EUの欧州システミックリスク理事会(ESRB)は6月8日、気候変動による金融リステミックリスクの定量的な予測と対応状況をまとめたレポートを発表した。データや投資手法には依然として課題が多いとしつつも、早急に対策を始めることで経済にプラスの効果を産むことは明白と結論づけた。
ESRBは、EUの金融規制当局であるESFS(欧州金融監督制度)の構成機関の一つ。欧州債務危機により金融システミックリスクへの監督強化の必要性がさけばれた2010年に発足し、金融機関横断でのシステミック監督をミッションとしている。欧州中央銀行も活動を支援している。
今回のレポートでは、EU機関や企業、シンクタンク等が発表している定量データを俯瞰し、EUの金融システムが抱えている気候変動システミックリスクの状況や、対策への道筋を示している。結果として、物理的リスクと移行リスクの双方で、気候変動がEU経済に影響を与えることは避けられず、金融システムにはこのリスクコストは十分に織り込まれていないことを課題視した。
銀行が抱える気候変動リスク・エクスポージャーの状況では、システム全体としては制御できる範囲にあることがわかったとしつつも、テールリスクに晒されているセクターや企業がいることには言及した。またシナリオ分析の結果からは、例えばカーボンプライシングでの炭素価格が高騰したとしても、移行リスクはさほど大きくなく、一方物理的リスクのほうが問題が大きいとの定量分析結果を示した。その上で、今後データと知見の双方が向上すれば、リスクモデルに対する注目を高められるだろうと話した。
また欧州委員会は同日、サステナブルファイナンス・アクションプランの強化に向けたパブリックコメント募集を開始した。欧州委員会は4月、新型コロナウイルス・パンデミックにより、サステナビリティや社会のレジリエンス(強靭性)の必要性はますます高まったことを受け、2018年3月に策定した「サステナブルファイナンス・アクションプラン」をさらに強化する方針を発表しており、それを受けてのものとなった。
パブリックコメント募集では、保険・再保険、保険ブローカー、運用会社、オルタナティブ投資ファンドに対する義務化規制案を公表し、意見を募っている。提出は7月6日まで。各々、金融分野のEU指令である譲渡可能証券の集団投資事業指令(UCITS)、オルタナティブ投資ファンド・マネージャー指令(AIFM)、ソルベンシーSolvency II、 保険販売業務指令(IDD)、第2次金融商品市場指令(MiFID II)に関する改正案となっている。
【参考】【EU】欧州委、新型コロナでサステナブルファイナンス・アクションプラン加速化。機関投資家も賛同(2020年4月13日)
また別途、欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)は、デジタル化による新たな保険・再保険ビジネスモデルに関するディスカッション・ペーパーに対するパブリックコメントの募集も開始。特にデジタル化によって浮上する新たなオペレーションリスクやICTリスク、データ保護や外部委託に関するルール等について記載している。
【参照ページ】Positively green: Measuring climate change risks to financial stability
【参照ページ】Published initiatives
【参照ページ】EIOPA consults on (re)insurance value chain and new business models arising from digitalisation
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