうち、35都市が持続可能な目標を掲げていると報告し、また5都市は既に目標を達成するために取り組んでいると分析。これらの目標には、持続可能な都市づくり、二酸化炭素排出量の削減、水資源の保護に対する計画などが含まれている。
また48都市の98%が、想定される気象災害を特定しており、92%が社会的リスクを特定していた。最も共通認識されている脅威は、洪水と海面の上昇、灼熱気候、水不足、および極端な降水量。そのため多くの地域が水の安全保障に対して短期・中期・長期それぞれの実質的なリスクを特定しており、一部の都市では危険地域における開発に制限を設けていることもわかった。
こうした結果を受け、CDPは、アフリカの主要都市の多くは気候変動のリスクと危険に対応し、様々な適応行動を策定しているとの評価をした。一方で、地域によって政府の取り組みにばらつきが見られ、機関間における情報共有の欠如、排出インベントリを実施するためのリソースの欠如などが課題にあると指摘した。
さらにCDPは同地域における資金調達も大きな課題の1つに挙げる。今回、42都市において低炭素でレジリエントなインフラプロジェクトへの投資機会が142件あることが分かったが、肝心の気候変動プロジェクトに対する資金調達が不足しており、需要と供給能力に大きなギャップが生じている。2018年の例を見ても、全世界の気候変動資金の累計5,460億ドル(約58兆円)のうち、サブサハラ地域で投資されたのはわずか140億ドル(約1.5兆円)。資金の課題は、資源の少ない都市にとって依然差し迫った懸念事項であることが今回改めて浮き彫りとなった。
アフリカ地域の温室効果ガス排出量は世界の中ではとても低く、中国の23%、米国の195、EUの13%に比べて、わずか3.8%と最少のシェアを占める。しかし、アフリカでは人口の約7割が農業による収入で生活しており、干ばつや水資源不足、未整備なインフラ環境によって、同地域は気候変動に対して脆弱になり、世界で最も気候変動の影響を受ける地域であるとの予測がされている。
CDPは、アフリカからの報告について、すべての都市、州、地域が公に行っているため、透明性が高いとも評価をした。そして情報の開示は 気候変動対策への最初のステップであることを再度強調した上で、先進国に対しても情報を公表していくよう呼びかけた。なおCDPは2019年、世界全体では124の州と地域から気候変動データを入手している。
【参照ページ】CDP Africa Report
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